大好きなバンドの活動に携わった話
黒子首(ほくろっくび) @hockrockb というバンドを知ったのは、今年の3月のことだった。Twitterで、バンドのボーカルを務める堀胃あげはさん @agebokuro の弾き語り動画を見たのがきっかけ。本当に偶然だった。
動画を見た私はすぐにあげはさんの、黒子首の歌が好きになった。
生の演奏には絶対敵うはずがないのに、動画を通して伝わるものだけで強烈に心惹かれたのだ。
その時の感覚は、幼い頃に初めて自分の好きな音楽に出会った時の衝撃に似ていて、少し動揺した。大人になってからの音楽の優先順位はどちらかとういうと下の方で、積極的に音楽を聴くこともライブに行くこともなかったからだ。
学生時代はあれほど身近にあったはずなのに、いつのまにか音楽が遠い存在になっていた。毎日考えることもやることも沢山あったから、音楽に限らず映画や漫画…昔好きだったものとの距離が開いて行くのを感じていた。
でも、黒子首と出会ってまた音楽が近い存在になった。
「生きていくために必要なことをする毎日」の中に、余白ができたのだ。
音楽を楽しむ余裕というか。
でもこれは、黒子首と出会った結果そうなったわけで、私がそうしたいと思って今の状態になれたわけじゃない。だからすごい、本当にすごい。
きっと私以外にも、黒子首と出会って生活が変わった人が沢山いるはずだ。
黒子首はそういうバンドだ。
黒子首初ワンマンライブ
11/5(火)に黒子首の初ワンマンライブがあった。
私はこの日のとことを一生忘れない。
今も思い出すと胸がドキドキしてくる。
あんなにヒリヒリするライブは初めてだった。
泣いて笑って癒されて、そして生きる勇気をもらった。
音楽の世界のことはあまりわからないけれど、活動開始から約一年でワンマンライブをするのは相当すごいことなんじゃないかと思う。
しかも会場はほぼ満員で、スタッフさんが何度も「まだ入場される方がいるので少しずつ前につめてください」みたいなことを言っていた。
初ワンマンで会場を満員にするなんて、めちゃくちゃかっこいいじゃないか。
黒子首にとっては、ここからが本当のスタートなんだと思う。
演奏に、あげはさんのMCに、そんな決意みたいなものを感じた。
ファンとしての私、デザイナーとしての私
黒子首のライブに参加するのはこれで2回目だったけれど、向き合う気持ちは全然違った。
一番最初のライブでは”ファン”だったけれど、ワンマンライブに参加した私は”ファンでありデザイナー”だったからだ。
私は今回のワンマンライブに、デザイナーとして関わらせてもらった。
*
初めて彼らの演奏を聴いた時、涙が止まらなかった。
黒子首の音楽というか、生き様みたいなものに共感したんだと思う。
聴いているうちに、自分と彼らの音楽との境界線が曖昧になって、なんだか溶けていくような感じがした。全然うまく言い表せないけど、そんな感じ。
若い頃音楽に抱いていた、”かっこいい”=好きとは全く別物の感情。
大人になって色々なことを経験したからこそ、音楽の受け取り方が変わったんだと思う。
昔好きだった音楽と今好きな音楽が違っているのはそういう理由なのかもしれない。
とにかく、黒子首の演奏に圧倒された私はさらに彼らの音楽にハマっていった。そして、「黒子首の活動に携わりたい」と思うようになった。
ワンマンライブのフライヤー制作
ファンとして個人的に何か作るのもアリだけれど、自分のスキル(イラスト/デザイン)を活かして、できれば一緒に何かを作りたい、何かお手伝いがしたい…そんな風に思っていた矢先。
偶然、Twitterで黒子首が手書きでフライヤーを作っていることを知った。
ああ、もうこれはチャンスだと思った。
「声をかけるなら今だ」と。
そして、あげはさんに直接DMを送ることにした。
ライブのチケットを予約するためにやり取りをしたことはあったけれど、こういう形で声をかけるのは初めてで、正直めちゃくちゃ緊張した。
だって私はただのファンだし、迷惑に思われたらどうしよう…そんな不安もあったからだ。
でも絶対にこのチャンスを逃したくないと思った私は「今黒子首のデザインを担当している方はいらっしゃるんですか?」と直球で聞いた。
すると、「デザイン周りの担当者はいない状況です」とのお返事が。
迷うことなく、「私にやらせてもらえませんか?」と返したところ、「実はワンマンライブのフライヤーが欲しいんです」と返事がきたのだ。
これが7月の上旬の出来事。
ワンマンライブ4ヶ月前だ。
*
ワンマンライブ発表の時期が数週間後に迫っていて、声をかけたタイミングが本当にギリギリだった。印刷入稿するまでの1週間くらいでフライヤーを制作し、無事に納品した時はほっとした。
憧れのバンドの初ワンマン。
いいものを作りたいという思いが強いだけに、制作期間の短さに不安を感じていた部分もあったからだ。
でも、最初に見せたラフのコンセプトを聞いたあげはさんは、「今の自分の状況にすごく重なる」と、とても感激してくれた。
だから、大丈夫だと思えた。
そして出来上がったフライヤーがこちら。
ワンマンライブのテーマは『独走』。
沢山の情報やもので溢れる宇宙みたいな世界をひた走っているイメージでイラストを描き、『独走』の文字はゴールテープのようにも見えるデザインに。
今見ると「もっとこうしたらよかったかも」なんて箇所もあるけれど、ライブ後に見返すと、なかなか雰囲気と合っていたんじゃないかな、なんて。
メンバーの皆さんもそんな風に思っていてくれるといいな。
イメージイラストを担当
ワンマンライブのフライヤーが無事に出来上がり、「他にもお手伝いできることがあればおっしゃってくださいね」と伝えたところ、イメージイラストのお話を頂いた(Twitterのヘッダー)。
声はかけてみたものの、本当に次の話に繋がるなんて思ってもいなかったから、すごく嬉しかった。
「黒子首に合うイラストのタッチってどんな感じだろう」そんな風に考えつつ、ひとまず自分が普段描いているタッチでイラストを描いてみることに。
「妖怪」「ろくろ首」「白黒」といういくつかの条件を聞いて、私らしく自由に広げていった。
Ag.&Vo.あげはさん→ろくろ首
Ba.みとさん→化け猫
Dr.そい光さん→一つ目小僧
3人を妖怪キャラにして、演奏しているシーンを切り取った。
そして、ステージを落語に見立て、”めくり”(演目や演者の名前を書くもの)には『黒子首』とバンド名を入れた。
ドラムに黒子首のロゴが入っているところもお気に入り…!
