ChillTime☆あなたと一緒にみたかった、あの海の底。
これはまだ、私がパートナーのオリバーとお付き合いを始める前のお話です。
私は大分県の別府湾に面した海水浴場のそばで生まれ育ちました。
一方、オリバーはオーストラリア人、クイーンズランドのとあるビーチのそばで生まれ育ちました。
私が小麦色の肌で生ぬるい海水にちゃぷちゃぷと浸っている頃、オリバーは焚火をしながらホットミロを飲んでいて、私が神社で甘酒をよばれている頃、オリバーは紫外線で背中を真っ赤にして海中にジャンプしていました。
私たちは地球の北側と南側で、逆転している季節をそれぞれ楽しんでいた子どもでした。
§
時は流れ、私たちは東京で、お互い別の場所で暮らしていました。
私は英会話がとても苦手ですが、練習のためもあって、オリバーとはときどきデートをしていました。
それは今のように暑い夏の日でした。
"Have you tried scuba before?"
(オ:スキューバダイビングしたことある?)
"Yes, I did. In Saipan."
(私:うん、サイパンでやったことあるよ)
"Good! I'll be in Izu-Oshima this weekend. Why don't you come with me?"
(オ:いいね、それなら週末に伊豆大島へスキューバダイビングへ行くんだけど、一緒に行かない?)
"Eh? Just us?."
(私:え...、2人切り?)
"No, no. I’m staying at the house of my friends of couple."
(オ:いやいや、僕の友だち夫婦の家に泊まるんだよ)
"Sounds nice!! Absolutely, yes!"
(私:ええーっ!楽しそう!もちろん!)
ちょっと驚いたけど、バカンスのお誘いがとても嬉しかったです。
ダイビングショップの男性インストラクターは、オリバーと顔なじみでした。彼は、オリバーの顔をみると、笑い、ハグしました。
オリバーの友人家族は小さな子どもがいたので、浅瀬で遊んでいるということになりました。
男性インストラクターに訊ねられるまで、ライセンスのことなんて考えてもみませんでした。
「そっか、ないなら、体験コースになるね」
水深で最高6メートルまでというお話でした。私がサイパンで潜ったときと同じコースです。
オリバーたちが潜るのは30メートル近くまで。オリバーはてっきり、私がスキューバダイビングのライセンスを持っていると思っていたようです。
私も彼がライセンスを持っていたとは知りませんでした。恐らくここでも、英語の苦手な私との行き違いがあったと思います。
オリバーは、申し訳なさそうに何度も私に謝っていました。
"No worries! You should enjoy your own time."
(私:心配しないで!自分の時間を楽しんで)
ちょっぴり残念だったけど、伊豆大島は水深6メートル程度の海でも、「ここが東京か?」と思うほど、黒潮の恵みを受け、たくさんのトロピカルな生きものにあふれていました。
クマノミ、ソラスズメダイ、アサヒハナゴイ、コケギンポ、ツノダシ、ウミウシ...。サンゴ礁もきれいでした。
でも、やっぱり一緒に潜りたかったかも。あんなにきれいな海の底を、やっぱり一緒にみたいかも...。
私がオリバーへの気持ちに気づく瞬間でした。
私は一大決心をして、そこから数年後に、水深30メートルまで潜れるアドバンスコースのライセンスを取りました。
初めて2人で行った伊豆大島から15年。あの日と同じ海の底は、まだ一緒にみられていませんが、すでにたくさんの海を一緒にみましたね。
これからも、2人で仲良く海の近くで暮らし続けられますように。
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