※途中【全文文字起こし】2022年7月12日全国霊感商法対策弁護士連絡会 記者会見
2022年7月12日に行われた「【"統一教会"の献金などの活動を非難】紀藤正樹弁護士ら全国霊感商法対策弁護士連絡会が記者会見」を文字起こししました。会見動画はYouTube、ニコニコ動画などで公開されています。
※半分くらいまで文字起こし済みです
この記事は下記のYouTube版をもとに文字起こししています。話し言葉のため文章がつながりすぎてわかりにくくなっているところなどは、整える程度の加工を加えています。わからない用語、人名などをカタカナで表記している部分、あるいは聞き間違いなどの可能性がある点、あらかじめご了承ください。
※7月15日追記:
12日の会見を13日の夕方〜夜にかけて途中(Aさん質疑応答)まで文字起こししたのですが、14日深夜に確認したところYouTube版の動画が非公開となっていました。ニコニコ動画に非公式でアップロードされたものがあったので、ひとまずそれをリンクします。以降の文字起こしは当該動画をもとに行う予定です。
【ニコニコニュース公式アカウントによるYouTube版(7月15日現在非公開)】
【ニコニコ動画にアップロードされている非公式動画(内容は同じもの)】
【動画概要】
旧:世界基督教統一神霊協会(統一協会・統一教会)、現:世界平和統一家庭連合(家庭連合)による『霊感商法被害の根絶』と『被害者の救済』を目的として、1987年5月に全国の約300名の弁護士が賛同して結成された全国霊感商法対策弁護士連絡会による記者会見を生中継。
【会見者】※会場左から
服部功志 弁護士
吉田正穂 弁護士
木村壮 弁護士
紀藤正樹 弁護士
渡辺博 弁護士
川井康雄 弁護士
山口広 弁護士
郷路征記 弁護士(リモート)
佐々木大介 弁護士
阿部克臣 弁護士
開会(3:07)
川井
「それでは定刻になりましたので記者会見を始めさせていただきます。皆様本日は直前の案内にもかかわらず多くの方にお集まりいただき、ありがとうございます。私は本日司会進行を務めさせていただきます、東京の弁護士の川井と申します。よろしくお願いします。被害弁連の事務局長をしております。
開会に先立ちまして、安倍元首相に対して黙祷を捧げたいと思います。会場の関係で座ったままとなりますが、皆様黙祷のご協力をお願いいたします」
(黙祷)
「お直りください、ありがとうございます。皆様お手元に資料は行き渡っていますでしょうか。はじめに、私の方から本日の主旨が記載されている声明文を読み上げさせていただきたいと思います」
声明(4:37)
川井
「声明。
1)山上被疑者が安倍元首相を死にいたらしめた今般の卑劣極まりない行為は、いかなる理由があろうとも決して許されないことです。当会は安倍元首相のご冥福を心からお祈り申し上げます。
2)『山上被疑者の母親が統一教会に多額の献金をし、家庭を崩壊させられたことへの恨みが今回の事件の動機である』という報道が事実であればですが、同被疑者の母親の常軌を逸した統一教会への献金をはじめとした忠実すぎる活動のために、どんなに苦しんできたことでしょうか。当会としては、このような実情についてかねてから憂いてきたことであり、その意味で山上被疑者の苦悩や、教会に対する憤りも、理解できるところではあります。
家庭を崩壊させる統一教会の活動について、行政も、あるいは政権を担う党の政治家の方々も、この30年間以上なんの手も打ってきませんでした。
今回の行為は決して許されることではありません。その点は重ねて強調したいと思いますが、ただこうした問題に対して、社会としてどう取り組んでいくかが改めて問われているのだろうと考えます。
3)安倍元首相が統一教会や、そのダミー組織の一つであるUPF、天宙平和連合のイベントにメッセージを発信することを繰り返し、特に昨年(2021年)9月12日に行われました「神統一韓国のためのTHINK TANK 2022 希望前進大会」でビデオメッセージを主催者に送り、その中で文鮮明教祖の後継の教祖である韓鶴子氏に対して「敬意を表します」と述べたこと。これは統一教会のために人生や家庭の崩壊、あるいは崩壊の危機に追い込まれた人々にとって大変な衝撃を与えるものでしたし、当会としても厳重な抗議をしてきたところでございます。
政治家の皆様が政治的信念に基づいて意見を述べ、あるいは行動されることについて、当会としてはもちろん異を挟むものではありません。しかしその献金・勧誘行為や信者獲得手法について、繰り返し違法である旨の判決が下されている統一教会や、そのダミー組織の活動について政治家の方々が支持するような行動は、厳に謹んでいただきたいと、改めて、切実にお願いしたいと思います。
