ウクライナ軍がAGM-88を運用している

色々とネタが尽きないロシア・ウクライナ戦争ですが、どうやらウクライナ空軍が、アメリカが開発した対レーダーミサイル「AGM-88 HARM」を運用していることが明らかになっています。
「ロシア系の戦闘機(MiG-29)でアメリカが開発したミサイルを運用する」という、なんともマンガのような展開です。


まずはAGM-88というミサイルについて。
AGM-88はSEAD(敵防空網制圧)ミッションで使用されます。ここで言う敵防空網というのは、具体的には敵の地対空ミサイル(SAM)です。AGM-88は敵のレーダーが出す電波に誘導されるようになっているので、敵SAMのレーダーの電波を捉え、これに向けてAGM-88を発射すればSAMのレーダーに突入してこれを破壊します。
※レーダーが破壊されてもミサイル(ランチャー)は残っているわけですが、SAMは「捜索レーダーで目標を発見してから目標にミサイルを発射する」という運用なので、捜索レーダーが破壊されてしまえば、SAMは無力化されてしまいます。


2022年8月に入って、AGM-88の残骸を写した写真がネット上にアップロードされるようになりました。
次に出てくる疑問は、「ウクライナにはMiG-29やSu-27といった"ロシアが開発した戦闘機"しかないのに、どうやって運用しているのか」です。

Thomas C. Theiner氏は、AGM-88には3つの動作モードがあると言います。
https://threadreaderapp.com/thread/1556751670402596865.html
2022.8.8
A)Self-Protect (SP)…セルフプロテクトモード。戦闘機に搭載されたセンサーが敵の電波源を探知、その中からパイロットが標的を選び、データをミサイルに送信し、発射する。アメリカのセンサーシステムをウクライナの戦闘機には搭載できないし、ミサイルにデータを送信する方法も無いので、このモードが使用される可能性はない。
B)Target Of Opportunity (TOO)…ターゲット・オブ・オポチュニティモード。機体に搭載したAGM-88自身のセンサーが電波源を探知し、機体のアビオニクスに送信、パイロットが提示されたデータを見て脅威かどうかを判断する。
C)Pre-Briefed (PB)…プレブリーフィングモード。戦闘機が離陸する前に、敵のレーダーサイトの座標をAGM-88に入力しておく。上空にて、最高高度と最高速度でミサイルを撃てば、ミサイルは150km以上飛ぶ。AGM-88は、目標が近づけばスキャンを開始し、ロックオンして目標に突入する。

…というわけで、ソフト面での運用形態で可能性が一番高いのはC)、次点でB)だと思います。

また、ウクライナの戦闘機がAGM-88をハードウェアとして取り付けている方法についても明らかになっています。ミサイル自体はLAU-118/Aランチャーに取り付けられていますが、このLAU-118を(恐らく特注の)アダプターを介してMig-29に取り付けているようです。 (下のツイート)
アダプターはウクライナが自作したのかもしれませんし、アメリカが制作してMiG-29の補修部品と一緒に送っている可能性もあります。

また、Mig-29に加え、Su-27もAGM-88を運用している写真がネットに上がりました。↓

実際にAGM-88を発射している動画↓