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八丈島はキョンではなくイタチと猫の島だ

「八丈島のキョン!」

ある年齢以上の人なら知らない人はいないというくらいの大ヒット漫画「がきデカ」のギャグだ。
ちなみにキョンというのは鹿をそのまま小さくしたような動物で中国と台湾に棲息している。日本固有の動物ではない外来生物だ。最近では千葉で大繁殖して大変なことになっているらしい。

「がきデカ」で、主人公の「こまわり君」が何の脈絡もなく突然、キョンのような姿に変わり、打ち寄せる荒波をバックに「八丈島のキョン!」と叫ぶ。
子供の時に読んだ漫画なのにいまだに鮮明に憶えている。
このギャグがあまりにも流行り浸透していたので、この年代の人間は八丈島にはキョンが至る所に棲息していると思い込んでいる節がある。実は私もそうだ。
それで八丈島の住人につい尋ねてしまう。

「キョンはどのへんにいますか?」

すると、たいてい「またか」と苦笑いを少し浮かべながらこう答える。

「八丈植物公園にほんの数頭飼育されていますが、他にはいませんよ。」


八丈植物公園 自然がそのまま残っているようで、よく整備もされている。
あちこちに素敵な小道がある。

10月の初め、3泊4日で八丈島を旅してきた。
車で1周するのに1時間半くらいの小さな島だ。八丈富士と三原山がつながり瓢箪のような形をしている。
その山と山のつながったところに平地が広がっており、そこが多くの人が住む街になっている。
八丈植物公園もその街中にある。とても広く美しいところだが、訪れる人も少なく静かな公園だ。
この植物公園の中央に、「八丈島のキョン!」を期待してきた旅人をがっかりさせないためだろうか、申し訳程度にキョンが飼育されている。数えてみると全部で6頭だ。さくに囲まれたこの場所でキョンたちはのんびりと暮らしていた。
この光景は「がきデカ」が流行った昭和の時代からずっと変わっていないようだ。


これがキョン。鹿のような牛のような。。体長60cmくらい。


八丈島はキョンではなく、猫の島と言っても良いかもしれない。外飼いの猫を少々、あとは野良猫だが4日間の滞在で50匹位以上の猫に遭遇した。

ほんの一部。わんさかいます。


野良猫で桜耳のものは見当たらず、ほとんどが去勢手術を受けていないようだ。そして港のある場所にそれらの猫たちが集中して暮らしている。
30匹とも50匹とも、、数え切れないほどの猫だ。
親切な方がここで野良猫たちの世話をしているらしい。が、この数だ。去勢手術を施すまでの余裕はなく、餌と水でかろうじて猫が生きる手伝いをしているみたいだ。あまりの猫の数にどうすることもできない無力さを感じるとともに複雑な気持ちになる。
行政が動かない限り解決できないかもしれない。
そうした人間の思惑を知るよしもない猫たちは、近づいても逃げることなく、日がな寝転がってのんびりしている。


生まれたばかりの子猫も。


絵になる猫さん


逆光で凛々しい

その中で1匹、茶トラの猫がとても人懐っこく、すりすりと体を擦り付けてきた。体をゴシゴシ撫でてやると気持ちよさそうに仰向けになる。つい最近までどこかの飼い猫だったのだろうか?とても人慣れしている。

翌々日、またこの場所に行ってみた。するとついた途端、あの茶トラの猫が一目散に近寄ってきた。覚えていてくれたのだろうか?
また、体をゴシゴシと撫でてあげると気持ちよさそうにもっともっととお尻を突き上げ、そのうちまた仰向けになる。何だか愛おしい、そして切ない気持ちにさせられる。水や餌ももちろん大切だが、温もりを欲しているのかもしれない。飼い猫と野良猫、同じ猫なのに大きな隔たりを感じずにはいられない。


ついついおねだり


たまらんっという感じで仰向けになりお腹をさすってもらう。手が可愛い。


そして、猫とともにたくさん目にするのが「イタチ」だ。
車で走っていると、さささっと、目の前をすごいスピードで道路を横切っていく。晴れた日には1日に10匹くらい、本土で暮らしていて目にする一生分のイタチに1日で出会うことになる。
昔、ネズミの駆除を目的に島に導入されたそうだ。見かけたのはほとんど運転中、そして道路をさっと横切って、草むらの中に消えてしまうので、写真に収めることができない。それであれだけたくさんのイタチを目にしたにも関わらず、写真は一枚もない。

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