4)統一教会の霊感商法の手口による金銭収奪行為や、正体を隠してビデオセンターに誘い込んで信者にしていく行為が、信者になった者やその家族の人生を狂わせ、あるいは狂わせかねないものであることについて、この機会をきっかけに、少しでも皆様に理解していただけるようお願いしたいと思います。
そして最後、5)ですが、
今回の事件や報道、SNSなどの投稿によって傷つき苦しむ統一教会の現役信者、特に2世の信者の方、あるいは3世の信者の方が存在ことを念頭に置いていただきまして、取材・報道・投稿は非常にありがたいことではありますけれども、慎重にされることを望みたいと思います。
ありがとうございます」
山口広 弁護士コメント(7:40)
川井
「続きまして、代表世話人の山口先生の方から本件についてコメントさせていただきたいと思います」
山口
「今日の会見の設定を弁護団で決めた理由はですね、この声明に掲げております2と3と4に尽きます。もちろん安倍先生の殺害という許されない行為、これは本当に断じて許されない、そう思います。
しかしながらご理解いただきたいのは、統一教会信者の親の理解を超えた献金行為や、あるいは統一教会の方針に従って合同結婚式に参加して、メシアが指名した、あるいは統一教会が選んだ異性との結婚・合同結婚式への参加を親から強いられて、拒否できずにしてしまった、そういう2世の人たちの苦しみがどんなに辛いものか。
特に『親がなぜそのようにしたのか』を理解できないわけですよ、家族は。その家族がどんなに苦しいのか。
そういったことについて、ぜひご理解いただきたい。
しかし、許されないことです。許されないことですが、そこはご理解いただきたい。
従いまして、わたくしどもとしては、安倍晋三先生に対しても、あるいは他の先生方に対しても、何回も『統一教会の社会悪を考えたならば、反社会的団体である統一教会にエールを送るような、そういう行為はやめていただきたい。どんなに被害者が悲しみ、苦しみ、絶望するのか。しかも新しい被害者がそれによってまた生み出されかねない。そういうことに対して、政治家としては配慮いただきたい』……こういうことを繰り返しお願いして参りました。
残念ながら、『反共』ということに共感を持つ議員の方々、あるいは統一教会のお金が最初は目的だったかもしれません。しかし2005年から2010年にかけて、警察が相次いで犯罪行為について、あるいは献金・勧誘に絡む物品販売行為について検挙して、13件30人以上の統一教会信者が犯罪行為として逮捕・勾留されました。東京の「新世」事件では2人の社長とその部下の幹部2人が懲役刑の判決を受けております」
補足:2009年11月11日しんぶん赤旗より
統一協会の霊感商法を裁く「新世」事件の判決公判が10日、東京地裁であり、秋葉康弘裁判長は印鑑販売「新世」社長の田中尚樹被告に対し、特定商取引法違反(威迫・困惑)で懲役2年(執行猶予4年)、罰金300万円(求刑は懲役2年、罰金500万円)を言い渡しました。裁判長は被告らと統一協会の関係を認定し、「高度な組織性が認められ、犯情は極めて悪い」と述べました。霊感商法の関係者が、同法違反で懲役刑を受けるのは初めてです。
「そういうこともあって、資金的には統一教会は厳しい事態になっておりますが、相変わらず伝導行為は行なっておりますし、今回あるいはその前の選挙でも、特定の候補者を『組織推薦候補』として応援してきた。それに信者組織は、動員をかけてやってきた。わたくし側としては、それを事実として認識しております。
そういうことを考えますと、昨日(7月11日)の田中統一教会会長のコメントは『あまりにも事実に反する』と言わざるを得ません。統一教会には本当に反省していただいて、こういう家族の悲劇や苦痛について配慮していただきたい」
補足:7月11日の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)記者会見
「一番私として許せないのは、山上さんのお母さんが平成14年、2002年に奈良地裁で自己破産しています。その自己破産は明らかに、統一教会に対する過度の献金のためです。それ以外考えられませんよ。
それを昨日の記者会見では、あたかも他人事のように言った上で『その後の献金はありません』……おそらく献金させてます。借金させても献金させます。カードで借金したために自己破産した信者はたくさんいます。それを白々しく、ああいう形で証言し、人前で喋るということは許されない。私としては心からそう思います。
