月末恒例、古新聞一気読み。今日は、ちょうど半年前、今年の3月の日経新聞、ひと月分をまとめて読んだ。戦争以外にも「メタバース」「EV」「コロナ」なども、今から振り返ると興味深い。

 月末恒例、古新聞一気読み。今日は、ちょうど半年前、今年の3月の日経新聞、ひと月分をまとめて読んで(からトイレットペーパー交換に出した。)

 2月24日にウクライナの戦争が始まって1週間。

 なのだが、当時は戦争の記事しか目に行かなかったが、半年たってまとめて読むと、「戦争の前に日経新聞が立てていたテーマ、編集方針」というものに沿った戦争以外の記事の流れも、まとめて読むと見えてくるので、そのあたりのおよその知見を冒頭に書いておく。

①メタバース。
3/2「メタバースが描く近未来」というフィナンシャルタイムスのコラム、(ジェマイマ・ケリー)

3/7に、「メタバースの未来は開いた」

 三菱総研 中村裕彦氏、弁護士 増田雅史氏、そして早すぎたメタバース「セカンドライフ」創業者 フィリップ・ローズデール氏のインタビューを掲載。

そして
3/17に、「日経メタバースシンポジウム」
というのが開催されている。その告知広告がバーンと載っている。

 これに向けてメタバース関係の記事をちょこちょこ書いたうえで、月末にメタバース企画連載をする、という流れになっていたのである。

3/18「ゼレンスキー氏が投降呼びかけ??メタが偽造動画削除」という戦争とメタの合わせ技記事もある。

 この前のNHK「欲望の資本主義2022夏 特別編 「メタバースの衝撃 デジタル経済のパラドックス」初回放送日: 2022年8月21日が、トホホだったのを見た直後なので、あれとの関係でいろいろ考えてしまう。

 シンポジウムの出演者にはあの番組でいちばんとんがっていた(メタバースの全領域で圧倒的トップを目指す、と語っていた)abmber CEOの西村拓也氏もいる。(セカンドライフのローズデール氏はシンポジウムには出演していないが、NHK番組には出演していた。)

「シンポジウムはやってみたが、今のところトホホな状況なんだな」ということが分かって、月末の連載は「メタバース狂騒曲」というタイトルになっている。みんな乗り遅れまいと大騒ぎしているが、今のところ本当の可能性は誰にも分からない、というNHK番組を見た印象と重なる。

②EV関連
「中国企業がEVをリードしている」「それに日本企業がどう連携しながら対抗するか」という流れの記事が多数並ぶ。月初めに旧カルソニックのマれりが1兆円の負債を抱えて私的整理へ、という記事
3/2 マレリ債権 いばらの道 
の中で、自動車部品業界の世界的再編状況を詳しく報じているが、これもEVに向けた集中報道の一環のようである。
直後
3/5  EV、「ソフト×量産」で勝負ソニー・ホンダ提携
3/13 鴻海EV連合に国内100社 当初の5倍トヨタ系部品も参加
3/18EV EV販売 中国勢ずらり 昨年トップ20 12社入り国策が後押し 
と「日経ランキング」紙面で大きく伝える。
3/27 EV値上げの波 電池部材高で ニッケル ロシアの侵攻後2
3/31、GM「格安」でテスラ追う 中国合弁好調 米は独自電池カギ

③人件費は経費ではなく、「人的資本への投資」だ、

という主張に基づく記事や論説を集中的に掲載している。
3/21 「人への投資で社会課題解決」翁百合日本総研理事長
経済教室ページで

④3/17に東北で震度6強の地震が起きて、死者も出て、東北新幹線が長いこと止まったままになった。震災の3月11日と近かったこともあり、現地の方にはショックが大きかったが、火力発電所に被害が出たために、東電の電力需給ひっ迫注意報が出た。この夏前の6月末にも再度、注意報が出たが、これはこのときの地震の影響である。

⑤戦争の話に行く前に、スポーツや文化のニュースで言えば、この月の前半はパラリンピックで、村岡桃佳選手が金メダル3個の快挙、月の後半はサッカーワールドカップ最終予選はオーストラリアに勝って出場権獲得のビッグニュースがあった。
 映画「ドライブ・マイ・カー」のアカデミー賞受賞もこの月のことである。

⑥円安が、月は初めの115円から月末には125円まで進んだ。今は135~6円くらいだがら、半年でさらに10円円安になったわけだ。

⑦昨日、月ロケットのアルテミス計画、不調で打ち上げが延期になったが、こんな記事が半年前に大きな特集記事が出ている
3/4「月面が産む1兆円市場 日本の新興加茂っ輸送サービス
30年代後半 水資源開発も」

