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いわゆる昼逃げ

ー玄関の飾り棚に手紙を置いた。
 三行のメッセージ。

築3年目で、他業者が見るところ1億はかかっただろうという広く美しい家。そこら中にイタリア製のレンガやらタイルが使われた上質な空間、最新の設備。


そこから子どもと二人で出る、行き先は私の実家。

いつものように園に子どもを迎えに行き、何も伝えず羽田空港に向かう。担任の先生にもいつもの挨拶をする。

ドレッサーと子ども椅子のストッケ、私の仕事道具は、スマホで見つけた昼逃げ・夜逃げ専門業者とやらに運び出してもらった。
私には生活費しか動かせるお金がないので、その中から引っ越し費用に11万(その後追加料金と言われ1万5,000円を支払った。)、航空券に34,380円。
足が出るので親から5万円借用した。

子どもは何も知らない。
突然電車に乗る事を楽しみ到着先が空港だったので、

飛行機にのるの?

と喜びはしゃぐ。ばあばのところに行くの?と。

普段はANAを使うが、コロナの影響でか最終便が欠便していたのでJALが飛ばしていた最終便を指定した。

使い慣れない羽田空港第1ターミナルの地下一階のフードコートで、ハヤシライスとカレーを食べる。
いつもの帰省の様に母にスイーツのお土産を探す。
今回大きく違うのは居るはずもない夫の気配にビクビクとしている。スーツ姿のサラリーマンを背後に感じるとドキッとする。もし夫だった場合、なんと言おう…
移動中から遭遇するのでは無いかと、乗り換えの横浜駅できょろきょろと周りを警戒していた。

良く空港まで来られた。
ここに至るまでに一体何年かかったのだろうか。

ここまで来たら、あとは離婚一択。

あの家を出て今日で28日が経ち、私は一分一秒と考えている。
これから私は何を選択するのだろうか…と。

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