今後政治家の皆さんも、ああいう社会的団体とのエールを交換することについて本当に慎重に考えていただきたいと思います。しかしながら、繰り返し言いますが、ああいう凶行は許されない。それだけはここでも強調したいと思います。私からは以上です」
動画資料(13:14)
川井
「ありがとうございます。ここで動画の方を紹介させていただきたいと思います。少し古い資料とはなりますが、1998年当時、統一教会の方で献金に対してどういった指示、実態があったのかを端的に表すものだと思うので、動画でご覧いただきたいと思います」
補足:後ほど質疑応答でも説明がありますが、渡辺弁護士が信者から提供されたものを複数のテレビ局等に渡したのがこの動画。当時かなりの数の人々に渡したためどこまで使用許可を出したか覚えていないが、そのいずれかで放送されたものがYouTubeに上げられたのだろう、とのことでした。
川井
「これはごくごく一部の資料で、我々の方では統一教会が組織的に多額の献金を強要していたことが証拠として、何点も把握しているところでございます。それについては後ほど、コメントがあるかと思います」
渡辺博 弁護士コメント(15:16)
川井
「次に渡辺弁護士の方からコメントをお願いします」
渡辺
「今日はどうもありがとうございます。東京の被害弁連の事務局長をしております、弁護士の渡辺博です。2点だけ付け加えさせていただきます。
今のビデオは、埼玉の教会での説教です。当時現役の信者の方が『あまりにもひどい』ということで盗み撮りをして、わたくしのところに持ってきてくれたものです。現在でも同じような形で『すべての財産は神様、今でいえば韓鶴子様のもの、すべて捧げなさい』というのが、残念ながら統一教会の教えです。その結果家庭崩壊となってしまう、ということです」
「これは単なる本なんですが、これを統一教会がいくらで信者に買わせるかというと……3000万円です。こんな普通の本が3000万円、もう常識はずれです。かつ信者1人に1冊ではなくて、信者1人に4冊も5冊も売りつける場合があります。5冊となれば1億5000万円です。こんな非常識なことが統一教会ではずっと行われているということを、指摘しておきたいと思います。
中身は聖書ではなく、ビニールのカバーがあるだけの、文鮮明の御言葉を印刷した本です。なんで3000万円になるかというと『文鮮明さんの署名があるから』という理由です。
もう1点、私の方から付け加えさせていただきます。山口広から2009年の「新世」事件についての話がありました。「新世」という会社が印鑑を売り付けたということで、東京の統一教会信者2名が11月10日に東京地裁の方で懲役刑になりました。
その後、統一教会の説明者が自分たちの機関誌の中でなんと言ったか。『こういう違法な行為は今後行わないようにする』ということを言ったのではないんです。
『私たちの反省』として挙げたのは『政治家とのつながりが弱かったから、絆が弱かったから警察の摘発を受けたんだ』と。『今後は政治家と一生懸命つながっていかなければいけない』というのが、彼らの反省でした。
わたくしどもがずっと、先ほど既に説明しているように、国会議員の方々に『統一教会の方々を応援するのをやめてくださいよ』と呼びかけている理由も、そこにあります。やっぱり統一教会の被害者にとっては『政治家とのつながりがあるから、警察がきちんとした捜査をしてくれない』という思いがずっとあると思いますし、わたくしどもにもあります。ぜひその点を、国会議員の先生方は、今回の事件を機としてでも考えていただきたい。わたくしの付け加えたい2点は以上です」
配布資料について(20:35)
川井
「ありがとうございます。いま言及のあった「新世」事件についてですが、お手元の配布資料に『統一教会信者に対する刑事手続事例』というものがあるかと思います。こちらの26番に事件概要が書かれていますので、合わせて参照いただければと思います。
すいません、配布資料の説明が抜けておりましたので、ざっと資料の説明をさせていただきます。
1つ目は本日私が読み上げさせていただきました声明です。
2つ目が平成30年に我々の方で『政治家の方々が統一教会に支援をすることはしないでほしい』という要望を出した、そういう声明となっております。
その次の『国会議員の先生方へ』と書かれたものも同様の主旨のものです」
山口
「この2枚は全国会議員に向け、議員会館に配布させていただきました」
川井
「その次にある『衆議院議員 安倍晋三先生へ』と書かれたもの、これが先ほど声明の方で触れさせていただいた、ビデオレターで出演したことに対しての公開抗議文です。これはちなみに議員会館にほうに送付したものは受取拒否、山口の事務所に送ったものに関しては、届いたけれども回答がなかった、というのが客観的な事実でございます。
