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「虎に翼」新潟篇「地元有力者、裏で手打ち」を見た後に、「ETV特集 膨張と忘却 ~理の人が見た原子力政策~」での国と電力会社、裏で事前に「うそと金とおまんま」で手打ちを見て、暗澹となった件。

たまたまね、今日の「虎に翼」と、これを続けて見ちゃったんだよね。ETV特集、今年の3月にオンエアされていたのの再放送。

今週の「虎に翼」は、新潟三条の地元の有力者大地主同士が土地の境界でもめての、その調停に苦慮していた寅子。現地検分では書記官高瀬が地元有力者とトラブルを起こし、さらに困ったことに。

しかし今日。いきなり両者が和解。取り持ったのは地元の弁護士・杉田(高橋克実)

で、寅ちゃんと書記官高瀬の会話

書記官「事前に話合いをすませてきたってことですね。あの人たちのやりそうなことだ。」
寅子「ええ、あんなに言い争っていたのにね」
書記官「おたがいにうまみのある取引がされたんですかね。なら調停なんかしなければいいのに」
そこに現れた高橋克実演じる
杉田「つまりまるくおさまって、いかったってことだね。ここ三条の大地主が和解したんだっけ。それを喜びましょう、ねえ。」

これ、この当時の新潟の、地方の後進性というか法治より人治なことを批判している、という描き方ではあるのだけれどね。でもね、なんだな。

このドラマを見た後、録画してあったETV特集を見たわけだ。

「ETV特集 膨張と忘却 ~理の人が見た原子力政策~」
長年、国の原子力政策に関わった研究者・吉岡斉氏が残した数万点の未公開資料「吉岡文書」が見つかった。科学技術史が専門の吉岡氏は1990年代から国の審議会の委員などを務めた。「熟議」や「利害を超えて議論を尽くすこと」を求め続けた吉岡氏はそこで何を見たのか。「吉岡文書」に加えて今回独自に入手した内部文書や関係者の証言などをもとに国の政策決定の舞台裏に迫る。」

 日本の原子力政策、核燃サイクル、もんじゅも再処理工場も全然稼働せず巨額の税金ばかり食いという中、今回の主人公である故人・吉岡斉九大元副学長にもなった吉岡先生は、1995年、43歳でもんじゅの是非を問う懇談会の委員として選ばれたときから、「政策決定過程の合理化、透明化、民主化」を目指す立場から「日本の原子力政策、特に核燃料サイクル政策の経済合理性のなさ」を指摘し続けてきた。その吉岡氏の残した膨大な資料、各種懇談会や審議会や国の原子力政策を決める「長期計画会議」周辺の膨大な会議資料やメモなどが今回公開されたのだな。

 まず1995年段階で、もんじゅの見直しを求めたものの、意見は無視されて、このままもんじゅは継続。(もんじゅの廃止が決まったのは福島原発事故を経ての2016年のこと。この1995年の時にやめていれば、数兆円の国費が無駄にならなかったんだけどな。

 時は進んで、もんじゅは停止しっぱなしの中、核燃サイクルのもうひとつの柱、六ケ所村再処理施設も全然稼働しない。こっちを検討する2004年~2005年の日本の原子力政策を決める長期計画会議。。

 もんじゅも、六ケ所村の再処理工場も中止するとなると、日本全国の原発から出る廃棄物は直接処分をしないといけなくなる。その最終処分の場所と方法が決まるまで、各廃棄物は各原発の燃料プールで保管となる。

 吉岡さんは直接処理を支持、しかし国の原子力政策の長期的計画を定める公式会議、長計会議は核燃サイクル継続を結局は決定する。

 その長期計画会議の一年前から、国と東電が繰り返し秘密会合や勉強会と称する会議を行い、国と電力会議は「長計会議では代替案の検討はするが、核燃料サイクルの維持をする」ことを二か月前には決め、さらにその後、自民党との会合では、そのコストを自分たちに都合の良いように試算することで口裏を合わせていた。

 こういう裏工作を主宰していたのは、長計会議の座長、近藤氏。近藤氏に、こうした裏工作、秘密会合の資料を突き付けて「結論ありきだったんではないか」とインタビューすると、近藤氏、とつぜんしどろもどろ、口も回らなくなり

「これは、ですね。しかし、あのーーー、大事なのはこういうコストひょ、ひょろ、ひょろ、ひょうかをですね」「ある程度、整理しなかったらね、会議なんて」ハンカチで口と鼻をなんどもこする「「会議なんてできませんからね」「あのーーー、事前の、おーー、そのーーー、事前の整理整頓っていうのはどんな会議をやるんでもーーー、必要なんでね、それやらんないと、会議が長くなるだけなんで」「プロセスは、それは結果として議論の俎上の乗ることが大事だと思っていたんですよ、当時は」「原子力会議の議論をするのはね、そのーあのー」

ハンカチを何度も握りしめる手元が映る。

 ここは必見。都合の悪い、自分でもまずかった事実を指摘されると、人間ってこうなるのね、というのが生々しく記録されてしまう。

 つまり、「いちおう対案も議論した」という手続きをしただけで、結論は事前に決めていたということである。

 当時、長計会議の委員だったいろんな人たちにこの資料を見せると、「茶番劇に付き合わされていたのか」と、怒りの発言をしている。

 自分のことを「原子力推進側」という山地憲治委員も、「まあ当時の政治的環境のもとでは、技術経済的には合理的であっても、政治的には実現できないオプションだった。条件が変われば正しい行動も変わるそういう変化をしていかなければいけない。原子力はそういう変化に弱い。地元との政治的関係があって、いったん決めたことを変えられない。なかなか合理的な行動ができない、」と、その構造的に合理的決定ができないことを批判的に指摘している。

 政策の見直しを訴え内部告発した官僚たちは、自民党の政治家にこう言われたという。

「君らが言っていることは全部正しい。でもねえ、これは神話なんだって。ウソは承知で、できる、できるって言ってればいいんだ。」「薄く広く電力料金に乗っければ19兆円なんてすぐ生み出せる」「結局、国民よりね自分たちの飯のタネとか立場を優先しているんですよ」「金と、うそと、おまんまがぐちゃぐちゃになって固まっているんです」

 「虎に翼」で描かれる新潟の地元有力者の裏の事前の話し合いでなあなあで決まっていくという日本社会の仕組み、嘘と金とおまんまがぐちゃぐちゃに固まって、何かが決まっていくという仕組みは、原子力という国民の命や運命を決める大事な政策の決定過程でも、そのまんまの体質しくみのまんま、いままで続いてきているのである。昔の新潟の話ではない。ということを、なんでだかこのふたつの番組、続けてみてしまったので、暗澹たる気分になったわけでした。

 まあ、このETV特集、NHKオンデマンドでもプラスでもきっと見られると思うので、見てみてね。


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