さて、ウクライナの戦争であるが。


 今(8月末の国際ニュースで、①南部ヘルソンをウクライナが奪回する作戦が進行中 ②ザポリージャ原発にIAEAが視察に入る というのがたくさん流れているが、半年前の3月は、キエフの手間でロシア軍が進軍が止まり、南部と東部に戦略を転換して、ちょうどヘルソンを攻めているところである。
3/3「南部ヘルソン制圧か ロシア軍、主要都市で初」
3/4  夕刊1面トップ「ロシア軍が原発を砲撃 ウクライナ南部 欧州最大級」
3/5「欧州最大の原発制圧」ロシア軍 核リスク顕在化

また、最近ますます深刻化しているガスの確保も、このときから欧州でも日本でも大問題として報じられている。
3/4日本企業、LNG確保模索 輸入量8%がロシア産
3/7「独、脱ロシアへLNG基地 原発全廃先送り論も」


さて、当時の状況を記事を見ていてわかるのは、ブチゃの虐殺が明らかになるのは4月に入ってからで(実はもう起きていたのだが)、3月末というのは、いちばん停戦に向けた可能性が高まった時期なのだった。
3/10ゼレンスキー氏 英議会向け演説「決して降伏しない」

という姿勢だったのが、
3/10ゼレンスキー氏、妥協示唆 与党NATO早期加盟断念も
3/12 EU首脳会議 ウクライナ即時加盟拒否

と、NATOにもEUにもすぐには入れそうもないとなったためのと

3/18 ロシア地上部隊75%投入 米分析 余力乏しく対話模索か
3/19 ウクライナの駐ポーランド大使 停戦協議でロシア軟化

マリオポリは陥落目前で、東部南部ではロシアは支配地域を広げたが、キエフ手前で身動きが取れなくなっている。

3/22 マリオポリで降伏要求 ロシア ウクライナは拒否

ということで、このあたりで、ウクライナにもロシアにも、停戦交渉をしたい機運が明らかに盛り上がっていたのである。
3/24 ロシア 侵攻膠着
3/25 中立化・東部の主権 焦点 停戦協議
3/25 ウクライナ「中立化」焦点

この時期より前から、ロシアによる人道危機(一般人への攻撃)も問題になっていて、

3/10 ロシア 産科病院に空爆
3/19 ウクライナ人道危機 申告 南東部マリオポリ 避難の劇場標的 プーチン氏は「真の悪党」バイデン氏、非難強める

というわけで、ゼレンスキーが弱気になり、ロシア軍は戦況膠着し、当事国同士は停戦交渉に前向きになっている中、バイデンが人道危機・戦争犯罪を言い立てて、停戦反対の姿勢を露わにしながら、訪欧するわけだ。

3/23 米、欧州防衛の関与拡大 駐留米軍1割増ぬを万人 バイデン氏きょう訪欧

そしてバイデンは、ポーランドでロシアを挑発するような演説をするわけだ。

 ちょうどこのころ、ブチャの虐殺が起きているのである。

 ここから半年たって、マリオポリは完全に陥落し、ヘルソン州にはウクライナが反攻奪還作戦をし、ザポリージャ原発は、どっちのせいだか分からないが、危険な状態は続いている。

 ブチャの虐殺は明らかにロシア軍の仕業だが、侵攻初期にはかなり民間人に犠牲者が出ていたが、膠着状態の間はぎりぎり住民とロシア兵の間に共存状態があった。(住民の中の葬儀屋さんがロシア兵遺体の回収を通じてロシア兵と会話交渉をいろいろしていたことを、4月のウクライナ公共放送が伝えていた。) 後から入ってきた特殊部隊またはチェチェンからの部隊が撤退間際に大量に虐殺をしたらしいことが4月以降の各種報道からうかがい知れる。
 3/22~25くらいの停戦機運が盛り上がった時に停戦を進めていたら、ブチャの虐殺のある部分は押しとどめられたのではないかなあ、という感じが、この新聞記事の流れを見ると、思うのである。もちろん、現場のロシア兵がひどいことをしていたのは事実だから、本当に統制が取れて完全に止まったかというとそれは分からないが。

 しかし、バイデン訪欧で「戦争継続、いくらでも武器は援助する」演説で停戦機運をぶっ壊した後に、虐殺が止まらなくなったというのは、戦争の流れとして本当のことだと思うのだよな。その直前までは、ウクライナ側もロシア側も、停戦合意点を探ろうという方向にあったのは、この3月の日経新聞報道の流れからも明らかだと思うのだがな。

 最後に、新型コロナ。今現在、日本は世界で新規感染者最多になっているが、その流れは、この3月に東アジア全体で起きている。
3/14 中国、コロナ感染者最多に
3/16 コロナ死亡率 香港、世界最悪
3/17韓国 コロナ感染世界最悪 1日40万人
3/30 「アジアの優等生」つまずく

初めの2年で世界で最もうまく感染を抑えた東アジア地域で、オミクロン株になってから、感染急増したのである。今の日本の「世界最悪」も、この流れのひとつなのである。


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