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金のペン銀のペンから星が降る何もない日をきらきらにする 逆走の水星(マーキュリー)おどけた声で古い手紙を曝きはじめる 宝石のような時間を終えてやや恥ずかしそうに宵の金星(ヴィーナス) 眼に映るすべてのものを焼き尽くす前の乾いた胸に火星(マルス)は 木星(ジュピター)がわたしの部屋を訪れる日は花束とゆびきりしよう ぼくたちが時を尽くして運ぶべき石を教えてくれる土星(サターン) 蒼白の天王星(ウラノス)が掌(て)をひるがえし世の理(ことわり)を覆す真夜 君のいた夏も
嫌われてお皿の隅に残されたピーマンだけを愛したい夏 剥きすぎたレタスの山と戦えず卵とともに駆け出した朝 鮮やかな南瓜よ馬車になるよりもプリンになれよ私のために 午前9時にんじんジュースに飛び込んで溺れた蠅を弔う鐘だ カイワレが野菜売り場から消えた日をおぼえていますか・昭和生まれよ 花だってきっと可愛いはずなのに蕾のままで眠るブロッコリー 煮るだけで翡翠(ひすい)に変身する君はもはや奇跡だグリーンピース もぎたての曲がった胡瓜はメロンよりjuicyでぼくは野性に還
繰り延べた死を思い出す前夜祭 診察券は財布に入れる いつもとは違う路線の地下鉄に乗る乗り換えるここが戦場 本日の受付番号、平安京遷都と1番違いで惜しい フルネーム何度も問われ何度でも答える喉がやや縺れつつ 皮膚を破り侵入者として血液を奪う針から目を逸らしてる やわらかなからだに傷をもつ人が固まりながら待つ白い部屋 ペパーミントグリーンの声で話す医師はわたしの不安を食いとめる役 「問題はないです」なんて異常値の腫瘍マーカー見せて主治医は 注射器が小さな戦士を送り
死神の消息を聞くたびにこの世界は色を鮮やかにする * 死神がご機嫌いかがと軽やかに尋ねてわらう初夏真昼(はつなつまひる) 他界からの風の便りになつかしい空のにおいがよみがえる午後 生まれくる前の場所へと還る旅 ひと息ごとに花が零れる 去り逝くと知ればすべてがいとおしい 傷痕さえも煌き果てる 重すぎる荷物をひとつ捨てたあとの空漠をただ抱きしめている * 脊椎がここにいるよと自己主張するように痛む長い長い夜 体芯を貫く光の道をもつ脊椎動物な
宿題を残したままで夏暮れて霧の向こうにあるはずの湖(うみ) 懐かしい玩具(おもちゃ)の声に微睡んで退化してゆくぼくらに繭を 古代都市遺跡にあそぶ縞猫の尾にきざまれた裏クロニクル * 秋三首。 運命は低いところが好きだから転がってゆくドングリの群れ しんしんと直視できない日輪を水は宿して死の際(きわ)に沿う ゆわゆわわ水面に揺れる落ち葉より自由なものがこの先にある * 2016年10月、名古屋市内の繁華街にて、革マル派デモに遭遇。 ゲバ棒
桜餅の葉にふくまれた塩分が朝(あした)わたしの涙にかわる ノラ猫に生まれかわって来世では煮干しが泳ぐ海辺で暮らそう 薄闇の底に光はしらしらとあなたの石を照らしはじめる 家じゅうを探しまわって見つからず開けた窓から来る青い鳥 冬の日のこころの淵につもる雪 月には月の道があるから 絹さやのすじを引きつつきららかな翠(みどり)の風をわたしに招く 渡り鳥のように世界を翔けめぐる未来の文字も雨に滲みるか ・・・・・・・・・・・ ブログを通じて交流のあった、桜餅の葉っぱさ
Twitterとは。 挨拶も交わさず星を贈り合うのが今日のコミュニケーション つぶやきが君のアンテナ掠ったら黙って星を光らせなさい ソーシャルな愛を安売りしたくないぼくらに星を返してほしい 液晶の窓に浮かんだ文字だけの弱い絆がぼくらのすべて * 飲み会ぼっち。 饒舌な酔いどれ人に囲まれてぬるむ刺身を噛み締めた夜 * 地球照の夜。 三日月の欠けた部分を照らしてる地球の光のぼくらは一部 * 目が覚めた後に出かけるあてもなく ぼ
詩をくれた君に常套句(クリシェ)を返すしかできないことが悔しくて今 風に薫る言葉を摘んで花束にして君に捧げる愛の歌 * 風の筆が雲の模様を描き出す空のキャンバスどこまでも青 * ネット炎上。 正しさを求め続ける蟲たちが集う電脳異端審問 オクターブ声を落として話したい 正義について語るときには * 溜め息がきこえる距離でそれぞれの宇宙に繋がる液晶の窓 * 滾る血を星の冷気で包みこみ戦いに発つ冬のオリオン 近づいては