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自作短歌一覧

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noteで公開済みの自作短歌をまとめました。
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2019年1月の記事一覧

【連作短歌】 星の時間を生きる

金のペン銀のペンから星が降る何もない日をきらきらにする 逆走の水星(マーキュリー)おどけた声で古い手紙を曝きはじめる 宝石のような時間を終えてやや恥ずかしそうに宵の金星(ヴィーナス) 眼に映るすべてのものを焼き尽くす前の乾いた胸に火星(マルス)は 木星(ジュピター)がわたしの部屋を訪れる日は花束とゆびきりしよう ぼくたちが時を尽くして運ぶべき石を教えてくれる土星(サターン) 蒼白の天王星(ウラノス)が掌(て)をひるがえし世の理(ことわり)を覆す真夜 君のいた夏も

【連作短歌】Wonderful Vegetables

嫌われてお皿の隅に残されたピーマンだけを愛したい夏 剥きすぎたレタスの山と戦えず卵とともに駆け出した朝 鮮やかな南瓜よ馬車になるよりもプリンになれよ私のために 午前9時にんじんジュースに飛び込んで溺れた蠅を弔う鐘だ カイワレが野菜売り場から消えた日をおぼえていますか・昭和生まれよ 花だってきっと可愛いはずなのに蕾のままで眠るブロッコリー 煮るだけで翡翠(ひすい)に変身する君はもはや奇跡だグリーンピース もぎたての曲がった胡瓜はメロンよりjuicyでぼくは野性に還

【連作短歌】蟹と闘う

繰り延べた死を思い出す前夜祭 診察券は財布に入れる いつもとは違う路線の地下鉄に乗る乗り換えるここが戦場 本日の受付番号、平安京遷都と1番違いで惜しい フルネーム何度も問われ何度でも答える喉がやや縺れつつ 皮膚を破り侵入者として血液を奪う針から目を逸らしてる やわらかなからだに傷をもつ人が固まりながら待つ白い部屋 ペパーミントグリーンの声で話す医師はわたしの不安を食いとめる役 「問題はないです」なんて異常値の腫瘍マーカー見せて主治医は 注射器が小さな戦士を送り

【短歌】recurrence of cancer 2016

死神の消息を聞くたびにこの世界は色を鮮やかにする      * 死神がご機嫌いかがと軽やかに尋ねてわらう初夏真昼(はつなつまひる) 他界からの風の便りになつかしい空のにおいがよみがえる午後 生まれくる前の場所へと還る旅 ひと息ごとに花が零れる 去り逝くと知ればすべてがいとおしい 傷痕さえも煌き果てる 重すぎる荷物をひとつ捨てたあとの空漠をただ抱きしめている      * 脊椎がここにいるよと自己主張するように痛む長い長い夜 体芯を貫く光の道をもつ脊椎動物な

2016年後半の短歌

宿題を残したままで夏暮れて霧の向こうにあるはずの湖(うみ) 懐かしい玩具(おもちゃ)の声に微睡んで退化してゆくぼくらに繭を 古代都市遺跡にあそぶ縞猫の尾にきざまれた裏クロニクル      *  秋三首。 運命は低いところが好きだから転がってゆくドングリの群れ しんしんと直視できない日輪を水は宿して死の際(きわ)に沿う ゆわゆわわ水面に揺れる落ち葉より自由なものがこの先にある      *  2016年10月、名古屋市内の繁華街にて、革マル派デモに遭遇。 ゲバ棒

【短歌】小さな手紙

桜餅の葉にふくまれた塩分が朝(あした)わたしの涙にかわる ノラ猫に生まれかわって来世では煮干しが泳ぐ海辺で暮らそう 薄闇の底に光はしらしらとあなたの石を照らしはじめる 家じゅうを探しまわって見つからず開けた窓から来る青い鳥 冬の日のこころの淵につもる雪 月には月の道があるから 絹さやのすじを引きつつきららかな翠(みどり)の風をわたしに招く 渡り鳥のように世界を翔けめぐる未来の文字も雨に滲みるか ・・・・・・・・・・・  ブログを通じて交流のあった、桜餅の葉っぱさ

2016年前半の短歌

 Twitterとは。 挨拶も交わさず星を贈り合うのが今日のコミュニケーション つぶやきが君のアンテナ掠ったら黙って星を光らせなさい ソーシャルな愛を安売りしたくないぼくらに星を返してほしい 液晶の窓に浮かんだ文字だけの弱い絆がぼくらのすべて      *  飲み会ぼっち。 饒舌な酔いどれ人に囲まれてぬるむ刺身を噛み締めた夜      *  地球照の夜。 三日月の欠けた部分を照らしてる地球の光のぼくらは一部      * 目が覚めた後に出かけるあてもなく ぼ

2015年頃の短歌

詩をくれた君に常套句(クリシェ)を返すしかできないことが悔しくて今 風に薫る言葉を摘んで花束にして君に捧げる愛の歌      * 風の筆が雲の模様を描き出す空のキャンバスどこまでも青      *  ネット炎上。 正しさを求め続ける蟲たちが集う電脳異端審問 オクターブ声を落として話したい 正義について語るときには      * 溜め息がきこえる距離でそれぞれの宇宙に繋がる液晶の窓      * 滾る血を星の冷気で包みこみ戦いに発つ冬のオリオン 近づいては