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記号過程、システム、意味

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人間と自然、人間と機械、人間とAI 対立するふたつのもの それらはなぜ対立するふたつのものになったのか? その答えを「記号過程」という用語を手がかりに考える
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2019年5月の記事一覧

クロード・レヴィ=ストロース著 『神話論理』の最後の1ページを読む ー構造の概念について

(本noteは有料に設定しておりますが、無料で全文をお読みいただけます) ※ ほうぼうで「レヴィ=ストロースはすごい!すばらしい!」と触れて回っていると「おすすめの一節を教えてほしい」とか「どの本のどこを読んだら良いか?」といった話をいただくことがある。 私も小さな一読者であり、レヴィ=ストロース氏の思想を一掴みにできるような一節を選び出せる力など持ち合わせていないので困ってしまうのだけれども、長大な『神話論理』の一番最後のページを読んでみる、というアイディアが結構行け

¥150

温暖化と情報化−スティーヴン・ミズン著『氷河期以後』

 温暖化と情報化。といっても現代の話ではない。  スティーヴン・ミズンの『氷河期以後』。本書は紀元前二〇〇〇〇年以後の人々の暮らしと、その暮らしの場を包み込む自然環境の姿を復元するところから始まる。  ところでなぜ紀元前二〇〇〇〇年なのか?  この時、人類史上なにか決定的なイベントがあったのだろうか?  筆者によれば、紀元前二〇〇〇〇年は「最後の氷河時代の絶頂期」である。この紀元前二〇〇〇〇年から続く一万五〇〇〇年間で、人類の中に、小さな集団に分かれて暮らす狩猟採集民

意味を生む置き換えを「彷徨わせる」こと−読書メモ『変成譜 中世神仏習合の世界』

 前回のnoteでは「神話」の思考ということを紹介した。  神話には、人間が動物たちの暮らす村に迷い込む話がある。動物たちが人間たちのように村をつくり、狩猟し、料理をし、家族の関係を結んだり仲間割れをしたりする。  神話の思考では、人間が動物になり、動物が人間になる。  神話に登場する主人公は、人間でありながら同時に動物であり、またその逆でもある。主人公は人間と動物の境界を超えて、異なるものへと変身する。変身しながらも、なんらかの同一の存在であり続ける。一身に、次から次へ

関係が項に優先するー読書メモ ヴィヴェイロス・デ・カストロ『食人の形而上学』(4)

 最近の人類学がおもしろい。その中でも特に興味深いのがヴィヴェイロス・デ・カストロの『食人の形而上学』である。前回のnoteに引き続き詳しく読んでみたい。 構造の運動としての言語、音楽、宗教、科学、神話 人類学といえばレヴィ=ストロース、レヴィ=ストロースといえば構造主義、構造主義といえば『神話論理』である。  ところで「神話」というと、科学技術が未発達だった時代の迷信、取るに足らない間違い、科学によって克服され消えるべきもの…、という意味合いで捉えるひとも居るようだ。科