予告編。BS1スペシャル「欲望の資本主義2020スピンオフ ジャック・アタリ大いに語る」について、7つのテーマに分解して、明日からなんか、書いていきます。

BS1スペシャル「欲望の資本主義2020スピンオフ ジャック・アタリ大いに語る」が23日木曜日にオンエアされた。これについて、仕事時代お世話になったOさんから「ハラさん、解説よろしく」とコメントいただいたので、真に受けて、本気で、解説します。
(仕事時代の習性が抜けておらず、元・広告主様から「よろしく」と言われると、すぐやらなきゃ。全力でやらなきゃ仕事モードスイッチがオンになってしまった。)

で、オンエアではさらっと見たものを、録画してあったのを再度見たところ、非常に内容の濃い番組だったので、テーマをいくつかに分けて、何本か、連作していく予定です。

その前に。

この番組の前に、やはりジャックアタリ氏が出演したETV特集「緊急対談 パンデミックが変える世界~海外の知性が語る展望~」の内容の一部、ハラリ氏とアタリ氏の一部を文字おこししただけのnoteをアップしたところ(NHKオンデマンドにも直後、見つからなかったので、友人に読んでもらおうと思っただけだったのが)、どこで間違ったか、ツイッター上に広まって、5万を超えるアクセスがあって、今週一番アクセスが多かったnoteのバッチをもらった。

普段、自分で一生懸命書いた文章、noteでは、時事ネタでアクセスが多くても500アクセスくらい、テレビやスポーツ関連で、だれか有名人、さとなおくんなんかが言及してくれたりしても2000を超えたのが数本。世界の純文学小説の感想文noteに至っては、各回50アクセスくらい。僕にとっていちばん大切な文学の感想が50アクセスで、コロナ関連テレビ番組、文字起こし(しかもほぼ字幕を写しただけ)のものが50000ていうのは、かなり複雑な気持ちなのだが。

それだけではなくて、ツイッター上の感想コメントなんかを読んでも、ほぼアタリ氏の「利他主義」と「ポジティズム」についての共感がほとんど。「利他主義って、情けは人のためならずだよね」という部分への共感ものがほとんど。うちの奥さんがいちばん反応したのもそこ、「道傳さん、そこで、日本には『情けは人の為ならず』っていうことわざがあるのです、て、教えてあげなきゃ」ってテレビの前で叫んでいた。

 この反応を見て、畏友、電通同期の名コピーライター(にして大学教授)、山本高史君が著作で常々言っていることを思い出した。(といって、引用しようと著書を探したのだが見つからないので、うろ覚えで書くよ。ああ、高史君、言葉おじさんだし、書いたものへのこだわりは日本一だから「正確にはそうではない、ハラ、いい加減なことを書くのはいかん」と、あとで絶対怒られるよなあ。ごめん。だいたいこんなこと。)

 書き手が言いたいこと、伝えたいことではなく、受け手が言ってほしいことを書かないと、伝わらない。聞いてもらえない。

 アタリ氏の「利他主義」っていうのは、今、コロナで巣ごもり状態になっている多くの人にとって、「言ってほしいこと」「聞きたいこと」だったんだよな。「オプティミズム(傍観者的楽観主義)じゃなくて、ポジティズム(能動的な主体としてのポジティブな姿勢)」っていうのもそう。今、聞きたいことを、偉い人の言葉の中に見つけたかったんだな。

そうでなかったら、50000人もの方が、わざわざテレビ文字起こしの長い文章を読まないし、独裁の危険を警告したハラリ氏への反応は少なくて、アタリ氏の「利他主義」ばかり、たくさん反応があったのは、(僕も、タイトルでアタリ氏がすごかったって、書いちゃったせいもあるけれど)、僕のタイトルのせいよりも、何を、今、聞きたいかっていうことだったんだろうな。

ハラリ氏の言っていることは、多くの人にとってはそんなに聞きたくないことで、アタリ氏の言っていることは、すごーく、聞きたいことだったんだよな。

でね。今回の番組。実は、コロナが起きる前の、昨年11月に収録されたもの。消費増税の直後くらい。世界がこんなことになるとは思わない状態でのインタビュー。なので、コロナ状況とは無関係に、日本社会、世界、未来について、すごく広い視野で語っている。

そして、アタリさんが、この前の「緊急対談 パンデミックが変える世界」の方では、わりと「いいこと、理想的でポジティブなことを語る素敵なおじいさん」キャラとして扱われていて、その方向の発言が主だったんんだけれど、今度の番組では、本来の、幅広い事象について、多くのデータや知見に基づき、冷徹に未来を予測し、それに対する提言をするという「本性」を見せている。もちろん「利他主義」を語ったパートもあるのだけれど、今回は、僕はそれについては論評しません。「いい人」ではなく、「語り口は優しくても、本当は冷徹な知識人」としてのアタリ氏の本性の方に光を当てていきたいと思います。

きっと、多くの人にとっては、今、そんなに、聞きたいことでは無いと思う。でも、考える必要のあることだと思う。

山本高史君が一流コピーライターになって、僕がコピーライターになれずに戦略プランナーになっていったのは、「言いたいことじゃなくて、受け手が聞きたいことを言うんだ、書くんだ」とは、思いきれなかったからだと思う。僕は本質的に広告に向いていなかったのだ。

明日から、こういうテーマで、「文字起こしした発言」と「それをどういう角度から理解するか」「今の日本の、アタリ氏が直には語らなかった生々しい時事問題と、アタリ氏の語ったことは、どういう関係にあるか」を紐解いていきます。

テーマ  カッコ内はアタリ氏は言及していないが、僕が結びつけて書こうとしていること。
⑴少子化・家族政策・消費増税・社会的流動性の低い日本社会の問題点について。(少子化問題を、子供6人子だくさんの私が、子供を持たない友人に、語る難しさについて。)
⑵財政政策とケインズ。グローバル政府と中央銀行(アタリさんはMMTと一言も言わないし、賛成でないことはわかるが、ケインズと中央銀行を語ってくれれば、それで十分。)
⑶純粋の危険 宗教とエコロジストの危険な結びつき。(アベアキエは、なぜ危険なのか。「安倍昭恵夫人に「スピリチュアリズム」と「愛国」が同居する理由(雨宮処凛×中島岳志)」との関連)
⑷「自分のしていることは将来世代のためになるか」未来志向の資本主義と民主主義について。(少子化問題パートⅡ。誰を通じて将来を切実に想像するか)
⑸グローバル企業とグローバル政府、グローバル法規の可能性。(TPPから種子法まで、アメリカの法規の世界法規化、治外法権化の危険について)
⑹「我々は独りだ。敵から日本を守るためには誰も駆けつけけない」という確実な未来をどう引き受けるか。(確実に起きることを前提に、未来に備えるならば、国防と軍事研究の不可避的選択について。)
⑺「不死」への憧れ、テクノロジーと人間。(死についても不死についても人間の意識についても、考えない日本人について)

明日から、ぼちぼち書いていく予定。

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