物語の結末

君に話したいことがたくさんある。君は私の話を聴いてくれる? 好きな人たちの話をたくさんしたいんだ。昨日はどこに行って、何を食べて、どんな会話をして、私がどういう気持ちになったのか。全部一つ残らず聴いてほしいんだ。

君はどんな表情をして私の話を聴いてくれる? うれしそうな表情で聴いてくれたら私もうれしいな。一緒にうれしくなってくれたらうれしいな。君がうれしいと、私もさらにうれしくなるから。そしたら君ももっとうれしくなる。二人でうれしさの空間に包まれるね。

君に抱きつきながら全部話したいな。全身で私の気持ちを感じてほしいよ。どんなに私が君のことを好きで、好きな人たちのことを好きなのか。全身から出る「好き」を言葉にせずとも君に届けたいんだ。好きなんだ。

突然思い出すイヤなことは話したくないな。話せないな。ただそれも感じ取ってほしいよ。感じ取って、そしてそのまま、流れる水のようにどこかに流してほしい。イヤなことはためずに二人で一緒に流したい。そうして、私の中にまた話したいことが出てきたら君に話すんだ。

たぶん、ずっと君に話し続けるよ。君は「もういいよ」「もう十分だよ」って言うのかな。私の気持ちにふたをするかな。それはちょっとイヤだなって思っちゃうかもしれない。私の中から言葉が消えるまでずっと聴いていてほしいな。私のことを抱きしめながら。

君が好きだから、君に話したいんだ。君以外の人間に話したいことなんてないんだ。ただただ君と話したい。私のことが好きな君に、私の気持ちを話したい。いつ話せるだろう。今日? 明日? それとも明後日? 君の都合のいい時間を聞かせてよ。そしたらずっと話すから。朝も昼も夜もずっと。話し疲れたら寝ちゃうかもしれないね。一緒に寝て、そのままもう起きなくてもいいかもしれない。

私の気持ちは永遠に君の中に。どこにも行かず大切にしまっておける。上書きもされない。常に最新のまま、私と君、二人に共有される。すごく素敵だなって思う。

そういう恋人同士はきっと世の中にいるはずだよ。今日もニュースで流れてくる、この世から消える恋人同士。二人で一緒に消えるか、あるいは一方が先に相手を消し、そのあと自分も消す。二人は二人の気持ちをずっと自分たちの中にとどめておきたかったに違いないと思うんだ。私もそうしたいからわかるんだ。とっても素敵なことだと思うけど、君はどうかな? 自分の結末がわかっているこの物語を一緒に生きてくれる?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?