その次が、我々被害弁連の方で集計している『商品別被害集計用アンケート』。これは直近のものになります。
その次が過去5年の被害集計。
その次が1987年から2021年、昨年までの被害集計ですね。今の被害集計を見ると、トータルで言うと……1237億超の被害。これはあくまで我々の方で把握できてる被害ですから、これでさえも氷山の一角ですが、それでもこれだけの莫大な金額の被害が生まれている、ということです。
その次の資料は、今日同席している阿部弁護士の方でまとめてくれた、統一教会の問題ついてコンパクトにまとめたものです。これも参考資料として後で確認いただければと思います。……タイトルに誤字と、順番に間違いがありますね。失礼しました。
その次の全国弁連通信……これも先ほど申し上げた、昨年9月の安倍元首相の基調講演の抜粋が入ったものです。
残りの2つは、1つは民事のこれまでの裁判例の判決概要をまとめたもの、もう1つが刑事手続きについてこれまでの経緯をまとめたもの、となっています」
山口
「いま川井弁護士が説明してくれた、全国弁連通信の表紙がある冊子なんですが、この後ろの方……ページとしては6ページを見てください。6ページに天宙平和連合、この10月17日の被害者集会を主催した方がですね、日曜礼拝、つまり統一教会の集会においてですね、渋谷教会松濤本部においてこんな講演をしてますということがビデオとして流れましたので、それを反訳したものをお配りしました。この中でこの天宙平和連合の議長のソエジマさんが、どういうふうに努力して安倍晋三さんのビデオメッセージを取り付けることになったのか、自慢げに語られています。
つまり統一教会と天宙平和連合は明らかに一体なんです」
紀藤正樹 弁護士コメント(25:38)
川井
「続きまして紀藤弁護士、コメントをお願いできるでしょうか」
紀藤
「私は2002年10月25日に殺害された、当時衆議院議員だった石井紘基さんの事件の際、刺された直後にご遺族からご連絡をいただいて病院に駆けつけました。安倍首相と同じ失血死で、目の前で、石井紘基さんは手のつけられない状態でやはり数時間後に亡くなったのですが……その体験を踏まえるとご遺族がどれほど今辛いのかというのは、正直いうとつくづく思います。1人の政治家を失うというのは、政治家に関係する人々全員の多くの利害に関わります。ご遺族だけじゃなくて、自民党の政治家の皆さん、それから安倍元首相を支援していた人たち、そういう人たちの全人生を奪うことになります。
石井紘基さんが亡くなった時も私は相当な喪失感だったし、ご家族とも以前からお付き合いがありましたので、『政治家が1人亡くなるとこんなに大変なんだ』と思いました。
その後当然選挙があるので、補欠選挙の問題もあって……そういうことまでずっと関わっていく中で、1人の政治家を『自分と意見が違う』『自分と立場が違う』、あるいは怨恨で殺める、人の命を殺めるということがどれほど罪作りなのか、正直言ってとても重いものだと思います。
だから発言も非常に気をつけたいと思いますし、安倍首相のご遺族が今いかほどの思いかと思うんですよね。でもそのエネルギー……自民党の政治家たちも当然悲しみの中に憤りをお持ちだし、それはもう十分わかります。でもこの事件の背景に何があったか。エネルギーを向けてほしいのはむしろ巨悪なんです。
石井紘基さんの時は犯人が24時間後に出頭して捕まったんですけど、いまだに犯人の動機はよくわかっていません。カバンの中の私有物は手帳も含めて見当たりません。ですので何のために殺害したのかがいまだに分かりませんけれども、背後になんらかの組織があるのかもしれません。ですけどこういう事件が、たびたび起こるんですよね。今回の事件も単純な個人の怨恨なのか、その引き金に統一教会のかなり過酷な献金ノルマのようなものがあって家族が崩壊した、それが怨恨に繋がった可能性もありますよね。そうするとやっぱりこれは、憤りの対象は個々の信者とかに向けられるものではなく、統一教会、巨悪に向かうべきだと私は思います。
誤解なきようにお話を差し上げますが、私はずっとこの統一教会の問題に関わっていますけれど、本当に彼らは反省と言いながら相変わらず同じことを続けるんですね。そして反省と言いながら、過去の罪は精算しないんです。後から報告もあるかと思いますが、霊感商法や違法な献金はいまだに続いているんです。いまだに続いてるんですが、彼らが何をやっているかというと、お金を少し返して『他は請求しません』と念書をとるようなことまでしているんです。これをコンプライアンスと言いますかね?
