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スマホにフォールインラブ

仕事帰りに、事務所から駅までの道を歩いていて、2階に居酒屋の入ったビルの前を通りかかった時だ。
その2階の居酒屋には歩道から一直線に続く急な階段があるのだが、その上の方から「ドタドタッ!ガガガガッ!」という大きな音とともにスーツを着た男が転げ落ちてきて、私のすぐ足元で止まった。
まるで映画の階段落ちのようなみごとな落ちっぷりだ。
唖然としてその男を見るのだが、ピクリとも動かない。

私はその男の腕をとり声をかけた。
「大丈夫ですか!」
2~3秒の間をおいて、男が動きだし、頭を押さえながらゆっくりと立ち上がった。
「だ、大丈夫です」と男。
見ると落ちた衝撃でスーツは乱れ、髪はボサボサ、そして大量の鼻血を流していた。
そしてあれほどの衝撃で転げ落ち、一瞬意識を失っていたにも関わらず、その男の片手にはしっかりとスマホが握りしめられていた。
スマホを操作しながら階段を降りようとして、酔って足を滑らしたに違いない。

「ほんとに大丈夫ですか!救急車を呼びましょうか?」
「いや、大丈夫だから」

相変わらず鼻血がすごい勢いで出ていて、道路にボタボタッと落ちている。
そんな状態で苦痛に顔を歪め、ふらふらしながらもなんと!男はひたすらスマホを操作し続けているではないか!

おいおい、今そんなことやってる場合じゃないだろ!
どんだけスマホに夢中なんだよ!

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