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米国ウーマンズアパレル「リミテッド」のチャプター11申請は「フォーマット」時代の終焉?

ギャップとならんで米国のアパレル業界におけるトップ企業の一つであったリミテッドが、今年(2017年)はじめに米国版民事再生法であるチャプター11の適応を申請した。ただしチャプター11を申請しているのはリミテッド本体であり、グループの中にはいくつかの優良リテーラーが存在している。リミテッドの破綻は米国リテール業界が新しいステージに移行しつつあることの一つの象徴だと思う。

リミテッド社は以前から周辺事業の多角化に非常に積極的な企業だ。たとえばビクトリアズシークレットやバス&ボディワークスなど、アパレルからは若干距離をおいた新フォーマットの専門店チェーンを生み出して大きく育て、現在はリミテッドグループからスピンアウトさせている。またヘンリ・ベンデルやアバクロなどアパレル企業買収にも積極的であったが、こちらはあまり好調とは言い難い。

ただしそれらの企業もすでにリミテッド社からは切り離されて運営されている。つまり創業時からリミテッドの成長を支えてきた本家のアパレルフォーマットそのものは破綻したものの、スピンアウトされた従来型のアパレルではない企業群がなんとか元気を保っているという状況。

最近シアーズも店舗閉鎖を発表して話題になっているが、自動車タイヤから女性アパレルまでを一つ屋根の下で販売するというフォーマット自体、だいぶ前から時代遅れになっており、様々な改善策が講じられたものの、いつ死んでも不思議ではない瀕死の状態にあった。多くの米国人にとっては「シアーズってまだあったんだ?」という印象だろう。

米国のリテール企業はこれまでフォーマットの開発によって大きく成長を続けてきた。ギャップとリミテッドはアパレル市場においてSPA(製造型小売業)というフォーマットを開発し、確立して大きく成長してきたグローバルな優良企業であった。それらの企業を参考に日本で同じフォーマットをスタートして成長したのがユニクロだ。

簡単に言いきってしまえるほど問題は単純ではないものの、これまで成長のベースとなってきたフォーマットそのものが時代と大きくズレてきていることを、リミテッドの現状が示しているのは確かだ。こうした状況は米国においても、そして日本においても変わらない。日本でもアパレルリテーラーが大きな転機を迎えている。さらに、フォーマットが効力を失う傾向はアパレルに限らず、すべてのリテールについて広がりつつある。

人がモノを買うという行為自体が大きく変わろうとしている状況に、リテールサイドはフォーマットの改良や開発という従来と変わらない手法で臨んでいる、ということが問題なんじゃないか、と思い始めた今日このごろです。

画像はリミテッド社の現在のホームページ。チャプター11申請中なのでクローズしています、というメッセージ。

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