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20210628【ふかいメルマガ第5回】渡る世間はwin-win-win

おはようございます!
前回はいただいた質問や意見にお答えしました。
そのおかげで、「マーケティング」や「製品と商品」の違いなど、
具体的なお話しができたと思っています。

それでもある人から、
「AppleのiPhoneは究極のプロダクトアウトという一面もあるし、
マーケットインがすべてという訳でもないですよね」と指摘を受けました。まったくその通りで、私たちは学者でも研究者でもなく、
ビジネス実務のプロなわけですから、現実は理屈通りにはいきませんよね。

一方で理論や原理・原則を知っておくことは、
実務上の複雑な場面での判断の助けになります。
このことは、あらためて次回のメルマガにしたいと思います。

今日の本題は、経営理念2番目、
「ITのチカラで、今までよりもちょっと便利な社会をつくる」
の「社会」について考えてみました。

こういう時に日本語で考えると面白いんです。
英語にすると「社会」は、socialですが、
日本語にすると「世間」になります。

世間と言えば、故橋田壽賀子さんの「渡る世間は鬼ばかり」が思い浮かびますが、ここ数年ビジネス界で話題の「世間」は、近江商人の「三方良し」です。

これは「売り手良し、買い手良し、世間良し」という商売の考え方を表したもので、世界がSDGsやESG経営だという中で、あらためて見直されています。最近では、これに「環境良し、未来(地球)良し」を加えて「五方良し」とも言います。

この三方良し、という考え方は、欧米にはありません。
欧米のビジネスは、ネゴシエーション(交渉)がベースにあって、
これは、「いかに自分にとって良い条件を相手から勝ち取るか」です。
だから、あえてwin-winと言いなおして、相手にとってのメリットも大事にしましょう、と言い出したのです。
(※https://ja.wikipedia.org/wiki/Win-Win)

したがって三方良しと同義のWin-win-winは、英語にはありません(辞書に出てきません)。

余談ですが、日本の商売にも交渉は昔からあります。
「駆け引き」です。
私がマーケター駆け出しのころ、
「社会人として、嘘は絶対にダメだ。
ただ人を傷つけない良いウソが2つある。
仏さんのつくウソ、方便と
商売のウソ、駆け引きだ」
と上司に教わりました。

方便は、「あの川に近づくと、河童に襲われるよ」と、相手のためを思ってつくウソ。
駆け引きは「これ以上の値段やったら、うちはもう赤字ですわ。堪忍してくださいなー」(また大阪弁でスミマセン)。というようなウソです。
脱線しましたが、欧米のネゴシエーションとはちょっと違います。

話しを世間に戻しますが、不二製油グループ本社取締役相談役 清水洋史さんが社長時代の話しが、私はとても好きです
清水さんが、世界14か国に拠点を持ち社員5000人以上の不二製油グループ本社の社長になった時、「グループ憲法」をつくりました。
その中に「人のために働く」という言葉あります。
不二製油という会社は、油脂とチョコレートと大豆原料の会社で、
特にチョコレートでは世界第3位のスゴイ会社です。
しかしいわゆるBtoB企業なので、チョコレートのパッケージで会社名を見ることはまずありません。
だからこそ、清水さんは社員の皆さんに、
この仕事は特定の得意先企業のためではなく「人のために働く」ことなんだと、グループ憲法に記したと言っていたました。
おもしろいのは、ここからです。

グローバル企業ですから、役員に外国人がいます。
清水さんは、「人のために働く」を
「Work for people」と訳しました。
すると、外国人役員は、
「それでは英語として通じないよ。
正確には work for other peopleだよ」と言ったそうです。
清水さんは腹を立てて怒りました。
「違う!other peopleじゃない!
この、人ために働く、の人には、
自分や自分の家族も含めているんだ!」

ということで、
不二製油グループ憲法の英語HPには、
英語では通じないと言われていた
Work for peopleと記されています(なんか痛快な気分です)。
清水さんはこの話しをされる時、
三方良しや世間の意味を引き合いに出されます。
良い話だなぁと、いつも思います。

関連してもう一つ、私が好きな話があります。
私が事務局長をしている一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会(APSP)の会長で学習院女子大学名誉教授の江口泰広先生の話しです。

アメリカで論文の表彰を受け、スピーチをした時のことです。
日本人が良く使う「みなさんのおかげ様です」ということを伝えたくて「Thanks to you」とスピーチしたら、仲間の先生たちが口々に
「ぼくたちは何もしてないよ!」「ミスターエグチがやったことじゃないか!」と言ったそうです。

日本語のおかげ様です、という言葉は、
「皆さんがいてくれたことでチカラになりました、というお礼の意味」で、具体的なことを指しているわけではありません。
日本語に込められた日本人の思いって、深いと思いませんか?

「もったいない」や「おもてなし」という日本語が世界語として話題になりましたが、「三方良し」「世間」「おかげ様」も、同じように世界に通用する、逆に言えば日本語以外には無い、日本ならでは言葉がたくさんあるということです。

SDGsやESGが、国連や特に欧米の考え方から来たもので、日本は遅れているという文脈で語られやすいですが、そんなことはありません。
日本人の倫理観、考え方は、世界が考えている以上だと、自信を持っていいと思います。

そういう意味で、「ちょっと便利な社会をつくる」ことで
「社員と家族に幸せをもたらす」というのは、
会社の売上や利益が上がり、私たちの収入が増えて幸せになるという意味以上の三方良しによって得られる幸せがあると私は思っています。

売り手良し、買い手良し、世間良し、の世間は、社会であり、私たちや家族の生活の場でもあります。
お金は重要ですが、それだけでは得られない幸せの追求、ですね。

今回はちょっと抽象的ですが、
給料や年収がどうでも良いと言っているのではありませんので、ヨロシクオネガイシマスm(__)m

実はこのメルマガをはじめた時から書きたいテーマでした。

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