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その日を心待ちにしている

今、腰にシップを貼り、さらにコルセットを巻きながらこの文章を書いている。身体を少し動かすたびに、腰に激痛が走る。この腰痛のわけは…。

昨日、村のオジサン連中とともに用水路の清掃を行った。
田植えの時期を前に、田んぼに水を流す用水路にたまったゴミをスコップでかきだしていく。腰をかがめ、スコップでヘドロをかき出していく作業は思いのほか重労働だ。

しかも昨日は季節外れの寒波が襲い、東京は大雪となったようだが、新潟だって寒かった。遠く弥彦の山の上には雪が積もっているようにも見える。
用水路にたまっている水は冷たかった。スコップを握る手はかじかむ。そしてなにより、すくいだしていくヘドロが重たかった。
さらに追い打ちをかけるように、僕の長靴の底には穴が開いていたようで、冷たい水が容赦なく長靴の中に入り込んでくる。
「寒い、冷たい、腰痛い」
2時間ばかりの作業が続き、ついには腕にも痛みが走る。
スコップを持つ手がやけに重たい。

オジサン連中との通り一遍の世間話をしながらも「早く終わんねえかな…」と心の中でつぶやいた。用水路の掃除が終わったら、一番にしたいこと。
そう。風呂に入りたい!

この日ばかりは許してくれ。午前10時のバスタイム。
湯船に身体を浸らせると、手の指先、足先がジ~ンとしびれた。
いつもはカラスの行水程度の水浴びしかしない僕が、1時間ぐらい浸かっていたか。湯船に身体をうずめ、「あ“~」と声を漏らす。ボーッと湯けむりを眺めながら、風呂上がりの一杯(牛乳)に心躍らせる。
昼メシは味噌ラーメンに決まりだ。インスタントの味噌ラーメン(サッポロ一番)が食べたい。冷たく冷えたコップ一杯の牛乳を飲んだら、熱い味噌ラーメン(サッポロ一番)をすするのだ。

かくして、3月最後の日曜日が終わった。
味噌ラーメン(サッポロ一番)を完食した後は泥のように眠った。夕方になって目が覚めても身体の節々が痛み、起き上がれない。そのままだらだらと布団の中で痛みに悶えていた。
悶えていたけれども、肉体労働の後の風呂が気持ちよかったこと、肉体労働の後の味噌ラーメン(サッポロ一番)がおいしかったことなどを、毛布にくるまりながら思い返していた。

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今週の写真:黄昏時(久々に一眼レフを構えてみた)

何かしらの「幸せ」を手に入れるためには、それなりの「苦労」も必要なんじゃないか?と教訓じみたことをふと思った。

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進藤海/六月雨音/ようじろう/小宮千明/モグ。4人のライターがそれぞれの担当曜日に、ジャンル問わずそれぞれの“書きたいこと”を発信。

ボイスブックコンテンツ《Writone》より集まったライターによるリレーマガジン。

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