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自作短歌一覧

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noteで公開済みの自作短歌をまとめました。
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2020年3月の記事一覧

【連作短歌】沈みゆく春に

花びらにひらりひらりとウイルスを宿しいのちを削る桜よ 恋じゃない恋じゃないけどこんなにも掻き乱される見えない君に 綻びてゆくシステムは日常の息の根をゆるやかに縛って 春の陽を感じていよう咳をしただけで独りになる車両でも 祈るように手を洗いつつ沈みゆく春のひと日をひそやかに抱く 週末は超カラフルなマスクして知らないひとと接触したい カフェオレを手に純粋な死について語り合えた日を奇跡と憶う

【連作短歌】 午前27時のLove Letter

目が合った瞬間(とき)をぼくらは忘れてる波打ち際で鳴るファンファーレ 誤字すらも可愛い君のmailから感染したい どうせ飛ぶなら ぼくたちの痛さ苦さも溶けてゆき溢れて海は永遠になる 吊り橋の上でぼくらは遥かなる波に呑まれぬように離れた 百億年のちの宇宙へ歌を産もう このまま君を滅ぼす前に 詩歌とは、媚薬。あなたのたましいの翼となって虚空に果てる 太陽系焼き尽くすほど恋してた惑星ぜんぶ道連れにして いつまでもそのままでいて双子星(ポルックス)あなたの息が光跡になる