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参院選で既存野党がまるでダメな理由をシン・ウルトラマンを足掛かりに考えた。ふざけていません。

 安倍元首相の死から、参院選挙にかけて、考えたことを、もうすこし俯瞰的にかんがえてみる。

 いや、シン・ウルトラマンから連続しているのだがな。

 何、ふざけているのか?いいえ、ふざけていません。

 日本の政治のもっとも根源的問題は、日本がアメリカに従属している属国であるということで、それが日本国民の生存の、動かしがたい前提条件になっているということなのだ。

 だから、もっとも重要な政治課題というのは、この対米従属をどうするか、ということに他ならない。それしかない。

 そして、日本を取り巻く地政学的状況と、中国の超大国化に伴い、「米国従属と対中対立先鋭化」というのと、実はもうひとつ「米中両属」という選択肢があるということなのだな。米中両属というのは、「そのほうが、より自立度が高まる」という戦略なわけだ。

 そして、歴史的に「米中両属」というそぶりを見せた政権は、米国に睨まれて、スキャンダルで失脚する、という憂き目にあうのである。田中角栄と鳩山由紀夫がそのもっとも露骨な形だった。

 昨夜紹介した、フリージャーナリスト田中宇氏の安倍氏事件についての論考では、安倍氏は、米国従属政治家として語られることが多いが、ロシアや中国とも対話の回路を保持し続けた「両属的スタンス」を持っており、ウクライナ戦争と対ロ制裁が逆に西側諸国を追い詰めるという結果になったときには、プーチンとの関係修復をする可能性も保持しうる稀有な政治家だった。そのことが米国(ネオコン)から見て邪魔だった、という推理をしていたわけだ。

 参院選挙の話に戻るが、ウクライナ戦争で、立憲民主や共産党までもが、結局「対米従属」を前提としてしか日本の存立を語れないことが明らかになったことで、特に立憲民主なんかは存在意義が全くわからない政党になった。もう衰退はもう押しとどめようがない。このままでは消えてなくなるのではないか。日本の政治課題のいちばん根本のところで自民党と同じスタンスなわけだから。

 シン・ウルトラマンがどう関係するかと言うと、以前紹介したと思うのだが、ウルトラマンシリーズの毎回、最終回の構造と言うのは「ウルトラマンたちに頼り切ってしまう人類」「人間は人間のことを守ることができないというあきらめ、ウルトラマンに頼り切ってしまう人間の弱さ」というものと直面し、それを克服する、というストーリーが繰り返されるのだよね。シン・ウルトラマンの中の不思議な設定、「なぜか禍威獣は日本にしか現れない」のは、当然なのだよね。自分で自分のことが守れないとあきらめ、ウルトラマンに頼り切る人間、というのは、アメリカに頼るしかないとあきらめ、自分で自分を守ることを諦めきっている日本人の姿なわけだから。

 メフィラス星人に、人間を最終兵器化できる技術を供与してもらうことで防衛力を手にしようとするのも、ウルトラマンに頼り切らないためには、他の核保有国と手を握るか、という日本人の選択肢、結局、どこか超大国の属国、どっちになるかという選択肢しかないことを示しているのだよな。

 シン・ウルトラマンの最後、人間の力でゼットンを倒す兵器を開発するとき、世界中の科学者に協力を呼び掛ける。つまり日本人がウルトラマン依存も、メフィラスに依存先を切り替えるのでもなく、自分で自分を守ろうとするならば、鎖国孤立化するのではなく、世界中の人と手を結ぶ道しかない、ということを、あの結末は表しているとも読めるよね。

 安倍元首相という人に対しリベラルな友人たちは全人格を否定するような批判をするけれど、僕がそのスタンスに反対なのは、安倍首相にはものすごく極右なところと、プーチンやトランプと、なんだかわからないが、ちゃんと会話して、人間として「尊敬はされていなくても、とりあえず人格として認められてつきあい続ける」ということが両立できた人だからなんだよな。「すごく優秀だ」なんて思われていなくても、「一緒にいて嫌なやつでない、だけでなく、なんとなく頑固でぶれないところがあるやつなんだよな。」という感じは、プーチンもトランプも、安倍さんに対して抱いていたのではないかと思う。そういうふうに超大国首脳に認識されているということ自体が、日本のトップとしては、何人かに一人、たまにしか出てこないことだと思うのである。

 日本が、「どちらかといわれればアメリカ同盟国」側に居続けることしか道がないのは明らかだ。しかし、そうでありながら、ロシアとも中国とも、話をする回路を維持し続ける。テーマによっては、ロシアとも中国とも協力関係を構築しようと思えばできる。その余地を、アメリカに対しても保持し続ける。

 日本のトップに求められるのはその度量、スタンスだと思うのだよな。インドのモディ首相、トルコのエルドアン大統領、フランスのマクロン大統領、こういう人たちは、その「対米関係で、アメリカに従わない自由裁量領域を確保する」ということができる指導者なのだよな。安倍さんというのは、リベラルの人は認めようとしないけれど、そういう「対米・自由裁量領域」を作ろうという明確な意志があった人で、ある程度、それを成し遂げた。成し遂げるために、より積極的に従属した側面ももちろんある。(安保法制なんかはそっちの例。)

 岸田首相には、そんな能力も度量も、いまのところ、無い。将来は分からないが。対米自由領域全面放棄政権である。

 この、日本の存立の根源に関わる問題について、どういうビジョンを持ち、政権を取ったら、それを世界中のいろいろな国のどういう首脳とどういう関係を作りながら構築するのか。それが自民党政権のやっていることとどう違うのか。絵空事ではなく、それができるだけの人間力があるか。そういうことが野党のリーダーには求められているのである。本当に首相になってそれを貫ける人と言うのは自民党の政治家でも少ない。しかし、その可能性を国民に対して感じさせることができなければ、既存野党に未来はない。

 ウルトラマンに頼らないのであれば、世界中の人たちと協力できる、協力してもらえる力量と魅力がなければ、無理なのである。

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