[随筆] 毎朝、顔を構築する
化粧が嫌いだった。義務感でやっていた。自然な状態に手を加えるのが、どことなく腑に落ちなかった。
けれど、なぜか最近、化粧が楽しくなった。眉を引くと、背筋が伸びる。チークを入れると、血色が滲む。仕上がりを見ると、ちょっとだけ口角が上がる。
すっぴんを否定したいわけではないが、どうも丸腰では気合が入らない。ファンデーションやチークは、ウイルスや菌から肌を守ってはくれないけど、何かを守ってくれている、気がする。
あるがままの自然、素肌を土台にして、毎朝、私達は何を描き出すのだろう。
若い時の顔立ちは、天性のものだ。だが、徐々に人為が上回るだろう。生き様が、顔つきに映されるからだ。それは残酷な真実かもしれないが、同時に救いでもある。自分で自分の顔をつくっていくことが出来るからだ。
明日もきっと、鏡に向かうだろう。