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ANAのNCA買収、実現すれば効果は?

 ANAホールディングスが3月7日、日本郵船の子会社・日本貨物航空(NCA)を買収することで基本合意したと発表した。今後、両社間で買収への細部を詰めていき、実際にANAがNCAを傘下に収めるのは今年の10月1日付けになる公算が大だが、ANAが日本唯一の貨物専門航空会社を買収することにはどんな意味があり、どんな成長効果をANAグループにもたらすのだろうか?

ANA CargoのB777F

 実はANAとNCAの関係はきわめて長い。1978年のNCA設立時に、ANAは当時の日本海運中核企業とともにNCA創業メンバーの1社として名を連ねているし、そのとき実際の運航や航空技術面での支援を行なっていた。その後、NCAが日本郵船の100%子会社となってからも協力関係は続き、2018年には正式にANAとNCAが業務提携し、路線スペースの相互融通など実施したほか、ANAが整備士を派遣してNCA整備体制の支援を行ってもいる。そんな経緯を知っている識者なら、ANAによるNCA買収も、日の丸航空貨物キャリア体制の強化というマクロ面では自然な流れと映っている。

 というのも、(ANAの発表によれば)両社の日本発着の航空貨物シェアはANAが約17%、NCAが8%で、両社合わせると25%、つまり日本発着エアカーゴの4分の1をカバーすることになり、その存在感は圧倒的なものになるからだ。

 そこで、ANAグループの貨物航空会社ANA CargoとNCAの生産機材と路線展開を紹介しておこう。
ANA Cargoの自社生産機材は大型貨物機B777Fが2機と中型機B767Fが9機のほか、豊富な旅客機ベリーを擁する。
路線面では、米国線(シカゴ、ロサンゼルス)、欧州(フランクフルト)のほか、アジアでは中国はじめ東南アジアの合わせて14拠点に豊富な定期貨物便を展開している。
 これに対してNCAは大型貨物機B747-8Fを8機保有・運航中で、路線面では米国(シカゴ/ニューヨーク/ダラス/ロサンゼルス)に提携便を含めて毎週15便以上の大型フレイターを運航中のほか、欧州(アムステルダム/ミラノ)とアジア(上海など5拠点)にネットワークを展開済みだ。

 以上を見て分かるのは、ANAグループではアジア路線が厚く広いのに比べて米国線が細く、一方のNCAは米国にはかなり強い路線を展開済みだが、アジア向けはいまいちという状況である。このため、ANAがNCAを買収することで、従来の業務提携よりさらに一歩進めて、世界最大のアジアと米国の2大市場をより有機的に結びつける戦略を立てることが可能になってくる。例えばアジア発の航空貨物を、日本を接続拠点として大型貨物機で米国に運ぶことも、規模やフリクエンシー双方の側面で従来よりずっと成長効果が期待できそうだ。ほかにも、両者が保有あるいは導入予定の貨物機材のより効果的な路線投入も実現していくことになろう。

 ちなみに、22年3月期におけるANAの貨物郵便事業(国内・国際)は売上高3617億円だったが、日本郵船の航空運送事業(NCA)のそれは1887億円、合わせて5504億円に達する。ただし、この年度はまだコロナ禍バブルによる好影響がまだ残っているときであり、今23年3月期は物量減少、運賃急落により相当の減収・減益は避けられないと見られる。とくにNCAの場合は過去、赤字体質キャリアとして日本郵船も頭を悩ませていた時期があったほどだから、よほど合理的なオペレーションをしないと、肥大した身体を持て余す事態にもなりかねないことを心すべきだろう。

2023年3月10日掲載


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