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自作短歌一覧

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noteで公開済みの自作短歌をまとめました。
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【連作短歌】エレベーターで上がったり下がったりした日

透明な種として過ごしたい街で個体識別されて冬空 高層ビルの窓に映った青空と雲と高層ビルがまぶしい シースルーエレベーターに運ばれてこのまま一人で昇天したい あすの朝ゴジラに変身していたら私がビルを踏みつぶす番 二〇〇メートル下りれば歩道を人類があるいていたので私もあるく いつの日か廃墟となって堕天使がはしゃぐ駅前バベルの塔よ ビル風に殴られながらシャッターを押すゆびさきが無言のままだ ◎初出: http://newmoon55

【短歌】二重春時間

透明な糸をつたって曲技団(サーカス)の夜から夜へとわたる白蜘蛛 風を呼ぶ桜の声は重低音バッドニュースは遅れて届く 早春の傷癒えぬまま息を継ぐタンポポの孤独デイジーの罠 淡色のかなしみ手ざわりもあわく夕光(ゆうかげ)に溶けのこるシロフォン いっせいに菜の花たちの深呼吸だいじょうぶここで生きてゆけるよ 図鑑にはない花の名を知りたくて風に尋ねるように春雷 細胞がふるふるふるえるやさしさできみの路地へと風を届ける まなうらに春の面影はてしなく梢にしがみつく桜蘂 単調な

2016年後半の短歌

宿題を残したままで夏暮れて霧の向こうにあるはずの湖(うみ) 懐かしい玩具(おもちゃ)の声に微睡んで退化してゆくぼくらに繭を 古代都市遺跡にあそぶ縞猫の尾にきざまれた裏クロニクル      *  秋三首。 運命は低いところが好きだから転がってゆくドングリの群れ しんしんと直視できない日輪を水は宿して死の際(きわ)に沿う ゆわゆわわ水面に揺れる落ち葉より自由なものがこの先にある      *  2016年10月、名古屋市内の繁華街にて、革マル派デモに遭遇。 ゲバ棒