バイデン大統領、就任式の1日、CNNを、観ながら、感じたこと、考えたこと

だらだらとCNNをつけっぱなしで、横目で見ながらときどきFacebookに投稿したのに加筆してまとめました。今日の日の、備忘録。

開式前

 大統領就任式、外でやるし雪がちらついてきたと言っているし、みんなコート着ているし、マスクはしているとはいえ、風邪ひきそうだよな。政治家って、まずはカラダが強くないとダメだよな。

 ブッシュ、オバマの元大統領夫妻はじめ、みんな開会までの間、寒そうなところで平気で長時間立ったまんま、わやわや立ち話している。元大統領たちは党をまたいで和やかに歓談している。

 オバマさんとかカマラ・ハリスさんとかは、有色人種だけれど、こういう、両党派をまたぐアメリカのエスタブリッシュメントの中に、きちんと地位を占めているのだけれど、トランプ夫妻は、アウトサイダーだったんだろうな。なんか、そういうトランプの孤独みたいなことは、CNNの、「やっとまともな姿に戻ったお祝い」感のある実況をずーっと聞いていると、いやでも感じてしまう。

開式

挨拶している人が、雪が降ることを想定していなくてごめんなさい、みたいなことを言っている。曇天で、あちらはいったい何時なのだろう。

国家斉唱

 レディ・ガガ、国家斉唱だ。なんか、かっこいいぞ。マイク金色だし、胸に金の鳩の刺繍と言うかなんか、立体的なかざりついているし、急に陽がさしてきて明るくなるし、前奏のアレンジが、今まで聞いたこと無い、おしゃれな短い前奏だし、最後のサビのところの伴奏のアレンジ、コードがおしゃれだし、スカート、ディズニーのお姫様みたいだし、なんか、全部、めっちゃかっこよかった。

ジェニファーロペスの歌

 うわ、次、ジェニファー・ロペスじゃん。(本当はカマラハリスさんがソトマイヨル判事に副大統領の宣誓をするという、女性二人での宣誓という歴史的プログラムが先にあったのだ。いかん、グラミー賞授賞式見ているような気分になっている。)
ウディ・ガスリーの「この国は君の国」。「カリフォルニアからニューヨークまで、メキシコ湾から、レッドウッドの、森まで」という歌詞を、メキシコ系のJ.LO.が、歌うし、はためく国旗を見上げてのカメラとか、すんごくエモーショナルな演出です。

大統領宣誓

 えー、ジェニファー・ロペスの歌(ウディ・ガスリーの「この国はきみの国」)で、めっちゃエモーショナルに盛り上がったところで、バイデンさんの宣誓式じゃん。これ、なんか、テレビ見ている人、盛り上がっちゃうじゃん。しかも、司会の女の人も言ってたけれど、どんどん陽の光が明るくなってきて、アメリカの明るい未来を、感じさせちゃうし、どこかの赤ちゃんの声みたいなのが、宣誓の直前に、ちょっと被るし、全部、自然な演出になっている。日本の政治の、盛り上がらない感もひどいと思うが、これだけドラマチックに演出するのも、ちょっと、なかなか怖いかも。政治式典を見ていて、こういう気分になったの、初めてだな。

就任演説

 バイデンさんの就任演説、国民の統合、団結と言い、今日来ている伝統的共和党の人たちとは「ひとつになろう」と言いつつ、トランプに代表される「白人至上、差別主義、暴力、過激主義、嘘」は徹底的に批判するという文脈なんだよな。ここまでトランプを悪役にするには、あの、「議事堂占拠事件をトランプが扇動」という事実が必要だったんだよな。トランプはここにいない、という状態じゃないといけないんだよな。この「団結」を呼びかける演説を、トランプ支持者は、どう、聞いているのだろうな。

 トランプのことは、無かったことにしたい。トランプの悪い魔法、呪いは解けたのであり、その魔法にかかっていたトランプ支持者も、魔法と呪いが解けて、正気に戻ったでしょう。共和党支持者のみなさんも、「まともな共和党」支持者に戻りましょう。そういうメッセージが、式典を通じて発信されているなあ。レディガガからジェニファーロペスの展開、ディズニー映画のハッピーエンド、悪い魔法は解けましたーー、感を作り出すのに必要だったんだな。

 ペンス(前)副大統領というのは、「魔法が解けて正気を取り戻した共和党員」を代表象徴する、という役割なのだよな。ディズニーアニメ映画でも必ずいる。映画の初めは悪役側、悪い人みたいだったのに、最後に主人公を助ける人。

就任演説感想その2

 バイデン、おじいちゃんだけれど、まっとうな演説するよな。オバマさんほどエモーショナルじゃないけれど(演説力でいうと、オバマさんて、最上級の大統領だったから、比較するのはかわいそう)、でも、内容がとてもきちんとしていて、誠実に、ちゃんと自分の言葉で語っているよね。演説終わって椅子に腰かけたバイデンさんに、奥さんが「よくできました」みたいに頭にキスしてくれたの、なんか、ほのぼのとして良かったな。こういうこと、ちょっとしたこと、大事だよね。

