コンサルタントの質問術:質問力は企画力
こんにちわ、tohari.です。
今日は「質問力」をテーマとした話をしていきたいと思います。
質問力をネットで調べると本当にたくさんの情報が出てきます。質問力は今やとても重要なビジネススキルの1つとして認識されてきていると思いますが、ネットで紹介されている情報の多くはコミュニケーションの円滑化やセールスなどで活かすことを目的とした内容となっています。
でも実は、質問力は企画力ともすごく関係しているのですが、その視点から語られている記事はあまり見かけませんので、今回は「マーケティング企画(施策立案)を考える際に必要な質問力」というテーマで、普段筆者が行っている質問方法をご紹介していきます。
企画力をアップさせたいと思う人の参考になれば幸いです。
質問の特性分類
質問術を語る前にまず知っておいていただきたことなのですが、質問には大きく4つの種類があります。
縦軸が事実と意見、横軸が明確と不明確を表しています。
まず右上の「事実*明確」ですが、明確な事実に関する回答を求める質問となります。例えば、「あなたの毎朝のルーティンは何ですか?」というような質問です。この様な質問の場合、「朝起きたらコーヒーを1杯飲みます」というように明確な回答が得られます。
次に右上の「意見*明確」は、例えば「なぜあなたは毎朝コーヒーを飲みますか?」という様な質問で、その回答は「スッキリ目を覚ますことができるからです」の様に、意見だけど明確な回答になる質問になります。
次に左上の「事実*不明確」は、事実だけど回答者本人にとっては不明確な答えになるような質問のことで、例えば「あなたが毎朝コーヒーを飲むことに対して、家族はどう思っていますか?」などがそれにあたります。
回答としては、「そうですね、恐らくコーヒーを切らさないように気を付ける必要があるので、ちょっと面倒に思っているかもしれませんね」のように、事実だけど回答者が考えたり、推測したりする必要がある質問になります。
最後に左下の「意見*不明確」な質問とは、例えば「あなたはいつまでそのルーティンを続けますか?」のような問いかけで、その答えとしては「コーヒー好きは子供の頃からなので、ずっと続く続くかもしれませんね」などとなり、正いかどうかわからないことに関する意見を聞く質問になります。
この時重要なのが、4つの質問で相手の答えやすさが変わってくるということです。具体的には右上「事実*明確」→右下「意見*明確」→左上「事実*不明確」→左下「意見*不明確」の順番で、回答がしづらくなってきます。
このことが、相手に質問を投げかける時にとても重要になってきます。
まずはこのことを認識いただいた上で、企画作業における質問術を解説していきたいと思います。
企画作業で用いる4つの質問目的
企画作業において質問を行う時の目的は大きく4つります。
事実確認のための質問
相手の意見・考えを引き出すときの質問
自分の思考を整理するための質問(自問自答)
相手の考えをある方向へ誘導するための質問
この中で「4」の難易度が最も高く、うまく行うには、今の相手の頭の状態から誘導したい結論までのストーリーが自分の中で明確に描けていないとできません。具体的には「はい」か「いいえ」で答えられる複数の質問を組み合わせ、かつそれぞれの質問の答えがはっきりと出る形で組み上げておき、各質問に順に答えていくことで必然的に誘導したい結論へ辿り着いてしまうような質問術・会話術になります。
これができると、例えばプレゼン前にクライアントの考えを自分たちの提案の方向へと事前に導いておき、その状態でプレゼンを行うことで、コンペであれば勝率をぐんと上げることができます。
ただし、この場合は質問力以上に説得のストーリーがとても重要になるので、質問力をテーマとした本記事ではこれ以上は省略し、主に「1〜3」の内容に絞って解説していきたいと思います。
1. 事実確認のための質問術
この質問は、主にオリエンシートには書かれていないけども、クライアントが持っている(であろう)事実情報を収集するのに使います。質問特性としては一番答えやすい「事実*明確」該当します。
この時の質問は特にテクニック的なものは必要なく、聞きたい内容を整理して伝えれば良いだけです。ちなみにオリエン時に聞いておくべき内容には、主に以下の様なものがあります。
●今回の提案施策に関して:
予算、納期、施策の実施期間、現状の課題、今回の目的、ターゲット、施策の方向性(クライアントの現時点での考え) など
●前回の実施施策に関して:
予算、時期、ターゲット、企画内容、成果、成功要因、失敗要因 など
●直近のビジネス状況に関して:
売上動向、顧客数の増減状況、新規客・既存客の割合と増減状況、現在のブランドの認知率、将来ビジョン・計画、現状の課題感 など
などです。
多岐にわたっているので、全ての情報が聞けないことも多いですが、できるだけ拾えると企画に役立ちますので、上記を参考に抜け漏れなく質問できると良いと思います。
