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井上尚弥×フルトン戦の翌日、将棋の王位戦第3戦、藤井聡太王位と佐々木大地七段の勝負を見て思ったこと。2023年7月26日。

 佐々木大地七段も、棋聖戦、王位戦、2つのタイトルの挑戦者になるくらいだからすごく強いし今、絶好調だったはずなのである。

 しかし、棋聖戦五番勝負は、一勝は上げたが一勝三敗で敗退。王位戦七番勝負は今日負けて三連敗。カド番に追い込まれた。

藤井聡太7冠と複数タイトル戦を連続して戦って、どんどん追い詰められていく、戦えば戦うほど勝てなくなっていくというのを、豊島九段、渡辺九段で見てきたが、佐々木大地七段もそういう精神状態に追い込まれているように見える。

 AI情勢判断数値を見ながら観戦しているファンからするとこういうかんじなのである。佐々木大地七段と藤井聡太七冠の将棋は中盤までは互角、終盤藤井七冠に傾いても一度は五分五分に数値が戻る。数値を見ているファンには佐々木七段に「チャンス」が訪れたように見えるのだ。
 しかし、終盤の藤井聡太七冠の強さを骨身に滲みるまで、本戦と観想戦を短期間に繰り返して叩き込まれている佐々木七段は、自分に細い道筋ではあってもチャンスが回ってきたかも、ということに気づけないのか、気づいても正しい細い手順を見いだせないのか、結局藤井聡太七冠の勝利に落ち着いてしまう。

ここのところ、そういう将棋がつづいている。

話は変わる。

 井上尚弥選手と対戦してきたボクサーのことを考える。

 昨日対戦したフルトンは明らかに非常に優れたボクサーだった。ボクサーとしてだけでなく、人間として、立派だと思う。負けた後のインタビューやツイートを見聞きしても、敗北を受け入れつつ、落ち込むまいと自分をコントロールしようとしている発言には胸を打たれる。

フルトンのツイート
「I be back lol real upset but I’m not going to let that bring me down. Head high chin up, family time then back to work」
「帰ってきたよ。本当に動揺しているけれどそのことでどんどん落ち込まないようにするさ。頭を高く掲げ、アゴを上げて(上を向いて)、家族との時間を過ごしたら仕事に戻るよ。」

 バンタム級で戦った好敵手たち、ドネアは偉大な、歴史に残るボクサーだ。エマニュエル・ロドリゲスは井上尚弥がいなければ偉大なボクサー、無敵のチャンピオンになり得た技術とメンタルの持ち主だ。

 井上尚弥と同時代に同階級にいたのが不運なだけだ。井上尚弥にノックアウトされたからといって恥じることも落ち込むこともないと思う。けれど、ボクシングでKO負けするというのは、これはどうしたってそれまで築き上げたものをいっぺんにガラガラと崩されるような経験だろう。

 井上が階級を上げた後、再びバンタム級で彼らはベルトを争っているのだが、そうやって戦う前に、まず井上尚弥に叩き潰された、へし折られた心を立て直すことからスタートするのだ。フルトンも、井上がさらに階級をフェザー級に上げて抜けていけば、またスーパーバンタムのベルトを巻くことになると思う。

 井上尚弥選手が恐ろしく強かったのは確かだけれど、統一チャンピオンの立場なのに日本に来てくれて試合をしてくれて、井上尚弥の怪我での延期も受け入れて、そして堂々と戦ったフルトンのことを弱かったとか言う人がいるのが嫌なんだよな。KOパンチがあるタイプではないけれど賢く強いチャンピオンだったのだフルトンは。(内容の分析noteは別に書く。)だからこそ井上尚弥選手は「最強の相手に勝ったんだから最強と言っていい」と発言してるわけで。

 ボクシングビジネスの定番として、直前のフェイスオフでのにらみ合いとか、グローブやバンテージをめぐっての難癖つけあいというのはあるけれど、それはボクシングビジネスの一部だもん。

 藤井聡太七冠や井上尚弥選手という桁外れの天才というのは、同時代を同じ領域で戦う者にとってはとんでもない災厄である。どう生きるか。どうやって前を向いて、上を向いて生きていくか。

 そんなことを考えた昨日今日でありました。

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