男らしくない男の男らしさ

バイトを始めたこともあり、今では二十歳前後の若者と接する機会が増えた。普通に馬鹿話もするし、仕事の真剣な話もするし、互いに敬意を払いつつ、くだけた人間関係を築くことができていると思っている。

僕が二十歳くらいだった頃、僕は女性から「男らしくない」「頼りない」「彼氏にはしたくない」などと揶揄されていた。いわゆる「いじられキャラ」という立場が特にそう思わせていたのだろう。おまけに色白でもやしっ子な外見だったこともある。そのようなことをよく言われ、顔ではヘラヘラしていたが、内心とても傷ついていた。自分には愛される資格が無いのではないか、悪い意味でナメられているのではないか、そういう考えに支配されていた。

一方で、大学の男の後輩からは面倒見のいい先輩と慕われることも少なくなかった。頼りになるとまでは言われなかったが、後輩が困っているときは手を差し伸べずにはいられないのだ。自分が困ったときに助けてくれたことがあった経験から、自分も誰かを助けるべきだと常々思っているのだ。特に酒の席では酔いつぶれた後輩の面倒を積極的にみたものだった。

そういう経験から、女が求める男らしさと、男が求める男らしさは異なるのではないかと思える。具体的に言えば、女が求める男らしさは女を喜ばせるものであり、男が求める男らしさは困ったときに助けてくれるようなものなのではないかと思う。

そしてアラサーの現在、バイト先で後輩ができた。僕は先輩として自分が知る限りの仕事を山本五十六に倣って「やってみせて言って聞かせてやらせてみせて」というのをやっただけなのだが、その後輩から「わとりんさん、とっても頼りになります。いつもありがとうございます。」と言われてとてもいい気分になれた。

そういうことを是非女の子に言われてみたいのだが、そんな機会が訪れることは当面なさそうだ。

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