2. 相手の意見・考えを引き出すときの質問術
この質問は、例えばオリエン後の情報収集において、関係者へヒアリングをする際に用いるなどが主な使い方になります。
この時、事実を知っている人に聞くのであれば、「事実*明確」な質問になるので、ストレートに質問をぶつけるだけで十分です。
ですが、例えば消費者意識や行動を把握したいなどの意図で、身の回りにいる商品やサービスの利用者にヒアリングをする際などは、回答者もはっきりとわからない様な意識や考えを尋ねるケースも多くなり、一番回答難易度の高い「意見*不明確」な質問をぶつけることになります。
その際、いきなり「あなたはその商品を選んだ時、どんなことを考えましたか?」のような質問をしても、納得感のある役立つ情報が得られづらいので、簡単な質問から始め、徐々に核心に近づいていくような問いかけが必要になってきます。
例えばこのようなものです。
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<例:化粧品の新商品のプロモーション企画を考える際のヒアリング>
1stステップ:「事実*明確」の質問
あなたは今何の化粧品を使っていますか?
その化粧品をいつから使っていますか?
その化粧品を使い始めたきっかけは何でしたか?
2ndステップ:「意見*明確」の質問
その化粧品を初めて知った時、特にどの様な印象を持ちましたか?
その化粧品を使う前に調べた時、いいと思った点ははなんでしたか?
その化粧品の最終的な購入の決め手はどの様なものでしたか?
3rdステップ:「意見*不明確」の質問
今度新しくA化粧品(商品名などは曖昧にして聞く)の発売が予定されていますが、使ってみたいと思いますか?
使ってみたいと思う場合、その理由は何ですか?
使ってみたいと思わない場合、どの様な点が解消されれば使ってみたいと思いますか?
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といった具合です。
このとき、一番知りたいのは3rdステップの質問なのですが、ステップ1→2→3と徐々に回答者の頭の中を整理してあげながら進めることで、ある程度納得度の高い回答が得られるようになります。
そしてもう1つ、このような質問の進め方と同じように重要なのが、一番最後の問いかけ方にあります。
「使ってみたいと思わない場合、どの様な点が解消されれば使ってみたいと思いますか?」
一般的に利用意向を聞く場合、「使ってみたいと思うか」「思う場合の理由」「思わない場合の理由」をそれぞれ聞いていくことが多いと思います。
この時「思わない理由」の聞き方が大切なのですが、ただ理由を尋ねるだけでは「〇〇が理由でダメでした」という結果が出るだけです。
ですが、どうなれば使いたいと思うかという「使うための条件」を尋ねる聞き方であれば、今後の打ち手のヒントまでが得られることになります。
多くの場合、商品に何かしら弱い点や不安な点があるわけで、その様なマイナス点の解消の可能性を引き出すことも、ヒアリングにおける質問力としてとても重要です。
ちなみにですが、相手の意見・心理を聞く際に柱となるのが、この2つの問いかけです。
「あなたはどう思う?」
「なぜそう思う?」
前者は相手の考えを言葉として出させるための問いかけであり、後者はその考えを論理的に整理し、より深掘りさせるための問いかけです。
この2つの問いはセットにして使うことでより効果を発揮するので、特に深層的な意識を炙り出したい時にはうまく組み合わせて使うと良いと思います。
3. 自分の思考を整理するための質問術(自問自答)
この質問は主に情報収集後の思考・企画プロセスで用います。
質問というと「誰かに対して」と思うかもしれませんし、考えること=自分への質問という認識を持つ人は少ないかもしれません。ですが、企画において自問自答は非常に重要な作業であり、思考によって出されるアウトプットの質は、自分に問いかける質問の質によっても大きく変わってきます。
具体的にみていきたいと思います。
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まず前提として、あるショッピングセンターのシーズナルキャンペーンの企画を考えるとします。この時、オリエン、自主調査を通じ、クライアント情報、顧客情報、競合情報など、様々なファクトを集めることができました。
それらの情報をもとに企画を考えていきますが、ここで自問自答を行います。
例えば以下の様な「競合情報」が得られたとします。
ショッピングセンター各社は「脱モノ売り化」を目指し、様々な動きが活発化している。
その内容とは「顧客体験」や「デジタル活用」「ハイタッチなサービス」など。
その一方で、ポイント10倍キャンペーンなど、従来のディスカウント型キャンペーンも散見される。
これらの情報をどう企画に活かしていくのか?