コンプライアンスと言うなら過去の問題をすべて清算して被害を回復してあげて、罪作りなことをやったとすべて明らかにして、そして出直す。そう言うことならともかく、それをやらない。そして今回の事件の遠因を作り出したと言う意味では、非常に問題点が大きい。ですので政治家の皆様も、ぜひこの問題に、つまり巨悪に目を向けていただいて、日本に巨悪を残してはいけないんだと、やはり巨悪はきちっと罪を清算していただかなくてはいけないんだと、統一教会の問題にもっと目を向けていただきたいなと思います。
ですのでその点を、自民党の政治家も、その他の政治家の皆さんも、与野党問わず、今回の問題は他人事ではありませんので。問題性に目を向けていただきたいと思っています。私からは以上です」
郷路征記 弁護士コメント(31:44)
川井
「続きまして、今画面に写っているのが我々全国弁連の代表世話人の1人である、札幌の郷路弁護士になります。先生の方からコメントをお願いします」
郷路
「私たちは、山上容疑者のお母さんが脱会してきた場合、そのお母さんの依頼を受けてお母さんを被害者として、加害者である統一教会に対して損害賠償請求訴訟を提起し、統一教会から献金として取られたお金を回収して、それをお母さんにお渡しして、それを元に、できうれば失われた、傷ついた家族の絆を回復していただきたい。失われた人生の幾らかでも取り戻していただきたい。そういった気持ちで仕事をさせていただいています。
その限りでは、私たちの行っている仕事の限りでは、統一教会は100%の悪であり、山上容疑者のお母さんも、それに派生して山上容疑者自身も、統一教会との関係に限定させれば、100%の被害者です。
被害者救済に、我々の力が誠に小さいがために、そして社会的諸勢力がそのことに目を向けてくれないがために、政治家の中には返って現実的な力を有している強大な教団に与することによって利益を得ようとしている人がいるがために、救済の手が被害者を助けることができなかった。その、ある種の結果、暴発した感情の結果なのかなと考えています。
その点では我々自身は手一杯必死になってやっているつもりではあるますけれども、やはり残念だと、我々の努力の不足を自覚しないわけにはいかない、という点があります。以上です」
信仰2世、Aさんの生い立ち(34:57)
川井
「ありがとうございました。続きまして、本日顔も声も一切出さない、本日の会見限りでその後の取材は無しという前提で、2世信者の方にお越しいただいています。質疑は設けさせていただきますので、その前提でお聞きいただければと思います。ちょっとマイクを移動するのでお待ちください」
補足:会場の衝立を立てた向こう側、中継のカメラにも映らない位置からAさんが証言。
Aさん
「このような形で衝立を立ててお話をさせていただきますことをお許しください。私自身一般の会社員として生活している人間であり、子どもの母親でもある関係上、身元がバレてしまいますといわれなき誹謗中傷を受けてしまう可能性もありますので、今回はこのような形でお話をさせていただきたいと思います。ご了承ください。
私は先ほど『2世』というご紹介をしていただきましたが、正確には『信仰2世』となります。母親がまず統一教会に、いわゆる『導かれる』という言い方をするのですが、導かれて母親が統一教会に通うようになってから、家のことすべてが統一教会の教えに変わってまいりました。私たちは3姉妹だったんですが、私たち子どもにも教会の教えを強要するようになってきました。
特に私は、夫婦関係の良くなかった父と母という家庭環境で育ちましたので、いつも父に泣かされている母を、娘として、同じ女性として、とてもかわいそうだと思って育ちました。そんな母が導かれたいわゆる統一教会の教えを受け入れることが、親孝行になるんだと勘違いをしてしまいました。
母に言われる通りに、統一教会の名前は伏せられていましたけれども、ビデオセンターというところに通って、そこから洗脳が始まっていきました。
そして私が21歳の時、95年です。36万双の合同結婚式を受けることになりました。その時教会に言われたことは『どんな国の人であっても断ってはいけない。どんなに学歴がなくても断ってはいけない。障害があったり何か経済的に難しい事情のある相手だったとしても、断ってはいけません。すべてを神に預けて、断っては決していけません』ということを誓わされました。
私は文鮮明のマッチングで36万双の合同結婚式を受けることになったのですが、相手は韓国人でした。私よりも2歳年下です。その当時私は21歳でしたので、相手は19歳でした。その人は家もなく、職もなく、親もない、そして学歴は中学中退という人でした。住むところがなく、教会に転がり込んできた男性でした。そのような男性が、私のいわゆる主体者、永遠の伴侶としてマッチングされたわけです。
その時私がその人を断れなかったのは、祝福を受ける前に神に誓わされたからです。学歴がなかろうが、どんな状況の人であろうが、断ってはいけないと言われていたからです。
そして3年後、家もない職もない彼は日本に渡ってきて、私と一緒に生活をするようになりました。その彼は気に入らないことがあると、私のことを殴る人でした。私はそのことがとても辛くて、教会のアベル、いわゆる教会長だとか上の者に相談しました。すると『それは彼にサタンが取り憑いているからだ』と言われました。『あなたの信仰が足りないからだ』とも言われました。
