「ロシアは決定的に負けつつある。」とBBCとCNNが言い出した3月23日。それを見ていた僕の頭には「ベトナム戦争の米国のように、ロシアが決定的に負けた」といいたいのだな、という構図が浮かんできてしまった。

 BBCと今朝のZDFの論調変化を分析して、またまたね、にわか勉強の、門外漢・素人が、テレビに出ている有識者が絶対、今、言わないことを書きます。大事なことです。

まずは今朝の3/23の、BBCとZDFの注目ニュースと論調


 BBCは、「小さなウクライナの町がボスネテンスク、わずか3万5千人の町民総出で強大なロシア軍戦車軍を戦略を立てて迎え撃ち、道路封鎖で戦車を誘導し、そこを集中攻撃。後退する戦車の退路を断つよう橋を爆破、そのうえで英国製対戦車兵器で戦車を破壊。ロシア兵の負傷兵がおばあさんの民家を一時占拠したが、逃げて行ったというおばあさんのインタビューも。市長はもっと対戦車兵器が欲しい、と取材に応じる」というエピソードを大きく扱います。BBCは今日一日、このニュースを繰り返しています。「一部ウクライナが反転攻勢に出た」と伝え続けます。


この後、マリオポリから逃れることに成功した市民のニュース。
そして、普通なら双方の主張を聞くべき国連のグテイレス事務総長がロシアを一方的に避難したことを伝え、ロシアが一方的に悪いことを伝える。ロシアとウクライナの停戦交渉で双方が条件を緩めつつ、帰属問題などについては両大統領の会談が必要なことを伝えた。


 ドイツのZDFでも、「ウクライナの子供の被害と母親の涙」「ハリコフに入るロシア軍車列で、ロシア側は補給がうまくいっていると発表しているが、ウクライナ側はロシア軍の燃料が尽きようとしている」と、双方の主張を伝えたうえで「プーチン大統領がそうすぐには勝利できないことが明らかになるときが来ています」と、当初の電撃作戦と傀儡政権樹立に失敗したことを伝え、何年にもわたる長期戦を戦わないとウクライナは占領できないが、プーチン氏がそれを望んでいるとは思えない。とはいえ、すぐに停戦合意に至るとも思えない。と伝える。


 ZDFの今日の目玉は「ロシア軍の戦争犯罪を犯している」というニュース。民間人の夫婦がロシア兵に射殺されている一部始終を、ドローンで撮影した映像。ウクライナ人の夫とロシア人の妻、六歳の息子の若い夫婦。3/6にキエフ郊外が爆撃砲撃されたとき、その近くの別荘にいた。二人が車で高速道路で逃げたが、ロシアの戦車、狙撃兵に狙われる。まず妻が撃たれる、クルマから出た夫が撃たれる。この件についてロシア政府やプーチンの戦争犯罪を問えるかは今のところ不明。と伝える。


 BBC、ZDFともロシアの反体制指導者、ナワリヌイ氏が、すでに拘束されている上に、また新しい罪状で9年の刑を言い渡されたことを伝え

、プーチン政権が追い詰められたことま表れと分析するのは共通。


 ドイツZDFですら、プーチンが追い詰められつつある、という論調ですが、BBCに至っては、「ウクライナ優勢」という論調です。


さて、ここから僕の、「にわか素人」としての、ニュースの読みです。


 米英の報道の目的が「今、ロシアは、(構図と負け方の度合いとしてベトナム戦争の米国のように)、決定的にこの戦争に負けつつある。(ただし、ベトナム戦争のことは絶対想起させずに)」という、一般大衆の戦争認識を作ろうとしていることです。
 このロシアによるウクライナの戦争を「ベトナム戦争」と重なるという見方は、マスメディア,欧米のマスメディアには絶対出てきません。ベトナム戦争の敗北は、米国のトラウマです。


 しかし冷静にその経緯を見ると、ロシアとアメリカを反転させると、ベトナム戦争とウクライナ戦争は、構図も進行もかなり似ていることが分かります。


 ちなみに、なぜそういう見方が出欧米メディアでないかと言うと、

①ベトナム戦争は、親米南ベトナム軍と北ベトナム軍の内戦に、後からアメリカ軍が実戦参加した、という形を取りますが、今回の戦争はウクライナにロシア軍が侵攻した、としての侵略戦争としてイメージされるから、全く違う、というふうに、西側からは見えるわけです。しかしロシア側の視点で言えば、ドンバス地方での、ウクライナ人同士の戦争が8年間も続いていて、その、ドネツク、ルパンスク人民共和国側を支援するために8年我慢した末に参戦した、という理屈ですから、こう見ればベトナム戦争と同じ構図なのが分かります。
②米国が、後進国の人種も違うベトナム人に残虐にな空爆をするのとも白人同士がひどい殺し合いをすることが、同じ戦争の暴力と感じられない、という人種差別意識、それは欧米人も、日本人も含めててずが、そのせいで、今回の戦争とベトナム戦争を重ねるというふうに頭が働かない。
もちろん、厳密な歴史学者さんは「こう細部が違うものを重ねるのは暴論、素人論だ」と言うと思います。細部の違いを指摘するのは簡単です。

