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ほじほじ道中膝栗毛

俺は田中。今から友人の佐藤と伊勢へ行く。
しっかり者の佐藤は時間通り、待ち合わせの東京駅にきていた。

東海道新幹線の切符を買い、出発まであと10分。キヨスクでお茶とちょっとしたお菓子を買って、車内に乗り込んだ。

俺は荷物を網棚に乗せ、富士山が良く見える窓側のE席に座った。まもなく出発し、有楽町、新橋といつも見ている景色を通りすぎ、停車駅の品川、新横浜までも、あっという間だった。

新横浜を過ぎると名古屋まで停車しない。とりあえず、お茶を一口含み、お菓子を食べた。「ここに置くから、佐藤も食べていいからな」と声をかけた。

まもなく新富士駅と電光掲示板で案内がある頃、車窓から富士山が見える。今日は天気が良い。

俺は富士山が大きく見える位置で撮影をした。「いや、なかなかタイミングが難しいな。」ちょうど塀と電信柱に邪魔されて、インスタにUPできるような写真は撮影できなかった。

「なぁ佐藤、富士山を見ながら、鼻をほじほじするとな?願いが叶うんだってさ」

あまり堂々とするのもなぁと思い、願いをつぶやきながら、俺は鼻をほじった。

伊勢へ行くには、名古屋で降りて近鉄に乗り換える。俺は荷物をまとめて、下車した。湿気がすごいな。

時刻はお昼になっていたので「名古屋めし」でも楽しんでから、伊勢に向かおう。俺らの旅は、自由だからな。

昼食を取り、そのまま乗り換え口まで歩き、電車に乗りこんだ。五十鈴川駅(いすずがわ)で降りると有名な「おかげ横丁」や「おはらい町」があり、そこで食べ歩きをしよう。「俺は本当花より団子だなぁ」なんてな。

「こっちだぜ」と佐藤を誘導し、そこからバスに乗って俺は伊勢神宮方面に向かった。

ついに来たぞ!伊勢神宮。うわぁシャンとした気分になるよな「ところで佐藤は何か食べたいものあるか?それとも先にお参りするか?」と佐藤の顔を見た。

あれ?佐藤がいないぞ。どこ行ったんだ?周りを見渡しても、佐藤の姿がない。
俺はスマホを取り出し、佐藤にLINEした。

「今どこ?」と送った。どこではぐれたか?トイレか?

返信がきたぞ「俺、家」

家?なんで?確かに東京駅で佐藤と合流したはず、どうして佐藤は隣にいない?混乱しながら佐藤に電話をかけた
「お前、なんで家にいるの?」


「いや、俺が切符買ってる途中にお前がスタスタ改札に向かっていったんだろ?どの新幹線の切符買ったのか、わかんねーし、お前ってさ目的が決まると、周りが見えなくなるだろ?それで、いつ俺がいないことに気が付くかなって思ってたら、今かよ!ほんで今、田中はどこにいんだよ?」

「伊勢神宮着いた」

「めでたいやつだな、伊勢神宮で、周りがきちんと見れる男になれますようにとでも願ってこい!」

すまない。これからは気をつける。

俺は鼻をほじほじとして「千夏(ちなつ)ちゃんと付き合えますように」と願った。