あなたが、いわゆるトウケンジョウケン……水業だとか条件を立てることでサタンが退くと言われているので、トウケンジョウケンを立てなさいと言われ、彼が悪いとは一言も言われることはありませんでした。
そして1年後、当時の統一教会は避妊をしてはいけないとしていたので、自然と子どもができました。しかし彼の暴力が収まることはなく、子どもができたとしても経済的な部分や身体的な暴力、言葉による暴力が日々続いていきました。統一教会では離婚してはいけないと言われていましたが、子どもが産まれたことによって『この暴力がいつか娘に向かうのではないか』という恐れを抱くようになりました。
私はこのことを母に相談したのですが、母は『絶対に離婚してはダメだ』と言いました。それは祝福家庭、いわゆる合同結婚式を受けた家庭が壊れることは、サタンが一番喜ぶことだからだ、と言ったんです。
私は正直、彼と離婚がしたかったのですが、母からも教会からも止められていたので、離婚ができずにいました。ただ彼が私と結婚した本当の理由を知って、私は彼との離婚を決意しました。それは彼が『日本での永住権欲しさに統一教会を利用した』ということでした。そんな彼と結婚生活を送ることが耐えられなくなり、離婚を申し出ました。
やはり教会からも母親からも反対されましたが、最終的には暴力をふるう彼を母が目の当たりにして、やっとイエスと言ってくれました。そんな状況でした。
彼と離婚はできたのですが、母はとても悲しみました。なぜなら統一教会では『夫婦でなければ天国に行けない』と言われていたからです。私がこの祝福結婚を壊してしまったことによって『娘は天国に行けない』と、とてもとても悲しんでいました。またそんな母を見るたびに私もとても罪悪感がありましたし、『私は天国に行けないんだな』という思いを抱くようになりました。
そんな時、韓国の教会の人から『再祝福を受けないか』と言われました。
統一教会では、結婚が壊れた時に『被害者』と『加害者』に分かれることがあります。私の結婚が壊れてしまったのは夫からのDVが理由だったため、私は被害者として認定され、『再祝福』が認められるということでした。そして私は韓国の教会につながっていくことになりました。
韓国の教会から『再祝福』、再婚を申請した時に、日本では140万円の献金を要求されていたんです。でも韓国側の教会長は『140万ウォンです』と言いました。140万ウォンは、日本円では約14万円です。韓国人が合同結婚式を受けるには14万円でいいんです。でも日本人が祝福を受けるには140万円という大金を払わなければいけないんです。
これは教祖の『日本は韓国のうら若き乙女を従軍慰安婦として蹂躙した過去があるから、韓国の乞食と結婚させられても感謝しなければならない』という、反日的な教えがあるからなんですね。だから日本人は、大金を払わされても当たり前、大金を払わされて感謝しろ、という言い方をよくしていました。
そして私は再祝福を受けることになるのですが、私には娘がいます。その娘を連れて再祝福を受けた、その相手も韓国人でした。その頃は教祖がマッチングするのではなく、教会長がマッチングするように変わっていたんですが、その相手も学歴、職業、年齢すべて嘘をついて申請してきた人でした。その人によって私の日本のカードをすべて使われてしまい、夫によって自己破産させられることになってしまいました。
10年間韓国で生活してきたのですが、教祖の死を境に私の中で洗脳が解け、2013年に日本に子どもを連れて帰ってきた、そういう状況です」
信仰2世、Aさんの事件へのコメント(47:41)
Aさん
「今、この事件に対して私の思うことを述べさせていただきます。まず誤解のないように聞いていただきたいのですが、犯人のしたことに対しては何一つ擁護することもないですし、正しいと思ってもいません。ただ、人生を統一教会によって破綻させられた身としては、理解できてしまうという苦しい心情があります。
やったことに対しては、私は間違っていると思います。でもそれだけ、統一教会は人生を破壊します。今、統一教会に関わってきた人たち、また2世と呼ばれる人たちがどんな苦しい思いでいるかを、私はよく理解できます。
その思いが正しい方向に報道されて、今まで放置されてきたこの問題が少しでも解決に向かえばいいなと思っています」
Aさんへの質疑応答(49:27)
川井
「今日はAさんとお呼びしますが、Aさんへの質問がある方は挙手をお願いいたします」
Q:
「ジャーナリストのホンダマサカズと言います。週刊金曜日などに記事を書いており、今回もそのための取材です。学生時代から、以前は朝日新聞の社会部の記者として勝共連合の時代からリサーチをしております。
Aさんのお話を聞いて胸が詰まる思いですけれども、2013年に日本に帰ってきて、信仰から離脱したという旨のお話でした。そこから現在に至るまで、統一教会側からのアプローチとか、追いかけてきたとか、そういうことはあったのか。もしあった場合、どのようにしてご自分を守られてきたのか。そしてもし聞いてよろしければ、お母様とかは今どういう状態なんでしょうか」
