「共感されるアイデアと課題解決は別物」という話

こんにちは。

『「好き」で自信を創り、「好き」で社会とつながる』をビジョンに、発達障がい児や不登校のお子さん向けにメンターマッチングサービスと教室運営をしているBranchの中里です。

この記事は「これから社会課題を解決したい」と思う方向けに書いた記事です。

・今、社会課題を解決するための起業やNPO立ち上げを考えている
・将来は自分の思う社会課題を解決したい

という方向けです。

最近、こんな自分にも社会課題解決系のサービスアイデアについて質問などが届きます。
今後も増えてくる可能性もあり、そういった場合にどんなことが大切か、どんなところから始めれば良いかということをまとめておきます。

最初に書くと、答えは2つです。

1.長く続けること
2.課題を解決していること


1-①、社会課題の解決は時間がかかる


社会課題の解決は一朝一夕で終わることはありません。そして、内容が内容だけに途中でやめると迷惑がかかる方がとても多い領域です。

最低でも10年はかかると見て、自分の人生の中の10年をそこに突っ込むことができるか考えて欲しいです。
今あなたが22歳であれば、最低でも32歳まではその社会課題解決に人生をささげることになります。
その間に家族ができたり、同期の知人が面白いことをしていたり、色々と迷う時期です。
それでもそのアイデアを続けられるか。

もしチームに1人もフルコミットで(他の仕事やプログラムをせずに)そのサービスを運営している人がいなければそれは黄色信号です。
チームは簡単に壊れてしまいます。


1-②、長く続けるためのビジネスモデルはあるか


ビジネスモデルは長く続けるためにはとても大事です。
寄付型でもなんでも良いので長く続けるために、どのようにキャッシュが回り続けるモデルになっているかは最初に仮説でも良いので作るべきです。

寄付型であればどんな方が寄付してくれそうか。すでにもらえているのか。
事業収支として売り上げをたてるのであれば、似たような方はどんなところにお金を使っているのか。

最初はフワッとでも、本当に簡単な仮説でもいいし、最低でも寄付型なのか事業収支でやっていくのかだけでも決めているといいと思います。

社会課題解決系の起業家の方はこの辺弱い方が多いと思います(自分もなんですがw)。
繰り返しですが長く続けることが大事なので、長く続けるためにそのガソリンであるキャッシュがどう回るかは計算する必要があります。


2-①、共感ではなく、課題解決

課題を解決しなければいけません。
「共感してくれている人が沢山いる」ではダメです。
ここが1番の肝かもしれませんが、社会課題の解決にはたくさん共感してくれる人が出てくるでしょう。
あなたがもしサラリーマンで日々辛く働いていたとしたら、その共感はあなたにとって非常に心地の良いものになるでしょう。
ただ、共感だけでは続けるために必要なキャッシュになりません。

(すごい言い方悪いですがあえて書きます)
「共感がたくさんあること」が「課題を解決するための動きを遅くする」という現象があります。
共感してくれている人がたくさんいるので、大丈夫だと思っても、課題の解決をしていないとそこに人はお金を払ってくれません。
寄付の場合も、実際に自分や自分の身近な人の課題解決になってる場合の方が寄付してくださいます。

共感があって気持ち良くなっていると、たくさんのことを試したくなります。
たくさん試そうとすると結局何もできなくなります。何も解決できなくなります。
共感の心地よさの沼から出て、どんな課題を解決するかの決断をしないといけません。

その時の決断は孤独です。


2-②、解決する課題は小さくする


課題は小さくしなければいけません。
「フォーカスする」「スコープを決める」いろいろな言われ方がされていると思いますが、課題は漠然としていてはいけなくて、小さくアクションが明確になる大きさまで小さくしなければなりません。
そしてその解決したい課題は最初は「1つ」であるべきです。たくさんできるほどリソースがないはずですし、たくさんあると自分もチームも迷いが生じて先に進めなくなるためです。

課題を小さくすると必ず
「このサービス、私は使えないのですか?」
という方が出てきます。

そうなるので、たくさんのことをしたくなります。
この人にも使って欲しいから。
世の中を良くしたくてやっているので、困ってる人を放っておきたくないのです。

でもそれでも

「すみません、今は使えないのです。すみません、すみません。」

と言うしかありません。
課題が大きいと何も身動き取れなくなるから。
そんなにたくさんのリソースが最初は無いから。

課題を小さくする決断も孤独です。
誠実で良い人ほど辛い決断になります。
下手すると、この決断で仲間も去るでしょう。

でも課題を小さくして、アクションを明確にして、前に進まないと行けません。

例えばBranch/Branch roomは東京近郊の方しか使えません。
Branchにはビデオチャットのサービスもあるので地方の方も使えますが、現在はBranch roomに一度は来て頂く必要があると明記しています。
一度もスタッフが顔を見ずその子の課題が何か分からずにビデオチャットをしても、現在は全く継続利用されないからです。
自分たちがまだそこに関しては具体的な課題と解決策が見えていないため、サービスインした後にあえてサービスを使えない判断をしました。
弊社はたまにテレビやネットで全国区的に話題になることがあるので必ず地方の方からも問い合わせがきます。
でも「すみません、今は東京にある教室に来て頂く必要があります。」と伝えるしかないのです。まだ、東京に来てくださってる方の課題解決も完璧ではなく、リソースも潤沢ではないので、すべてに手を出せないからです。
いつも地方在住の方には「すみません」と思いながら事業を運営しています(それでも静岡、広島、岡山など遠くから東京までわざわざ来て頂く方が後をたたないのですが)。

2-③、利用してくれそうな方に会う

解決する課題を明確にするために利用してくれそうな方に直接会わないといけません。

あなたが当事者であるとベストです。あなたの中に課題があるから。
当事者でないのなら、その課題は妄想な可能性があります。

ただ、当事者であろうとなかろうとそのサービスを必要としてくれそうな方に最低でも100人くらいは会った方が、課題がクリアになります。

自分も最初自腹で広告費を払って、発達障がいのお子様を持つ親御さん100人に話を聞きに行きました。そこで課題を整理して行きました。
今でもその時のメモは折を見て振り返っています。

その課題のうち、すでに解決に動いている事業者の先輩方は必ずいらっしゃいます。
その方々へ敬意を払いつつサービスモデルの勉強もした方が良いです。
できるだけ、すでに解決に動いている方がいなく、さらに今後同じような悩みを持つ方が増えて行きそうな領域でサービスインするとよいです。

今、あなたがまだアイデア段階で「それ良いね!」と言ってくれて共感されている段階であれば必ずこの段階は踏むべきです。
上にも書きましたが、共感と課題解決は別物だからです。
繰り返しになりますが、あなたが良いことをしようとしてるのは間違いないので共感してくれる人はたくさんいますが、それが本当の課題解決になっているかは利用者の声を聞かないと見えてきません。



以上になります。

なんとなく厳しい感じのトーンになってしまいましたが、毎日納豆食べて、たまに運動して心身健やかにやっていればだいたいなんとかなります。
納豆食べましょう。

最後に、このあたりはヤフーCSO(チーフストラテジーオフィサー)安宅さんが書いた下記の著書が本当に素晴らしい名著なので、もし読んだことがない方がいればぜひ。



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