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私はいい子のはず

心に大きな傷が残っているんだなと気付く。

ふとした瞬間に彼の私に対しての行動や態度を思い出して何度も傷付く。もう済んだことなのにどうしてなのよ。

くどうれいんさんの「うたうおばけ」を読んでいる。ミオという友だちの失恋を、彼の葬儀をラーメン屋で真似て行うという何とも、後から罪悪感がのしかかってきそうなシチュエーションである。

この話のミオに、ミオを思う作者の気持ちにどうしてこうも救われるのだろう。

人は自分がかけて欲しいと思う言葉を人にかけていると聞いたことがあるけれど、私は失恋直後の私に、まだ傷の癒えない今の私にひたすらこの話を読んであげたい。そしてあの時の自分と同じじゃん?と思う人が側にいた時この本をそっと渡してあげたい。

別れた相手に酷いじゃないかと怒りたい気持ちも、どうして私が泣かなくちゃいけないんだという憤りも全てを代弁してくれているような感覚になる。そんなに怒れてしまうのは本当の自分らしくなくて、本当はもっと優しくて良い子だと思ってくれる友だち、心が荒ぶるほど傷つけることをされたのだと認めてくれる、ミオの友だちである作者。作者からミオに向けられた言葉にどうしようもなく私が救われる。

彼と別れてぼろぼろに泣く子に対して、こんなにいい子を傷つけるやつは地獄行きだ!と思う作者。本当はこんなこと思う子じゃないのに。普段はそんなこと人に向けて言わないし、思わないのに。そんなことをミオに思わせるなよ。泣かせるなよ。と思いながら本当は自分を傷つけた彼に怒って、こんな気持ちになっている自分を慰めてあげたかったのだなと気付く。

もう2度と酷い扱いを受けないように、幸せを喜び合えるようにミオを思いながら、ミオに自分を投影して、大切にしてくれる人たちの側にいることを自分が選んでいけるように誓う。

一度くしゃくしゃにした紙は伸ばしたって元には戻らないんだぞ。戻ってたまるかよ。もっと強くなってやるかんな。

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