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ホスりょう

私は歌舞伎町で有名なホスト狂い(ぐるい)、ホス狂いのりょう。通称ホスりょう。

今月は担当の蘭(らん)が、どうしてもナンバーワンになりたいから、シャンパンを入れて欲しいと頼み込んできた。「今月は」っていうけど「毎月」言っているじゃない。

先月は500万のシャンパンを入れた。月の売上1000万円オーバーし、蘭はナンバーワンになった。
蘭のお願いは、何でもした。正直稼ぐのは簡単じゃない。蘭に喜んでもらうためなら、少し我慢し、男性に触れられる(ふれられる)ことくらい平気になった。短時間で稼げればそれでいい。

私は東京で地味に過ごす月給15万円のOLで、もともとアイドルをしていた蘭のファンだった。
蘭はアイドル事務所を不祥事でクビになり、次に就職した場所がここで、ファンたちは必然的にホストクラブに通うようになった。

アイドル時代は、チケット代やグッズ代で多くとも月2万円で、一緒にチェキを撮って、握手をしてもらっていた。

蘭はアイドルグループの中で一番人気があった。だから今でも、私のようなファンたちがホストクラブに来店し、蘭を応援している。当然私はそのファンたちとは、仲良くない。

何かと理由をつけて私にマウントを取ってくるし、ネットの掲示板で「ホスりょうの自宅はココ」と個人情報をバラされたことがある。

実は蘭のアイドル時代、ファンのゆうみとは仲が良かった。LINEで色々情報を交換して、チケットを取り合ったりして、一緒に蘭を応援していた。

亀裂が入ったのは、私が昼職のOLを辞めて、お金を稼ぐようになり、ゆうみより蘭を応援する金額が増えたことと、先月の締め日に500万のシャンパンを入れて、私がアフターに行ったことが気にいらないらしい。

ゆうみは、合計で400万円、蘭に使っていた。

私たちは、一緒に蘭を応援はするけど、一緒の卓につくことは避けた。それは、お互い似たもの同士の嫉妬深い人間だということを自覚していたからだ。

その距離感がずっとうまくいっていたはずだけど、私もどこかでゆうみには負けたくなかった。

他のファンは、昼職についていて、月に多くても10万円つかっている程度で、私たちほどの稼ぎはない。それくらいの安い酒で、蘭が喜ぶなんて思うなよ。甘いよ。

自分をどれだけ売って、どれだけ蘭にお金を使えるのか、その金額で評価されるのだから。ここは甘んじた世界ではないの。

その価値観が一致したゆうみとは、やっぱり私は似た者同士だけど、永遠に仲良くなれる気はしない。

今は時守(ときも)駅にあるベアカフェ。時計の針は16:30。まもなく男性と合流する。
今日も私は蘭ではない男性とデートをし、お金を稼ぐ。そのたまったお金をアルフォートの箱に100万ずつ入れて、今月の締め日までにまた500万円を蘭に使うのだ。

6月はまだ始まったばかり。

そこのマウント女たち、かかってこいよ。