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(怒ってる)郵便ポストの顔色がシグナルレッドに変化した朝 エンジンの音が私を責めているようで歩道をあるけなかった 昨日までなかったはずの歩道橋、建設過程を誰も見ていない 深海魚から受け継いだ遺伝子が私の意図を支配している * サイレンが近づいてくる私だけに通告された滅びのシグナル 洪水が来るとか私に言われても箱舟ひとつ造れないのに * 人類のすべてが狂いだしていま私一人の正気が凍る 鳥も私の味方じゃなくて息継ぎのために電車で揺れる一日
パペットの糸切れたあとその瞳(め)にはひかりが宿る やがて開幕 観客がわたし独りの劇場に轟きわたるオラクルの蒼 道化師がバビブベぼくの鼻先で告げる世界をはみだす呪文 真実は劇薬だからすこしだけ朝のスープにそそいであげる 錆びついたメロディーよりも熱い嘘 過激なほうを取り分けるから 托卵の歌とき放て明日にはきっとわたしがあなたを超える 硝子戸の前に立っても開かない自動ドアではない板硝子 何処へでも行けるIC乗車券かざして月の改札口へ 何周も同じ楕円をめぐりつつ