2024年お正月、玉置浩二さんWOWOW元旦夜「2023 故郷BAND」と佐野元春さんの1/6夜NHKBS「今、何処TOUR2023」をさっき録画してあったのを視聴しての感想。音楽を聴いて泣くってどういうことだろう。
昨年末の紅白は藤井風くんも玉置浩二さんも佐野元春さんも出なかったので、まあ平静に冷静に見ていたわけである。ので、この年年末年始については、風君についてはドラマ「いちばん好きな花」の最終回・サプライズ「花」生演奏で満足であり、玉置さんと佐野さんについては、年始に最新のライブがテレビで放送されて、これまた大満足であった。
どちらも僕は泣いてしまったのだが、音楽を聴いて泣いてしまうというのは、どういうことなのかなあ。このふたつのライブを観て聴いての泣いてしまうの質が、自分の中で、自分の「涙の出かた」がなんか、違うなあということが感じられて、考えた。ということを書きます。
60年生きてくる中での、付き合いの長さ深さと言う意味では、(もちろん個人的にご本人とは付き合いはない。リスナーとしてである言うまでもなく)、佐野元春さんとのほうが深く長い。大学生のころからである。コピーバンドもやってみたりしたし、佐野元春になりたかった青春である。恥ずかしい思い出ではあるが。
玉置浩二さんの凄さに気が付いたのは、48歳で大きな頸椎の手術をして、仕事を半分休んでいた2013年のとき、テレビドラマ「東京バンドワゴン」の中で歌う玉置さんの声に衝撃を受けてからである。ここ10年のお付き合いである。そうだ、あのときテレビドラマから流れてきた玉置さんの声だけで、泣いてしまったのである。
玉置さんの声の衝撃、すごさについてはその後、すごくたくさん分析考察をした文章を書いていて、まず、嬉しくも悲しくもなくても、なんというか、生理的反応としてあの声を聞くと涙が出るように出来ているのである。これ、言葉が分からない外国の人が、玉置さんのYouTube動画を見て泣いちゃうというリアクションYouTube動画がものすごく大量にあるので、人類共通のことである。そして、歌詞の情景、歌で描かれている情景が、日本語が分からない外国の人にも、かなり正確にその感情として伝わるのである。「メロディー」の歌詞が分からないのに「昔の懐かしいことを思い出してしまう」し、「行かないで」を聞くと、人生でいちばん悲しい別れを思い出してしまうのである。なんというか、玉置さんと言う一人の個人への感情移入、ということやなんやかやではなく、楽器としての声の性質と、歌詞の情景を声で描く能力と、そこに込められた感情を声の波動として伝えるという特殊能力のせいで涙が出るのである。
もちろん、今回のライブの故郷BAND(メンバーを入れ替えつつ、全体をまとめるトオミヨウさん、パーカッションの中北裕子さんらの演奏の完璧さというのもあるし、今回は、一昨年暮れ、ほぼ一年前に亡くなった安全地帯のドラマー田中裕二さんのドラムセットが置かれていて、何曲かで玉置さんがそのドラムを叩くという、泣きやすい演出もあったわけだけれど、でも玉置さんを聞いて涙が出るのは、玉置さんの声と歌の超能力によるところが大きいと思うのである。
これと比較すると、佐野元春さんの場合は、やはり歌詞の力と言うのがすごく強く、ときどき少し離れても、それでもずっと励まされながら歩いてきたのだなあという思いが強い。この「ずっと励まされてきた」という感情を揺さぶるのが、ロックのコヨーテバンドというここ10年くらい一緒にやっているバンドの、すごくタイトなロックのビートなのだよな。佐野さんの場合、歌唱力と言う意味の声の力は、なんというか、すごく高いわけではなくて、「声質のかっこよさ」と「日本語の歌詞を歌詞として伝える力」が佐野元春だなあ、という感動はあるわけだけれど。佐野さんの音楽の場合、なんというか、ロックの鼓動・ビート自体が、なんだかもう聞いただけで泣きたくなってくるところに、佐野さんの歌詞が被さってくるのである。ビートと歌詞が一体になって心の底まで届いてくるのである。アンコールの「SOMEDAY」や「アンジェリーナ」のような、青春時代聞いた曲だから涙が出るわけではなくて、最新アルバムからの曲や、2013年の名曲「La Vita é Bella」そう、特にこの曲についてイントロがなっただけで、ビートの上にイントロでだんだん楽器が増えてかぶさっていくところだけで、もう涙腺が崩壊して、歌が、歌詞が、ああもうだめだ。本当に人生の長さと、今、この年齢にたどりついた自分とそして妻のことを思って、もう涙がまったく止まらなくなってしまうのである。
他の、最近の曲の、ライブオープニングの「さよならメランコリア」から、本編最後の「優しい闇」まで、その歌詞に、佐野元春を一緒に聴いて、歌った広告学校時代から60歳を超えた今もずっと友人の、同い年のヨゴくんや大友のことを思って、ずっとそうやって生きて、そして今も何か同じことを感じて生きているんだよなあという思いで涙が止まらなくなるのである。
年明け、玉置浩二さんと佐野元春さんの昨年最新ライブテレビ放送を見ての感想、おしまい。
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