 しかし、「世界の二大勢力の対立を背景にした、内戦、クーデターの形を取った戦争に、片方には大国が戦闘に参加し、もう片方は武器供与だけを受けた自国民が抵抗するという非対称な戦争」という基本構図が重なるわけです。

 ベトナム戦争は東西冷戦と中の戦争ですが、親米政権が共産主義クーデターで倒されかけた。その親米政権を当初は支援していたのが、結局、アメリカ軍は戦争の当事者となります。トンキン事件という偽旗事件が絡んでいるのも、似ています。北ベトナム軍は中国ソ連からの軍事支援を受けつつ、自国民総出のゲリラ戦で対抗します。米軍が空爆や枯葉剤の散布という、戦争犯罪の非人道的攻撃を繰り返すね(ゲリラと民間人の区別がつかないから)中で、国際世論も米国自国世論も戦争に批判的になります。

 米国は、ベトナム戦争で泥沼の戦争を戦った後、撤退します。「世論に負けて、戦闘では完全には負けていないけれど撤退」したのか当時は思われたのですが、後に兵器を鹵獲された量などを見るに、戦闘でもぼこぼこにされていたことが戦後分かっています。

 昨年のアフガニスタンから撤退は、米軍のサイゴンからの撤退を思い出させた、と報じられました。アメリカ人にとってはベトナム戦争のトラウマを呼び覚ますものでした。それがバイデン政権の支持率急落の大きな原因となりました。民主党政権の失敗としてのベトナム戦争の悪夢が、アフガニスタンでの失敗、バイデンの撤退と二重写しになる、ということが起きたわけです。

 そこに起きた、このウクライナ紛争・戦争。これは立場が正反対です。アメリカとNATOのやっていることは、当時のソ連、中国のやっていることと同じ。武器供与での応援。現地人の総戦闘員化を応援すること。たいして、今回のロシアは、ベトナム戦争のアメリカと同じ失敗を重ねています。相手を甘く見て、うまくいかないと見ると戦争犯罪である民間人犠牲を無視した空爆、枯葉剤散布、それでも苦戦が続いて泥沼の戦争。国際世論、国内反戦運動の逆風。

 米英は、「ロシアの決定的敗北、ウクライナ国民の英雄的勝利、それを支えた米国、NATO」というストーリーの強化フェイズに入りました。

 問題は、西側国民の戦争認識がこのようなものになったときに、停戦合意がうまくいくかどうかです。早期停戦合意にプラスかマイナスかです。

 現実の戦況はまだそこまでウクライナ優位なわけではありません。ハリコフもマリオポリも破壊され尽くした街は、もうすぐロシアが完全制圧するでしょう。開戦前と較べてロシア支配地域、ドンバス両共和国実効支配領域はるかに拡大しています。クリミアのロシア支配はまったく揺らいでいません。

 ロシアの立場としては「勝っているが、長引くのもいやで、別にゼレンスキー政権を倒すつもりはないから、NATOに入らないことと、ドンバス両共和国の承認、クリミアロシア編入の承認、これたけ認めれば許してやる」という、勝ったうえでの停戦、という構えは崩せないはず。「非武装化」まで求めるかどうか不明なのと「非ナチ化」については文言上の戦いになる感じがします。

 ところが米英が「ウクライナの勝ち」という西側国民世論を盛り上げてしまっては「ウクライナは勝っているのだから不当な条件は飲む必要が無い」「妥協するな」となっては、それは停戦交渉の足を引っ張ることになります。

 双方が面子が立つようにして、早期停戦を促すことが国際世論の役割です。 

国際世論=米国英国の世論、であってはいけないし、そうではありません。

 米国、NATOは、ベトナム戦争におけるソ連、中国と同じような「代理戦争を戦わせている、実質的戦争当時者」ですから、その分を差し引いて、報道を読まないといけない、というのが、私がこの戦争の初めからずっと主張していることです。

 このにわか素人の言うことと、テレビに出ている専門家の言うことと、どちらに説得力がありますか。

「ベトナム戦争を反転させた構図」という私の見立てについて、どう思いますか。

 これは単なる「たとえ話」ではなく、アメリカ・バイデン大統領の「アフガン撤退、ベトナム敗戦を連想させ支持率最低に、中間選挙を控え大ピンチ、そこに渡りに船のロシアウクライナ侵攻、人気挽回チャンス到来とにやにやが止まらない」という中では、「ベトナム戦争に似ている」などとは、米英メディアでは絶対行ってはいけないこと、というのはご理解いただけましたか。

 そういうことが「バイデンの逆鱗」にふれることだということはご理解いただけましたか。

 ベトナム戦争は、最後、戦争を終わらせたのは、共和党ニクソン政権ですが、ケネディが始め、ジョンソンが引き継いで拡大した、民主党政権が戦争に責任がある戦争ですからね。

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