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父のこと⑤
先日、兄と父の面会に行ってきました。
前日に看護師さんから必要なものの連絡があったので、私は部屋に入ってすぐに持ってきたものを置いたり、持って帰る着替えを整えたりしていると、目を覚ました父が兄に「美智子は?」ときいてきました。
私は、「ここにいるよ。」とマスクを外して父の顔の前に移動しました。
それまで、両親は私よりも兄や妹のことを気にかけたり心配しているのだと思っていました。
兄や妹は私と比べて不器用で、放っておけないところがあるので、いつも両親の気持ちは兄や妹にあるのだと思っていました。
私は寂しかったんだと思います。
ずっと私は、どんな人であろうと、私を好きだと、必要だと言ってくれる人が好きでした。CAから人事異動になった時も、そこに自分が必要とされていないと、本当に苦しい時間を過ごしました。私が居たい場所だったからこそ余計に苦しかったです。
寂しさは、人の判断を誤らせます。目の前に見せられた幸せしか見えなくなります。
これまで私も寂しさの中で、ただ、寂しさを埋めようと必死でした。
でも父は、残りわずかな時間の中で、私の名前を呼びました。
「美智子は?」の短い言葉の中に、私は「美智子は会いに来ていないのか?」「元気にしているのか?」などの気持ちをたくさん感じました。
今になって本当に気づきました。
私が欲しい愛は、いつもすぐそこにあったんだって。
もう顔を動かすことすらきつそうな父が気づかせてくれました。
私はどうしてもっと早く気づけなかったんだろう、と涙を堪えながら、今こうして父と過ごした時間を思い出しています。
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