Aさん
「私の場合は、教会が私を追いかけてきたということはありませんでした。ただ母が信者ですので、母が追いかけてきまして……実は、私がダメだと思った時点で娘、つまり孫に強制をし始めました。それを私は阻止したかったので、警察に相談しました。警察の方でストーカーとかDVとか児童虐待とか(に関連した制度である)、いわゆる住記閲覧制限をかける相談をしたところ、とても同情してくださいまして、ハンコを押してくださいました。自治体にそれを提出し、今は母との縁を切って生活している、という感じです」
Q:
「東京新聞のモチヅキと申します。2点なんですが、お布施的なものに関して。かなり若くして結婚されて2度目もあったと言うことで、お布施的なものはどれくらい教会側に出したのか。それから今回の被害者のお母様も含めて、旧統一教会系は選挙に関して個別訪問したり、街宣活動の場に行ったり、電話をかけたり葉書を出したり。自民党議員がなぜ使うかの理由に、積極的にそういう活動に関わってくれるという期待が大きいと聞いています。同じような、選挙活動の手伝いなどをされたことがあるか、という点もお願いいたします」
Aさん
「まずお布施、献金の話ですね。10分の1献金は基本です。そのほかに教会系の絵画展とか宝石展とかの物を買わされたりということはありましたが、私自身その後韓国に渡ってかなりの極貧生活を送っていましたので、教会に献金できる状態ではなかったという部分があります。ただ母はお壺を買ったり、いろんな大理石のものを買ったり、印鑑を買ったりはしていたようでした。
選挙についてですが、私たちにはメールで『自民党の誰々に今回は入れてね』ということがありましたけど、選挙活動に参加した、お手伝いした、ということはありませんでした」
紀藤
「今の点に誤解のないように説明すると、日本の統一教会と韓国の統一教会は支下(?)が違うんですね。日本人とは別扱いなんです。日本の統一教会に関しては霊感商材を買うノルマだとか献金ノルマが非常にきついんですが、韓国ではそこまで要求されないという前提があることをご理解ください。(Aさんは)合同結婚式、再祝福を受けられたことで韓国支下に変わっているということがポイントです。日本支下のお母様は相変わらず金銭提供を続けている、ということだと思います。それでよろしいですよね?」
Aさん
「はい、まったくその通りです」
Q:
「NHKのクラオカと申します。先ほど冒頭に『犯人のしたことは擁護できないけれど心情的には理解でき、苦しい状況だ』とおっしゃられていました。なぜ安倍元総理の殺害に向かうのかという点について、なんとなく想像はできるんですが、改めてAさんの言葉で統一教会や思うところをお聞きしてよろしいでしょうか」
Aさん
「私は犯人ではないので彼の心情がどうだったのかという点は分かりかねますが、私の中では教会イコール安倍元総理というものは、まったくありませんでした」
Q:
「何度もすみません。『教会イコール安倍元総理というものはなかった』というのと、『安倍元総理への殺害が理解できてしまう苦しい心情』、なぜそう思われるのかというところを……」
Aさん
「安倍総理に、ではなく、まず教会を恨んだその先が安倍総理だったわけで。彼の本質的な恨みは教会に対する恨みなんですよね、おそらく。そういう意味では理解できる、ということです」
Q:
「弁護士ドットコムニュースのカワシマと申します。本日はありがとうございました、Aさんにお伺いいたします。ちょっと年齢の確認なんですが、結婚された歳から計算すると、今40代ということでよろしいでしょうか」
Aさん
「はいそうです」
Q:
「あとですね、今も悩んでいらっしゃる2世の方がいっぱいいらっしゃると思うんですが、どうやってこの弁護士の方と繋がれたか。それから3人姉妹とのことでしたが、ごきょうだいたちはどうされているのか、聞かせていただければと思います」
Aさん
「はい。私は脱会してからブログの方に私の体験を書いておりました。それを通じて山口先生と知り合うきっかけとなりました。現在は本も出しているので、そこら辺とのつながりで今回は参加させていただいています。
それからきょうだいについては、一家離散状態です。結局信者である母から逃れるために全員身を隠しております。きょうだい同士でも、1人は連絡を取れていません」
Q:
「毎日新聞のハルナシと申します。先ほど山口先生からの話もありましたが、実際に統一教会の被害にあった方として、統一教会に政治家がエールを送るようなことをしているのは、どういうふうに見えますか」
Aさん
「そうですね……政教分離ということは言われていますけど、結構ズブズブのところが多いんだろうなと思います。統一教会でなくても、いわゆる宗教がらみの政治家や政党が存在していますし、そこははっきり分けないといけないとは思っていますが、なかなか難しい問題なのだとも思います」
Q:
「先程の先生方のお話によると、統一教会側が自分たちの組織を守るためなどの理由で政治を利用している、という解説がありました。もし教団が政治を利用する、あるいは政治家が教団に近づくということがあるとすれば、被害者としてどのように思われますか?」
Aさん
