店長は対人恐怖症

　皆さん、こんにちは。タイ人恐怖症って言うとサガットとか、アドンだよな。木賃ふくよし(芸名)です。
　シュラはそんなに怖くないっス。はい。

　さて。世間では渾名を禁止して、さん付けで呼ぼう的な教育方針が話題になってましたね。ええ。
　方向性はわかるんですが、それじゃまさに臭い物に蓋をしてるだけなんですよね。
　無論、蓋をしたら、それなりの効果はありますし、蓋をしないと悪影響があるので、蓋をする事には概ね賛成ですが。

　ただ、蓋の下でどんな発酵をするかが見えなくなるんですよね。
　要するに、縮小するけど濃縮する悪影響と、見えてる衛生効果のどちらもやらなきゃいけない訳で。単に渾名を禁止するってんじゃ片手落ちですわな。あれ？ 片手落ちって言っちゃダメなんだっけ？
　まあ、生きやすい世の中は、息苦しいモンなので、渾名禁止とか言葉狩りとかその辺は、ある程度仕方ない事なのかも知れません。

　さて。本日のお話はそんな渾名。

　その昔、ワタクシはレンタルビデオ店でバイトしてまして。ええ。
　んで、そこのね、店長がね、

　対人恐怖症なの。

　(´･Д･)」 いや、接客業で対人恐怖症て。

　まあ、もう話のオチ的にはココが最大級なんですが、ココで終わると渾名の話につながらないので、続けます。
　この店長、Ｆ井Ｋ一って言うんですが、バイト連中からは、Ｋちゃんって呼ばれてました。

　何しろ、対人恐怖症なので、目を合わせてくれません。
　常に視線が怯える小動物のようにキョロキョロしています。こちらから目を合わせると、顔をそらします。
　声が常に震えています。落ち着きがありません。挙動不審と言うか、キョドってると言うか、キョロ充にもなれないキョロ充と言うか。
　動きが常に、ドラマに出てくる万引き犯みたいなんですよ。

　よく髪に寝癖がついてたし、タバコも吸ってないのに時折鼻毛が出てるし、シャツインなのにはみ出てるし。

　まあ、これだけだと対人恐怖症って程でもないように聞こえるかも知れませんが、レンタルビデオ会員登録の際に会員規約説明とかするんですが、

　「ここここちらがが会会員規約規約になりなりなりなります」ってビブラート効かせ過ぎだし、会員証を渡す手が、猫じゃらしでも持ってんの？って言うぐらいに震えてるんですよ。

　で。そんな接客だからよく客とトラブります。
　しかもワタクシが育った場所もビデオ屋がある場所も、お世辞にもガラが良いとは言えない場所で、Kちゃん、何をしたのか知らないけど、

　ヤクザと
　揉めてる
　んですよ。

　返却されたビデオを陳列棚に返して戻って来たら、カウンターで若いヤクザ２人がKちゃんを怒鳴りつけている。まずい時に戻ってきたっぽい。
　片方はTシャツの腕から和彫りのモンモンが見えてる。相手が相手だけに、ヤクザが悪いっぽいけど、ヤクザの言い分を聞いてる限り、Kちゃんがヘマをしたっぽい。

　イマイチ事情はわからんが、こちら側が悪いっぽいので、神妙なツラをしてヤクザからのお叱りを黙って受ける。
　同じくバイトのマツモトくんはレンタルケースに新作案内の広告を入れている。ハヤシくんは、別の新規客の会員証を作ってる。２人とも自分の仕事が忙しいふりをしていた。特にハヤシくんは目が笑ってた。

　事の発端は不明だが、ヤクザの言い分の方が正しいっぽく、黙ってヤクザの説教を受けるワタクシとＫちゃん。
　ヤクザからは「兄ちゃんもそう思うやろ？」とワタクシに同意を求められ、店長とヤクザで板挟みではあるが「ええ、はい、そうですね、おっしゃる通りです」と苦笑い。

　「こっちの若い兄ちゃんの方がしっかりしとるやろが。

　お前それでも店長か！？」

　とヤクザに褒められましてもね？

　そして、怒鳴られてる店長はいつも以上に挙動不審が止まらずキョロキョロしまくる。
　その姿にキレたヤクザが、再び怒号をあげる。

　「人の話をちゃんと聞いとんのか！？

　この鼻毛！！」

　確かにＫちゃん、今日も鼻毛が出てたけど。素晴らしい観察眼だなヤクザ。

　この鼻毛て。

　ってか人を鼻毛呼ばわりってのが死ぬほど笑えたのですが、今は笑う訳にもいかず、必死で笑いを堪える。耐える。堪える。ひたすら耐える。
　どうにか波を乗り切ったと思って顔を上げたら、

　マツモトくんが肩を震わせて笑いを堪えてるし。
　ハヤシくんなんか、更に目が笑ってるし。

　我々の笑いとヤクザが去るまでは本当に地獄でした。ええ。

　そんな訳で、やっぱり渾名は良くないと思います。

　なお、ワタクシが知る最強の渾名の話はコレ。

　この二つが、ワタクシの知る最強の渾名です。(´･Д･)」

　※ この記事は全て無料で読めますが、この時の笑いを堪えたワタクシを褒める投げ銭(¥100)を受け付けております。
　なお、この先には特に何も書かれていません。