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初めて動画インタビューをやったら自分の甘さを痛感した話

もう何年も前の話になる。私はWEB制作会社で新卒採用向けのWEBサイト制作をしていた。小さな制作会社だったのでWEBデザイナーとコーダーを担当することなっていたが、営業からこんなことを言われた。

「社員の声を動画で紹介することになっているからインタビューと撮影よろしく」

え…?そもそもインタビューすらちゃんとしたことないのにいきなりクライアント企業の社員10名以上のインタビュー、しかも会社で初めての動画撮影案件だった。そして何よりも私自身、動画撮影というか写真撮影すらしたことがなかった上に、ビデオカメラすら会社になかった。当時はガラケー時代だったので、今のようにスマホで簡単に動画撮影なんてできず、結局、社内にいる人がたまたま家庭用ビデオカメラを持っていて、それを借りることになった。

早速、ビデオカメラを借りると操作方法を教えてもらい、社内の風景を撮ったり、データがちゃんと保存されているかを確認した。撮影まで1週間しかなく、別の制作会社がパンフレット用に写真撮影やインタビューを同じ日に行う。そのすきま時間に動画を撮影するため、与えられた時間は社員1人につき約5分、1日で10人以上の撮影をする。人見知りな性格だから気が進まなかったけど、5分ならなんとか話せるかと現実逃避に近い楽観視をしていた。そして、撮影までの時間も別の案件や新卒サイト制作がみっちりつまっており、すぐに前日になった。終電近くまで作業していると私の近くに別の案件をやっている先輩が来た。

「明日、動画撮影らしいけど事前に相手の情報や聞く内容って相手に提示してるよね?」

いやしてないよ、何だよそれと思ったが、パンフレットのインタビューをその場で聞いて何となく話しますと言うしかなかった。帰りの電車で明日行きたくないとずっとうつむきながら、このまま夜が永遠に終わらなけばいいと思った。そんな日に限ってすぐ眠れて、当日を迎えることになる。

クライアント企業の社員はみんな大人だった

当日はパンフレット会社がディレクション担当、インタビュー担当、プロカメラマン、アシスタントの4名体制でばっちり仕事をこなしていた。その後、明らかにプロ用でないホームビデオを持ったヨレヨレスーツの男がさっきと同じ質問をしてくる。クライアント企業は女性の割合が多くて、インタビューされた方々は違和感を感じたかもしれないが、皆さん大人で礼儀正しくちゃんと答えてくれた。私は汗っかきなので5分の撮影だったが、途中で「汗、大丈夫ですか?」と心配されることもありつつ、何とか撮影を完了することができた。

撮影後に会社に帰ると早速動画をPCに取り込んで、フリーソフトを探して動画編集作業をやってみた。初めてだったので大変だったが自分が撮影した動画をコンテンツにするのは楽しかった。でも、やはり素人が撮ったので相手の声が聞きとれなかったり、室内で照明も持たずに撮影したので画面全体が暗かった。おそらくこんなことを言っているのだろうと字幕を入れたり動画の明るさを補正するなど色々思考錯誤して動画を編集していった。さらにWebサイト用に動画容量を圧縮したりファイル形式を変換したり、なんとかブラウザで見れる状態まで持っていくことができた。私の作業を後ろから見ていた先輩が近寄ってきて「動画できたの?すごいじゃん、見せてよ」と言ってきたので実際に操作してもらった。動画自体はお世辞にもよくできてるとは思えなかったので多少辛口のコメントが来るかなと思ったら、先輩が

「これアダルトビデオみたいじゃん!薄暗い部屋で素人がインタビューしててさ!」

と笑ってて、サァーと血の気が引いたのを覚えてる。その後、動画自体をどんなに加工しても「それっぽさ」が消えないため、仕方なくクライアント企業にそのまま確認してもらうことになった。全体的にWebサイト自体は気に入ってくれたようだが「社員の動画は私共がちゃんと事前に内容を確認していなかったため、あまり満足のいく内容ではないので、もっと小さく目立たないように表示してもらえますでしょうか」と修正指示をもらった。

あれ以降、事前に準備することの大切さを身体で学び、プロとして恥ずかしくない仕事ができることを心がけている。

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