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上毛新聞掲載インタビュー全編(子どもバディ×保護者×大人バディ)~気軽に喋れる大人がいるんだ~

We are Buddies (以下、WAB)事務局の西角綾夏です。We are Buddies (以下、WAB)事務局の西角綾夏です。

We are Buddies は、現在、東京と群馬で活動していますが、先日、群馬県の地方紙である上毛新聞社から連絡をいただき、この活動に参加してくださっている大人バディの方・保護者の方・お子さんについて取材していただきました!

新聞記事として掲載される内容は一部ですが、お三方へのインタビューの中できけたお話が素晴らしすぎたので、こちらのnote記事で、3人のお話をたっぷりとお届けしていきま

大人バディ:後藤美加さん

まずはじめに、大人バディの後藤美加さんのインタビューです。美加さんは、2021年の7月から、小学校5年生の女の子Aちゃんの大人バディとして活動しています。

美加さんは、前橋医療福祉専門学校で、理学療法学科の教員として勤務されています。学校とWABとの連携をきっかけに、WABの存在を知り、真っ先に活動に参加したいと思ったそうです。美加さんは、WAB事務局が教職員の方向けにWABの活動紹介を行った際に、「心が動く」「魂が揺さぶられた」と感想をくれました。なぜそれほどまでに活動に共感してくれたのでしょう。

後藤美加さん(以下、美加):WABの活動を知ったのは、今後の生き方について考え、自分が教員をやっている意味ってなんだろうという問いを持っていた頃でした。自分が普段かかわる範囲が専門職同士ばかりで、コミュニティが広がらないことに不安に駆られ、自分の知らない世界があることが怖くなっていました。

違う世界の人と触れたい、固定観念を壊したいという思いがあったんです。また、日々学生と向き合うなかで、専門教科を教えるなら誰でもできるけれど、学生にはもっといろんな価値観に出会ってほしいなと思うことが多く、自分は専門職の人を育てる以前に、一人の人間としての成長や教育をやりたいんだと気付きました

そんなふうに考えながら学生と接するなかで、その子の逃げ道とか家族や学校以外のもう一つの安心できる場所だったり、安心できる存在になりたいなと思うようになりました。そのため、WABの活動を知ったときに、自分が探していたのはこれだったんだと運命のようなものを感じたんです

自分の青春を取り戻している

共感度と熱量の高い美加さんとの出会いにより、WAB群馬ブロックはきっと良い方向に前進していくだろうと感じたのを今でも覚えています。そして、小学校5年生のAちゃんの大人バディとして美加さんの活動が始まりました。

美加:Aちゃんは、とてもアクティブな女の子なので、一緒にボルダリングをやったり、アスレチックに行ったり、外で身体を思いっきり動かすような遊びをしています。毎回Aちゃんと遊んだ後は全身が筋肉痛で、小5ってこんなに体力あるのかと驚きます。でも、大変というよりは、純粋にAちゃんの体力に驚かされてすごいなという気持ちのほうが大きいです

最近は誰かと思いっきり遊ぶという時間がほとんどなく、自分一人だと外で身体を動かす機会もなかなか作れないので、Aちゃんと過ごす時間は自分の青春を取り戻している感覚です。Aちゃんのことは、小学生だと意識しておらず、一緒に遊ぶ友だちだと思っています。

私と一緒にいるときのAちゃんは、すごくしっかりしている印象です。遊ぶときは否定の言葉を使わず、まずは一旦全て受け入れてみて、本人の自主性に任せるということを意識しています。運動をしているときは本当に楽しそうで、思いっきり発散しているようですが、今後はもっとAちゃんの崩れた面も見てみたいし、いろんなお話ができたらいいなと思っています。

活動の魅力は一言では言い表せない

美加さんは、ご自身がバディとして活動することで、さらにWABへの共感を深め、今では前橋医療福祉専門学校のWAB担当として、学校関係者とWABの窓口になってくださっています。また、WAB全体の打ち合わせやイベントにも積極的に参加してくださり、運営をサポートしてくださっています。