筆者ならこんな質問を自分に問いかけます。
このような動きには、各社のどんな課題感・狙いがあるだろうか?
またそのような課題感は、クライアントにとっても当てはまるだろうか?
もしクライアントでもこのようなプロモーションを行うとしたら、どんなことが考えられそうか?
またそれは従来行ってきたプレゼントキャンペーンと比べ、有効性はどう考えられるだろうか?
などです。この様な自問自答によって、以下の様な回答を自分の中から引き出すことができます。
課題感・狙いとしては、ショッピングとテーマパーク・カルチャーを融合した新しい遊びの場としての存在価値の醸成といったところではないか
これは他店というより、対ECという意識が強いだろう
その中で、各社ターゲット層を意識しつつ、商業施設としての独自性を打ち出す構造としている
また、戦術的にはSNS活用によるバズらせ狙いも伺え、各社SNSはかなり意識している模様で競争が激しい
このような体験型プロモーションは、クライアントにとっても、「ブランディング」や「ついで買い」などにおいて、非常に重要になるだろう
今後ショッピングセンターは、リアル店舗だけでなくECも含めて競争して行かねばならず、ブランド力強化なしに今後の顧客拡大は見込みづらいだろう
そろそろクライアントも従来型のプレゼントキャンペーンからの脱却し、ECではできない体験型プロモーションに着目していくべきだ
さらにその店舗体験には、「ブランドならでは」の要素を加え、他社ではできないオリジネル性の高いプロモーションにしていく必要がある
と、この様な具合です。これが企画につながるファクトからの意味合い出しになります。この様な作業を、競合情報、クライアント情報、顧客情報を通して行っていくことで、企画の骨子を導いていきます。
自分への質問は、自分が考えるべきことに対して思考を集中させることができます。そしてこの時大事なことは自分への問いを曖昧にしないことです。
できるだけ切れ味鋭い質問ができると、切れ味鋭い回答=意味合いだしにつながります。
まとめ
最後にこれまでの内容を簡単にまとめます。
質問を回答の性質で分類すると、4つに分かれる。
・事実*明確 ・・・あなたの毎朝のルーティンは何ですか?
・意見*明確 ・・・なぜあなたは毎朝それを行なっていますか?
・事実*不明確 ・・・あなたが毎朝それを行なっていることに対して、家族はどう思っていますか?
・意見*不明確 ・・・あなたはいつまでそのルーティンを続けますか?
上から順に回答が難しくなるので、聞き出したいことに応じて、順番を考慮して質問を構成させる必要がある。
企画作業における質問の目的は大きく4つに分類される。
1)事実確認のための質問
2)相手の意見・考えを引き出すときの質問
3)自分の思考を整理するための質問
4)相手の考えをある方向へ誘導するための質問
1)の事実確認のための質問は、質問カテゴリーの一番簡単な「事実*明確」に該当し、特にテクニック的なことはなく、聞きたいことを整理して聞くだけで良い。
2)の相手の意見・考えを引き出すときの質問は、企画にあたり主にユーザーヒアリングなどに用いるものであり、特に消費者意識に関する質問は「意見*不明確」に分類され最も回答が難しくなるので、そのような場合には「事実*明確」な質問からはじめて、徐々に本質的な質問へと近づけていく、質問の構成が大切になる。
また、利用意向を聞き出したい場合、利用意向がない人に「ない理由」を聞くだけでなく、どの様になったら利用したいかという、「利用の条件」を問う質問の仕方がより有効である。
3)の自分の思考を整理するための質問は、主に集取した情報から企画に必要な意味合いだしを行う際に自分に向けて投げかける質問であり、考えるべきことを「質問」という形で明確にすることで、意味合いだしがスムーズに行える。
この時大事なことは、自分への問いを曖昧にしないことで、できるだけ切れ味鋭い質問ができると、切れ味鋭い回答=意味合いだしができる。
以上となります。
企画作業において質問は、様々な場面で使うスキルとなっていますので、ぜひみなさんも企画立案の際は意識して質問を作ってみてください。
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