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創業半世紀の縫製工場が自社ブランドに挑戦

厳しい経営環境から脱却するためにルームウェアを製造販売

おそらく国内で最大規模の縫製工場で歴史も古い縫製工場、株式会社ミヤモリ。これまで、大手アパレルのOEM生産を中心に、個人のアパレルブランド立ち上げをしたい人への商品供給やロボットアームカバーの生産を行っています。

縫製工場は戦後の復興期には国内の主要産業になりましたが、次第に家電や自動車などが基幹産業になり、縫製業は比較的投資額も少なく始められることから、人件費の安い東南アジアに生産拠点が移り、技術流出も進み国内の縫製工場の受注も単価も下落して行き、とても厳しい経営を続けています。

ハトムギを練り込んだルームウェア

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小矢部市はハトムギの産地で、栽培面積は日本一です。しかし、ハトムギの殻は今まで使い道が無く、肥料にされるか捨てるしかありませんでした。そこでこの殻の成分を調べたところ、殻にもハトムギの成分が含まれていることが分かり、殻から取り出したハトムギぬか油を繊維に練り込むことに成功しました。元々捨てられていた殻を使うことでアップサイクルにもなりSDGsにも貢献する商品になりました。

ハトムギヌカ油には保湿効果があり、ルームウエアとして着用することで、肌の潤いを保つことが可能です。

裁断で余る生地でぬいぐるみを制作

縫製は裁断の型紙を並べて最も効率よく生地を使えるグレーディングと言う工程があり、現在ではコンピューターで出来るだけ無駄の出ないグレーディングを行いますが、長方形の生地に対して、型紙が曲線なので、どれだけ無駄の無いグレーディングを行っても捨てる生地が出て来ます。
Nercocia.では、捨てられていた生地をぬいぐるみに加工して、捨てる生地を最小限にする取り組みもしていて、これもアップサイクルです。

国内縫製工場の高品質な縫製

半世紀を超える縫製工場としての経験とノウハウにより高品質な日本製のルームウエアです。ホームページはまだ十分なコンテンツが記載されておらず、縫製工場としての強みはこれから記載されると思いますが、何よりの強みは国内の高品質な縫製です。

縫製と言うのは、人の手によって生産されるので、品質は人に依存します。もちろんミシンの整備なども品質に大きく影響しますが、縫製の細かな調整は作業者に委ねられています。

例えば、縫い目の調整も作業者によって行われます。縫い目は複数の糸の強さのバランスによって出来上がります。

この画像は2本針オーバーロックの縫い目です。2本針オーバーロックは4本の糸のバランスで縫い目を形成します。上の縫い目は4本の糸のバランスが良く綺麗な縫い目になっています。
下の縫い目はバランスが悪く針糸が緩んでいます。このようなバランス調整は縫子さんの仕事なのですが、4本の糸のバランスで縫い目が形成されるのですが、あくまでバランスなので、出来るだけ糸にテンションを掛けず、緩い糸の引っ張りでバランスを取ることも、強い引っ張りでバランスを取ることも出来ます。
緩い糸のバランスで調整された縫い目は柔らかく、引っ張り強度も強いので、商品は長期間美しいシルエットを保ちます。
これに対して、強い引っ張りでバランスした縫い目はとても硬く、生地にも強いストレスを与えるので、長期間使用すると、縫い目が縮んでしまったり、ほつれて来たりします。

また、スウェットの脇の縫い目が蛇のようにクネクネと曲がっているのを見掛ることがありますが、これは、ミシンのスピードに縫子さんの手が付いて行かずに生地を伸ばしてしまったか、ミシンの調整が悪く、生地を伸ばしてしまっているのです。
脇を縫う、オーバーロックミシンは生地を送る送り歯が前後に分かれていて、その前後の送り量を調整出来ます。
そして送り歯の上には、押さえが乗っていて、生地を挟んで縫製しますが、押さえの抵抗で、普通に縫えば生地は伸ばされます。これを防ぐために、手前の送り歯の送り量を多くして、後ろの送り歯の送り量を少なくして、針が落ちる部分では、生地を少し縮めるように調整すると、縫い目は綺麗にスッキリとした仕上がりになります。この調整が適正に行われていないと、クネクネと曲がった縫い目になるのです。

生地も厳選

例えば、襟の生地がどんな状態の生地が使われているかも服の品質を判断する上で重要です。この画像の襟は生地の目が詰まっていて、とても良い状態の襟です。このように目が詰まっている襟は手で触ってもとても柔らかく、伸縮性もあり、洗濯しても伸びません。

この画像の襟は目が開いてしまっていて、手で触っても硬い状態で、伸縮性もありません。編み目が詰まっていない襟は編み目自体が緩いので、洗濯すると伸びてしまいます。

このような縫製工場だからこそ分かる縫製の品質に関する情報をどんどん公開して、縫製の良い商品を求めているユーザーを獲得して、どんどん認知度を高めて行って欲しいと思います。
下請け体質の縫製工場が新たなブランドを立ち上げてもなかなか成功している事例はありませんが、強みをしっかりと打ち出して、成功して欲しいと思います。

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