美加:WABの活動の魅力はとても一言では言い表せません。事務局の愛梨さんと綾夏さんが使う言葉や考え方、価値観もとても素敵ですし、すごいことが多方面にあってそれらが掛け合わされている感じだなあと思います。今後は、もっと群馬で活動が広がっていったらいいなと思いますし、自分ももっと盛り上げていきたいなと思っています。

美加さんがWABにかかわるようになって半年以上経ちますが、教員としてではなく、一人の人として誰かと接している美加さんの姿は日に日に輝きを増していっています。今回、思いの丈を熱く語る美加さんを間近で見て、本当に出会えてよかったなという気持ちが込み上げました。

保護者:Mさん

次は、Aちゃんの保護者のMさんです。群馬県在住のMさんは、ご主人とふたりで、小5のAちゃん、小3の娘さん、3歳の息子さんの子育てをされています。

自分だけの価値観で子どもが育つのが怖い

Mさんは、今回の取材のためにWAB参加のきっかけや活動を通して感じたことを事前にメモにまとめ、一言一言噛み締めるように思いを伝えてくれました。

Mさん(保護者):活動に参加したのは、親以外にも話せる人がいたらいいなと思ったのがきっかけです。もともと娘のAと私は性格が正反対のため、ぶつかり合うことが多すぎて、このままだと本当に良くないなと思っていました

どうしようと思っていたときに、私が娘くらいの歳のときには、他愛もない話をずっと聞いてくれる叔母の存在があったのを思い出したんです。自分自身、親から言われたことは素直に聞けないけど、第三者に言われたことなら話を聞ける、ということがあったので、娘にもそういった存在ができればと思ってお願いしました。

また、普段は、親戚も近くにおらず、親だけが子どもと接する事がほとんどで、自分だけの価値観で子どもが育つことがすごく怖くて、誰かほかの人に入ってもらいたいなと思っていたタイミングだったこともあります。

Mさん(保護者):娘のAは、3人兄妹の長女なので、我慢させることが多く、ずっと申し訳ないなと思っていました。特に一番下の息子は3歳なので、どうしても息子も連れて行ける範囲に遊びが制限されてしまい、なかなか娘のAのやりたいことを叶えてあげられていませんでした。そのため、娘のやりたいことを一緒に思いっきり楽しんでくれる美加さんの存在には、とても感謝しています

大人への信頼感を取り戻す

家庭ではなかなかできない遊びを楽しんでいるAちゃん。保護者のMさんから見て、少しずつ変化が生まれてきたようです。

Mさん(保護者):例えば、この間は、美加さんと娘がボルダリングに遊びに行っていたのですが、娘は美加さんと一緒に行くまで「ママがやらせてくれない」とか「他の兄妹のせいでやれない」といつも言っていました。

美加さんに連れて行っていただいて、「もうボルダリングいいの?」と聞くと、「あれは次の日筋肉痛になるからもういい」と言っていたんです。

彼女なりに、自分はやりたいのに我慢しているという思いがあったところ、美加さんのおかげで実際にチャレンジすることができ、自分の好きなことや嫌いなことを見つけられていっているんだなと思います

Mさん(保護者):当時の娘は、大人への不信感が強く、大人は大人同士が話すものだと考えていて、自分から親以外の大人と話すことが全くありませんでした。美加さんと会うようになって、家でも「学校の先生がこう言っていたよ」と話すようになり、大人への信頼感を取り戻してきているなと感じます

娘が美加さんのことを信頼しているのも分かるし、私と主人もみかさんを信頼しているので、美加さんのような人に出会えたことはすごくラッキーだったなと、感謝でいっぱいです。