「確かにそれはあると思います。例えば私はゴルバチョフと会った教祖の写真とか、金日成と会った教祖の写真とかを見せられたことがあります。そしてそういった大物政治家と繋がってるんだ、イコール『やっぱりこの人はすごいんだ、メシアなんだ』という、一つの動機付けにはなると思います」
山口
「今おっしゃった写真は、会場後ろにある写真集に載っています」
Q:
「フリーの記者のヨコタハジメです。今の質問に関連して、ゴルバチョフさんと同じように、安倍元首相や岸元首相など、大物政治家をどう教団側が利用し、お墨付きを与えて活用してきたのかについてお伺いしたいです」
Aさん
「先ほども申しましたけど、大物政治家と教祖が繋がっていることに関して……そういう繋がりって普通ないものですから、見せられると『やっぱりすごい人なんだ、メシアなんだ』という思いにさせられてしまうというのはあると思います」
Q:
「朝日新聞のキタノと申します。山上容疑者のしたことに関して同情の余地はないことですが、お母様が信者である点により自分の人生がめちゃくちゃにされたという点が、共通するといったらなんなんですが。そこで山上容疑者がああいった犯罪を起こす前に、何らかの救い……こういった弁護士の先生や救出グループにつながれなかったんだろうかという部分について、Aさんはどのように思われますか。そして今も同じように悩んでいる2世3世の方々に、どのように呼びかけたいですか」
Aさん
「はじめに申し上げたいのが、カルト問題って『触れてはいけないもの』として捉えられてるのがとっても大きいと思うんです。友達には相談できない、親はまだカルトにいる。誰にも相談できないというのが、今の2世の状況なんじゃないかと思います。実際私が韓国から帰ってきた時、どこにSOSを出したかというと、いのちの電話でした。それくらい相談する場所がなかったんです。でもこれを契機に、そういう相談する場所、2世が駆け込めるような場所は本当に必要なんじゃないかとつくづく感じています。
ここにいる弁護士の方々はそうですが、ジャーナリストの皆様にもこの統一教会の問題にとても注力されてる方々がいらっしゃいます。「家族の会」という相談できる場所もあったりしますので……やっぱり、当事者本人にしかわからないこと、辛さは存在するので、できたら同じ体験をした人たちと交流すると良いんじゃないかと思います」
Q:
「キリスト新聞社(?)のマツタニと申します。昨日の田中会長の会見をもしご覧になっていたら、その感想をお願いします」
Aさん
「私は仕事中だったのでニュースでしか見れなかったんですが……はぁ、やっぱり、嘘ばっかり言ってるなぁ、ってことはすごく思いましたね。例えば献金にしても信者自らの気持ちでやっている、強要はしていないという言葉を聞いたとき、本当に血圧が上がる思いでした。
そんなことは一切なく、地獄に行くとか天国に行けないとか、そういう脅し文句を使いながら献金をさせているのは事実なので、『うまく統一教会に操られてるリーダーだな』という印象を受けました」
Q:
「やや日刊カルト新聞のフジクラと申します。昨日の会見で山上容疑者の母親が信者だったことは統一教会として認めたのですが、山上容疑者自身については信者、会員にはなっていなかったということを言っていました。2世の問題について、会員になっているかどうかはほとんど関係なく、親の影響はいずれにせよ受けるんじゃないかと思うんですが、その辺りについて簡単で構いませんので教えていただけますか」
Aさん
「先ほど私は3姉妹と申しましたが、教会に引っ張られたのは姉と私で、一番下の妹は唯一引っ張られなかった人間です。でもやっぱり幼い頃、私もその頃は高校生だったんですが、親の助けがないと生きられない年齢の時に親を拒絶するというのはなかなか難しいです。それは子どもにとっては命に関わる問題だからです。親に『あなたこれを信じなければご飯あげません』と言われてしまったら、子どもとしては生きていく術をなくしてしまうわけです」
弁護団の誰か:
「言われるんですか?」
Aさん
「言われますよ!なので、従わなければならない状況に置かれた人たちがたくさんいると思います。妹はそれを蹴って出て行ったんですけど……それだけの強さを持っていればいいですが、そうじゃない人たちは否が応でも言うことを聞いて育つしかない。それは統一教会に限らず、カルト2世と呼ばれる人たちはそういう理不尽な生き方を強要されてきたと思います」
Q:
「すみません、主旨を取り違えるといけないので事実確認をさせてください。先程の質問でAさんは金日成やゴルバチョフと教祖が映った写真をご覧になって『メシアなんだ』と感じたとのことでしたが、安倍元首相や岸元首相のそういった写真を見せられたことはあるのでしょうか?」
Aさん
「岸さんは、あります。教祖が座っている写真は見せさせられたことはあります。ただ安倍元首相については、祝電がきたという形でしか聞いていません。それは今回隠れ蓑みたいになってる、統一教会の友好団体とおっしゃってましたけど、その団体の大会で、ですね」
弁護士たちへの質疑応答(1:10:21)
以降は後日行います。
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