ガース・ブルックスの、アメージング・グレイス

 この人は国民的カントリー歌手なんだな。国民的といっても、カントリーだから、ほぼ白人しか聞かないんだと思う。白人の演歌みたいなもんだろう。
アメージング・グレイスっていうのは、黒人奴隷貿易の船主の息子で、奴隷貿易船をやっていた人が、いろいろあって、悔い改めて牧師になって、こんなひどいことをしてきた自分も神は許してくれるということの感動を、歌った歌なんだな。だから、白人の、カントリー歌手が歌うことに意味があるわけだと思う。

Benediction=祝祷

やっぱり、キリスト教国家なんだよな。多民族、多宗教の移民で成り立っていても、やはりキリスト教国家なんだよなあ、というところ。国家とは何かということを、考えさせますね。フランスのような例外を除けば、国家と言うのは、なんらか、「民族」とか「宗教」とか「王族」とかいうような、非合理的起源をひきずって、今も運営されているのだよな。

式が終わって。

CNNも、バイデンさんの演説を、心からの、品位のある、100%バイデンさんらしい演説と評している。でしたね。

しかし、カーマラ・ハリスさんは、なんというか、体格とか姿勢とか歩き方とか表情とか、そういう、非言語的な部分でも、伝わるものが多い人だよな。もちろん、言葉も強いのだけれど。今日は、宣誓以外には言葉を発さなかったけれど、印象が強かった。やっぱり、僕は、この人、近い将来、大統領になるんじゃないかと思うなあ。にこにこ笑いながらも、人間砕氷船のような「道を切り開くぞ」という意志が、全身からあふれ出ているよな。

その後も延々と続くCNNを観ながら
 

 昨日の前夜特番から、CNNのコメント、同時通訳、ずーっと垂れ流しで聴いているのだが、なんとなく聞いていた妻も、あまりに一方的なトランプ酷評とバイデン持ち上げに、なんとなく違和感を感じるという感想を漏らしていた。

 なんか、トランプは、ヒットラー、ナチス並みの大悪人、ということになっている。

 トランプがこの四年間拡大させたのは、人々の中の、醜い差別主義、憎しみ、暴力だけだったのか。愚かさと嘘だけだったのか。議事堂襲撃をけしかけたことで、トランプの四年間をそういう風に総括してよし、ということになったというのがアメリカの、いや少なくともCNNの今の雰囲気なのだ、ということは、よく伝わってくる。

 しかし、四年前、トランプが勝った時、CNNはじめマスメディアは、「自分たちは、国民の中の、ある部分の人たちの声を聴き損ねたのではないか」と反省したと思うのだけれどなあ。あのときの反省は、今のCNNの中に生かされているのかなあ。

 東海岸西海岸の大都市インテリたち、マスメデイアや調査会社やコンサルたちが、見落としたのは、ラストベルトや中西部など、内陸に暮らす、特に中年の白人男性の気持ちだったんじゃなかったっけ。別に「プアホワイト」っていうわけではなくて、中流くらいの人たちが、実は当時、いちばん生活水準と健康水準低下に直面しているというような分析が、選挙後にされたんじゃなかったかな。それなのに、誰も自分たちを代弁してくれないという不満を抱えていた。というのが、あのときの分析だったと思う。人口学者のエマニュエル・トッドが、その階層は、アルコール依存とかなんやかやで、死亡率がすごく高い、という分析もしていたと思うのだけれどな、四年前。

 カーマラ・ハリスさんに代表される「有色人種や女性」という、アメリカの歴史の中で虐げられた階層の人を応援することのリベラルな正義の裏側で、田舎や衰退都市の、中年白人男性中流層は、自分たちは100%批判されるだけ、時代遅れの遺物として、今まで特権を独占してきた分だけ申し訳ないと頭を下げて黙り込まなければいけない。トランプは、そういう人を四年前はひきつけたて勝ったのだろう。今回も接戦だったのだから、極端な差別主義者だけでなく、前回同様の人たちも支持者にはいたのではないのかなあ。

 そういう人たちは、CNNは見ない、ということなのかな。マスメディアもSNS同様、自分に耳に心地よいものしか見ない聞かない読まない、という分断状態にあるから、トランプに投票したような人たちはFOXテレビを見ているということか。そうでないと、この、CNNの極端なバイデン持ち上げ、トランプこき下ろしコメントの垂れ流しは、理解できないなあ。

夜になっての、記念ライブ番組

 ブルース・スプリングスティーンが冒頭出てきて一曲歌った後、トム・ハンクスが司会で、全国の、エッセンシャルワーカーなど、無名の英雄を紹介するのと、超大物アーティストたちの歌による記念ライブ番組。ボスが歌うと、なんか、本当に、分断を超えられそうな気がしてくるな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?