娘を客観的に見られるように

この活動に参加し、Aちゃんだけでなく、保護者のMさんの気持ちにも少しずつ変化が生まれているようです。 

Mさん(保護者):また、娘だけでなく私自身もWABの活動に支えられています。学校や習い事など娘を誰かに預ける機会があっても、その先生とは、習い事のことや勉強のことが話題の中心になります。

定期的に話す時間を設けてくださるWABの面談の場では、美加さんと事務局の愛梨さんや綾夏さんと、大人がみんなでじっくり娘のことを丸ごと話してくれるんです。

こんな機会は他に全くなく、時間をとって、娘がやりたいことや、どんな子になってほしいのかという話をしていくなかで、私自身が娘をちょっとは客観的に見られるようになったかなと思います

かかわる人が増えたことで、一歩引いて子育てに向き合うことができるようになったというMさん。最後に、この活動を初めて知る方へメッセージをいただきました。

Mさん(保護者):この活動は、我が家みたいに親子の性格が正反対の家庭や、子育てに行き詰まっている家庭に知ってもらいたいです。

また、娘は、先生という立場の大人にしか出会ったことがなかったのですが、この活動を通して、大人もいろんな人がいる、いろんな価値観があるというのを分かってほしいなと思います。こういう生き方もあるのか、こういう人もいるのか、ということを知ってもらいたいです。

子どもバディ:Aちゃん

最後に、子どもバディのAちゃんへのインタビューです。Aちゃんは、身体を動かすことが好きで、好奇心旺盛な小学校5年生の女の子です。美加さんとバディになって半年以上経ち、どのようなことを思っているのか聞いてみました。

気軽に喋れる大人がいるんだ

Aちゃん:遊ぶのはすごく楽しい。先生以外の大人の人と遊ぶのが不思議な感じ。大人の人はキチキチした几帳面な人ばっかりだと思ってたけど、気軽に喋れる人がいるんだと思った。敬語で話さなくていい人がいるんだ、とびっくりした。

横で聞いていた美加さんが「私は全然几帳面じゃないからびっくりしたかもしれないけど、Aちゃんとは友だちだと思っている。敬語で話さなくていいよ。」と言うと、少し恥ずかしそうに「まだできないからちょっとずつ」と答えるAちゃん。

その様子から2人が年齢や属性は関係なく、フラットな信頼関係を築こうとしていることを、実感しました。大人だからといって絶対的に正しいわけでもなく、大人も一人の人間。フラットな関係を築こうと頭では分かっていても、なかなかすぐにできるわけではない。お互いが共に過ごすことで、関係性はゆっくり少しずつ築かれていくものなんだなと思いました。

「今後はどうなっていきたい?」と聞くと、Aちゃんから「もっと仲良くなりたい。全力で鬼ごっこをしたい!」という答えが返ってきました。「よーし、鍛えるぞ!」と美加さん。2人でまた、スケートリンクへ戻っていきました。2人の関係はまだまだ始まったばかり。今後もずっと続いていきます。

編集後記

今回は、半日かけて、大人バディ、保護者の方、子どもバディにそれぞれお話を聞くという、濃密な取材でした。取り組み自体は1対1で時間を過ごすというシンプルなことなのに、その変化や気付きは1対1にとどまらず、多岐にわたっています。三者三様の語り口で、美加さんとAちゃんの関係性を見つめることで、この活動の奥深さを感じました。

また、今回、子どもバディに直接感想を聞くというのは、WABが始まって以来初めての試みでした。後日、美加さんから話を聞くと、インタビューを終えスケートリンクに2人で戻った後のAちゃんは、今まであまり喋らなかったのが嘘のように、美加さんに次から次へと質問が止まらなかったそうです。美加さんと関係を振り返り、言語化することで、Aちゃんのなかで、美加さんの存在にどこか自覚的になったのかな、なんて想像してしまいます。

2人の出会いと、そこから紡がれる関係性の尊さを噛みしめた時間でした。

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