他のパターンも提案したけれど、メンバーの皆さんがこのイラストをとても気に入ってくださり、最終的に一番最初に見せたものに決まった。
私も一番気に入っていたので本当に嬉しかった。
グッズ制作(Tシャツ/缶バッジ)
イメージイラストとほぼ同時に、グッズ制作のお話も頂いた。
Tシャツや缶バッジ、ピック、サコッシュなど色々案が出たけれど、最終的に決まったのがTシャツと缶バッジ。
「黒子首の定番になるTシャツが作りたい」という希望を聞いて、ふたつのラフを提案した。
ひとつ目はイメージイラストと同じ絵柄でキャッチーな雰囲気のもの、ふたつ目はシンプルでおしゃれなもの。
決まったのは、ふたつ目に提案したこちら。
「定番のTシャツなら、シンプルで着やすいものがいいな」と考えていたため、方向性をガラッと変えて線の強弱や曲線の綺麗さで見せるデザインにしたのだ。
こういうシンプルなデザインほどバランスが難しく、何度も描き直して完成するまでなかなか時間がかかった。でも、ラフを見せた時に「イメージしていたものに近いです!」と喜んでもらえたのが何より嬉しくて、「絶対妥協しない」と思って完成させた。
*
缶バッジは落語ver.の3人のイラストをそのまま使うことになった。
あちらのイラストは私が普段描いているタッチそのままなので、それがグッズになると思うととてもワクワクしたし同時に緊張もした。
グッズ販売とファンの方の反応
ワンマンライブ当日、私は緊張していた。
初めてのライブの時は純粋に演奏を楽しめたけれど、活動に携わった今はそれだけじゃない。自分がデザインしたグッズがファンの人にとって”ナシ”だったら、買ってもらえないからだ。(自分自身、好きなバンドでもグッズがイマイチだと買わないこともあった)
黒子首の歌は素晴らしいから、「私のデザインがどうこうで買ってもらえないかも…」なんて考えはむしろ傲慢なのかもしれないけれど、とにかく怖かった。いいものを作ったと思うし、メンバーの皆さんも気に入ってくれたから大丈夫、そんな風に思っても不安だった。
でも、
ライブが終わってグッズ販売が始まると、すぐに列ができた。会場をぐるっと一周しそうなくらいの列だ。それを見てほっとした。(CD目当ての人ももちろんいらっしゃっただろうけれど)
*
自分の番がき来て、まずはあげはさんに挨拶した。
バタバタしていたし、興奮してちょっと何を話したか覚えていないのだけれど、ひとまずメンバーの皆さんにもきちんと名刺を渡せてよかった。握手もしてもらった。あの時の私は、もうデザイナーの役目を果たしてただのファンだった。
そして、改めて自分がデザインしたTシャツを着ているメンバーを見て(人が多すぎて演奏中は見えなかった)、めちゃくちゃ感激した。
グッズをたくさん手にして、東京を出た。
*
帰りの夜行バスの中、興奮が冷めずにドキドキしていた私はTwitterで黒子首を検索してみた。そこには、さっきまで同じ空間で黒子首の音楽に浸っていただろうファンの人たちのツイートが並んでいた。
ライブの感想と一緒に、グッズの感想をツイートしてくださってる方も。
これは素敵すぎるアレンジ。
私も真似したい〜〜〜
バタバタしていてあまり物販の時のファンの方の反応を見られなかったのだけど、どうやら好評だったよう。
あげはさんからも「大人気でした」と言ってもらい、死にそうなくらい嬉しかった。
黒子首と出会えてよかった
ファンとして黒子首の作品を楽しみたいという気持ちが「一緒に何かを作りたい」に変化したのは驚きだった。
今までの私はそこまで熱中して何かを好きになることはなかったし、もし好きになったとしても「活動に携わりたい」だなんて踏み込んだ考えにはならなかったはずだから。
だからこんなに熱中している自分が嬉しい。
今回のワンマンライブを観て、めちゃくちゃ創作意欲が刺激された。
また何かを一緒に作りたい、そう思った。
そのひとつにアニメーションの制作がある。
この件に関しては、まだ私が勝手に考えているだけだし今後のことはわからない。でも、これからも黒子首のメンバーの皆さんと一緒に何かを作っていけたらいいなと思う(あげはさんもそう言ってくれているのでそうだと思いたい)。
*
彼らの音楽は間違いなく私の希望の光だし、いつか私の作るものが彼らにとってもそうなったらいいな、なんて思う。
本当にありがとう。
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