自宅が最強の充電ステーション!? イギリスのEVライフ
世界に先駆けてEVシフトが進む国々では、EVユーザーはどのようにEV充電を運用しているのでしょうか。前回の記事では、ノルウェーとオランダの事例をご紹介しました。今回の記事では、イギリスのEV充電運用について調査レポートをご紹介したいと思います。
EVユーザーに限らず、マイカーを運用するときに直面するのが「自動車の保管場所」つまり「車庫」「駐車場」の確保です。日本では車庫証明が必要とされ、車の保管場所を証明しなければならない制度が根付いています。このため、EVユーザーもまず最初に自宅車庫、または自宅周辺の月極駐車場の確保が必要となります。
一方、イギリスの駐車文化は異なります。まずイギリスには車庫証明制度はありません。自動車の保管場所は、建物や施設など私有地内での駐車"Off-Street Parking"と、公道の路上駐車"On-Street Parking"の2つが主流です。都市部における公道での路上駐車は、特定の公道において自治体から駐車許可証を得ることで可能となります。
イギリス政府の調査によれば、EVユーザーの86%が私有地内に車庫や駐車スペースを確保していて、8%は共用駐車場でEVを駐車していると回答しました。EVユーザーの6%は自動車保管場所を確保していません。そしてEVユーザーの93%が自宅または自宅周辺で充電環境を有しているとされています。夜間電力を利用した自宅充電は、コストの面で非常に効率的。これにより、多くのユーザーが自宅での充電を好む傾向にあります。EVユーザーの中で、自分専用の自宅充電設備を持っているのは80%で、自宅充電設備を共用利用しているEVユーザーは13%でした。自宅充電できないのは、たったの7%でした。
さらに、イギリスの住居種別を見ると、EVユーザーの約50%弱は一戸建て住宅に住んでいます。一戸建て住宅は自宅充電設備を導入しやすく、ガレージや前庭での充電が日常的に行われやすいと想定されます。一方、長屋やフラットと呼ばれる集合住宅では、EVユーザーの構成比率は下がります。イギリス含むヨーロッパに長屋が多いのは、中世に窓や戸の数を基準とした窓税や、そして間口の広さを基準とする間口税が課されていた名残と言われています。
この調査では自宅充電できるEVユーザーに、昼間および夜間のEV充電頻度を聞いています。夜間充電は、昼間充電よりも一般的であり、自宅充電する手段を持つ回答者の 90%が夜間充電を「したことがある」(頻度に関係なく年に 1 回以上)と回答したのに対し、昼間充電を「したことがある」と回答した回答者は 83%でした。
回答者の78%が週に一回以上、自宅で夜間充電をすると回答した一方で、毎日夜間充電すると回答したのは18%でした。昼間充電については、この割合はさらに低く、毎日昼間充電していると答えた回答者は9%でした。
この調査では公共充電ポイントの利用状況についても聞いています。回答者の大多数である88%が、公共の充電ポイントを「利用したことがある」(頻度にかかわらず、少なくとも一度は利用したことがある)と回答しました。一方、残りの12%は自宅充電以外は充電経験が無いという結果となりました。また回答者の74%が商業施設で充電したことが「ある」と回答し、69%が高速道路のサービスステーションでEV充電したことが「ある」と回答しています。続いて回答者の40%が職場充電をしたことが「ある」と回答しています。
職場充電を含む公共充電ポイントの利用頻度について、さらに調査では深く聞いています。回答者は次の施設で週に1回以上の頻度で充電していると回答しています。職場充電30%、商業施設などでの充電30%、高速道路での充電25%、そして路上駐車充電が23%となっていました。自宅充電以外に頻繁に利用される場所は、職場や商業施設となりました。
イギリスのEV充電を更に深堀りすると、国や自治体が公道の路上駐車"On-Street Parking"にEV充電ポイントを導入を促し、EV充電サービス事業者を支援していることです。住民向けの駐車許可証は年間数万円を支払うことになっていますが、次世代自動車普及のためにEVやFCVには無償で駐車許可証を発行している自治体もあります。自宅周辺の公道に路上駐車が認められている特定エリアで、そこには自宅充電と同等の充電設備あり、EVを所有する際のハードルが低下しているようです。イギリスでは路上駐車しながら、街灯から電気を取り出すことが可能です。
またTerraced House(連続長屋)に居住し、私有地内に駐車スペース"Off-Street Parking"が無いEVユーザー向けには、「Pavecross」という充電サービスもあります。日本語に意訳すると「歩道横断充電」でしょうか。ロンドンや大都市の郊外では自宅前の道路でも、駐車し放題です。自宅から歩道を横断して充電ケーブルを渡すと、路上駐車中にPavecrossで自宅"前"充電が可能となるようです。
日本とイギリスでは、車庫証明や路上駐車と、そして長屋構造の集合住宅の連続と、住宅事情や都市構造は異なっています。しかし、両国ともに自宅充電の魅力と利便性が、EVの普及を加速させる大きな要因となりそうです。集合住宅やオフィスビル、職場でのEV充電はWeChargeにご相談ください。
出典:
イギリス Department for Transport, Electric Vehicle Charging Research 2022 Survey with electric vehicle drivers
イギリス Office for National Statistics, Census 2021