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新貨物航空「ファーカーゴ」がB757F受領、24年初めにサーモンエクスプレス開始へ

フェロー諸島というデンマークの自治領をご存じだろうか。
英国スコットランドとアイスランド、ノルウェーからほぼ等距離の北大西洋の海上に小さくポツポツと存在する超地味な島嶼自治国である。
同諸島の最も大きな島は首都トースハウンがあるストレイモイ島だが、国際空港のヴォーアル空港はその西隣りのヴォーアル島にある。そのヴォーアル空港を拠点にして、この23年に誕生した貨物専門航空会社がファーカーゴ(FarCargo)である。

引き渡しを受ける前のファーカーゴB757-200F完成予想図

そのファーカーゴが、遅れていた旅客機換装型のB757-200Fの引き渡しをこの9月にようやく受けることができた。当初計画では本23年後半から運航を開始する予定だったが、同機の引き渡しを受けて、これから実地訓練や各種準備を経て来24年初頭から正規営業を開始するという。
今回引き渡しを受けたファーカーゴ1号機は最大積載量35トンで、航続距離は7000km。同フレイターが輸送を担おうとしているのは、北大西洋の重要な産業である漁業が生み出す膨大な鮮魚である。漁業根拠地でもあるフェロー諸島とニューヨーク(ニューアーク空港)との間で魚介類を運ぶ定期貨物便を運航する計画。

引き渡しを受けて整備中のB757-200F

実は、この米国向けサーモン輸送を第1のビジネス目標に掲げるファーカーゴは、フェロー諸島に本社を置く鮭を中心とした水産品輸出業者バッカフロスト社(P/F Bakkafrost)が設立した貨物専門航空なのである。
バッカフロストのリジン・ヤコブセンCEOは意気揚々と、今後のファーカーゴ輸送のメリットを次のように語った。
「この航空直行便サービスは、フェロー貿易の歴史における新たな章を開きます。自前の航空輸送によって、フェロー諸島のフィヨルドを泳いでいた高品質な鮭が、わずか1日でアメリカやイスラエルの市場に届けられるため、当社の競争力は飛躍的に高まります。米国ニュージャージー州にある当社の加工工場にも、輸送の短縮と途切れのない冷蔵チェーンによって新鮮な魚介類が届けられ、長期の賞味期限が確保されることになる」

フェロー諸島エストゥロイ島にあるバッカフロストの本社ビル

ただ、こうした生鮮品の定期航空輸送の問題は、産地から消費地への輸送よりも、「復路の貨物をどうするか」という点にある。ファーカーゴはそうした課題について、米国からの折り返し便では多種・多層な市場がひしめくヨーロッパや中東を経由して戻るルートを採用し、その35トン/235立方メートルのキャパシティをBtoBビジネス、あるいはリース契約(ACMIなど)利用をうながすなどで販売していく計画と言う。
そうした戦略的な運航ルートを採用するに当たっても、フェロー諸島という、北大西洋のど真ん中に位置する強みが生きてくると判断しているようだ。

来24年初頭から、北大西洋フェロー諸島から飛び立っていく“サーモン・エクスプレス”が軌道に乗るか否かは、復路便でどれだけ一般貨物が取れるかどうかにかかっているのではないか。

2023年10月2日掲載

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