たまり「ラブレター」

人が死ぬ、ということ、骨になる、ということ。


あなたは燃えて、骨になる。私が見ているあなたは永遠ではなかった。ずっと、一生、が仮初の祈りだったこと、あなたは知っていたんだね。穏やかな顔も柔らかな肌も、ただの燃料で、熱い炎の中で溶けてしまう。まっしろで、無機質で、美しくもろい雪のような骨。それはお気に入りのぬいぐるみに似ていた。あいしているのに、隣にいるのに、何も届かない。私だけがあいに、あたたかさに、なでられている、わたしで満ちた空間だった。あなたとして残った骨は手で崩れてしまって、お砂糖みたいにぼろぼろだったね。足りているのか足りていないのか。本当にこの危ういほど脆い骨だけが、あなたを、支えていたのか。

壇上は死者のパレードだった。飾られたお供物、切られたお花、写真のあなた、どれももう終わりに向かっているもの。現実世界から区切られた、わたしが決して入れない空間の中で、新たな名前を貰ったあなたを眺めている。死んでまたどこかで生きている、そんな夢にわたしが生かされていること、愚かだねって笑ってほしい。あなたのからだも、切られてもなお咲き続ける花のようであってほしかった。あなたが、自然と骨になるまで、隣にいたかった。どろどろの海に飲まれる覚悟はあったよ。

死んだら星になるなんて、絶対に、ぜったいに嘘だ。こんなに柔らかですぐに溶けてしまう足では、指で砕けてしまう骨では、空を渡れないでしょう。星として輝けない。地獄も回れない。閻魔様の審判なんてこんな状態では受けられない。安心して、わたしたち、にんげん、だものね。わたしのそばを旅していたらいいよ。


あなたのたましいの欠片は、いつもここにある。ごはんをつくる、コーヒーを淹れる、花にみずをやる、あなたが教えてくれたやり方で、あなたと共にいたときのペースで、わたしは生きている。生活のいたるところに、あなたが息づいている。あなたに操られている。今日もあなたが大好きだったポトフを作ってしまった。たぶん、あなたがここにいるからだよね。だきよせた骨壺のそこは、体温のようにおだやかな温かさを纏っていて、確かな願いと、あなたという概念で、なんとか生きている。



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