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IATAがSAF供給不足に警鐘、24年も需要のわずか0.53%だけ!?

IATA(国際航空運送協会)がこのほど、次世代の環境対策として不可欠の“SAF=持続可能な航空燃料”の供給量が、世界航空業界の需要とあまりにかけ離れて少ない現状に警鐘を鳴らしました。

発表によると、IATAは世界のSAF生産量は2022年からこの23年にかけて2倍になり、来24年には3倍にもなると予測していますが、それにもかかわらず、世界の航空業界がいま必要としている量のわずか0.53%しかカバーできないだろうとしています。
IATAの調べでは、世界の燃料生産者は今年23年に6億リットルのSAFを航空業界に供給したのですが、これは昨22年の3億リットル供給の2倍になる量。さらに来24年には、その3倍の18億リットルが供給されると予測しているのですが、それでもなおかつ航空業界の需要に対しては、ほとんど「焼石に水、それも1滴あるかないか」ぐらいの供給量だというわけなのです。

航空業界はCO2排出削減に生き残りを賭け本気で取り組んでいる

実はそこには大きな問題があって、この23年を通じても世界中でバイオマス燃料など「再生可能な燃料」の新たな生産能力が拡大・稼働したのですが、増産されたそのほとんどが他の業界の燃料に割り当てられてしまっていたのです。
航空業界に割り当てられた量は再生可能燃料の総生産量のうちわずか3%に過ぎず、残りの97%は陸送の貨物輸送部門など他の産業向けに供給されてしまったのでした。 Sustainable Aviation Fuel(SAF)として欲しいものが、どんどんSustainable Truck Fuel(?)に化けてしまったわけですね。

IATA事務局長のウィリー・ウォルシュ氏は、再生可能燃料全体の生産量のほんの一部しかSAFに回ってこない現状に危機感を抱いており、それがSAFの供給不足を生じさせ、結果的に価格の上昇を招くことを懸念しています。
「航空業界では、持続可能燃料の生産能力のうちの25%から30%をSAF用として供給してもらいたいのです。その供給レベルであれば、航空業界は2050年までに炭素排出の実質ゼロを達成するために必要な軌道に乗ることができるでしょう」

IATAの名物事務局長ウイリー・ウォルシュ氏

さらにウォルシュ事務局長は、各国政府が介入して友好的な政策でSAF生産を奨励するとともに、燃料生産者が地元で入手できるもので生産するなど、原料を多様化する必要についても指摘しました。
今後数年間で稼働する生産施設の85%は、使用済みの食用油や工業用グリース、動物性脂肪などを原料として水素化精製技術によって生産されます。しかし、これらの材料の在庫は限られているため、アルコールを原料としたアルコール・トゥ・ジェット方式や、合成油生産技術のフィッシャー・トロプシュ法の使用拡大など、SAF製造方法の多様化を提言しています。

最後にIATAは航空旅客へのアンケート調査も実施したようで、その結果、「SAFに対する国民の多大な支持」が明らかになったと指摘しました。調査対象となった乗客の約86%は、政府が生産を奨励すべきであることに同意し、また旅行者の86%は、燃料生産者が代替燃料を航空業界に提供することが優先事項であるべきだとも答えたそうです。でも、高額なSAFを使用するぶん、航空チケット代が上昇してもいいですか?とは聞いてないようで。

航空物流業界も手を組んでSAF利用による炭素排出削減に臨む

IATAは、世界航空業界が2030年までに炭素排出量を5%削減するには、少なくとも175億リットル (1400万トン)のSAFが必要であると示唆しました。ウォルシュ事務局長は改めて各国の国会議員に対し、「必要とされるSAF生産の指数関数的な増加を達成できる政策」を策定するよう、強く呼びかけています。

2023年12月11日掲載

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