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妻が行方不明になった話

まずお伝えしておくと、この記事は2年ほど前に起こった僕と愛する妻とのショートストーリーである。お読みいただいても特に得られるものはありません。

先ずは妻のスペックを晒しておくので読み進めながら想像してほしい。顔出しはもちろんNGだ。
ポジション:僕の妻であり3男児の母
年齢:30代前半
資格:調理師免許
  :実戦系空手黒帯(実父が師範代で空手道場を運営中)
  :JSA公認ソムリエ
職歴:京都の高級料亭で仲居を5年
  :名古屋のイタリアンでソムリエを3年
好物:お酒全般
得意技:正拳突き・ローキック
あだ名:伝説のタコ焼き屋
※伝説という表現は誇張ではなく、鬼神のようなスピードでタコ焼きを焼きまくる姿を見て、妻が高校生の時3年間アルバイトをしていたタコ焼き店の店長が実際にそう呼んでいた。

10年前、結婚の報告のためにタコ焼き店へ僕と妻で訪れた時の会話がこちら
妻「店長お久しぶりです~。私、結婚することになりました!」
店長「おお~○○(当時のあだ名)!わざわざ来てくれてありがとう」
偶然居合わせた高校生男子アルバイト「え?店長、この人があの伝説の?」
店長「そうそう。この子が伝説の○○(当時のあだ名)だよ!」

事件発生前

とある日曜日の午後5時ごろ、名古屋駅付近で友人と飲みに行くと言って妻が出かける。もちろん駅までは僕が送迎だ。名古屋駅までは十数分の最寄り駅へ。
妻「今日もワインの勉強がてら飲んでくるね。」
僕「いってらっしゃい。今日はどんなお店?」
妻「○○(お店の名前)っていうビールのうまいホルモン屋!」
ん?ビール?と心に浮かんだが、賢明な僕はもちろん声に出したりはしない。
妻を無事に駅に送り届け、僕は帰宅して息子たちとカレーを作って食べ、庭で遊び、風呂、歯磨き、寝かしつけを午後9時には完了させ、妻からの駅へのお迎え要請の連絡を待ちつつ、家でマッタリ。我ながら完璧な流れだ。イッツ・パーフェクト。

事件発生

日付が変わって午前0時4分、妻から電話があった。
妻「ヤバい。終電逃した。充電がもうすぐ切れる。今ここは名古屋の」
『名古屋の』で電話が切れてしまった。掛け直しても、電波の届かない所にというメッセージが。そう、妻が行方不明になったのだ。一緒に飲んでいた友人の連絡先も分からず、気が動転した僕はTwitterでつぶやいた。おいしいネタか!?と思ってしまった僕は完全なるツイ廃だ。

おおしまわたる@libayl049
【大悲報】
飲みに出かけた妻から電話があり、「終電逃した。充電がもう切れる。今ここは名古屋の」で充電がなくなり、通話が途切れた。どこに迎えに行けばいいのか全く不明だが、とりあえず高速の入り口へ🤮

こんな感じでつぶやいた時点で僕は自宅のソファーの上で寝転がっていた。もちろんパンツ1枚だ。その後とりあえず車に乗り込み、高速の入り口に向かった。ちなみに名古屋駅までは約20km。高速経由で約30分ぐらいだ。信号待ちでダッシュボードに置いてあったスマホの画面が光っていた。チラ見すると、「心配ですね」とか「きっと会えます」と、ありがたい通知が!僕は勇気をもらい、青信号とともにアクセルを踏み込んだ。もちろん制限速度内で。

プロファイリング

名古屋駅に向かう道中、僕は金田一少年や名探偵コナンあるいは杉下右京ばりのプロファイリングを開始した。妻の日常などから推察して頭に浮かんだ条件は以下の通りだ。

・タクシーは嫌いなので乗っていない
・何件もハシゴするタイプではなく、1軒目で長時間楽しむタイプ
・時間を潰すならコンビニとか路上ではなく、酒が飲めるお店
・待っていればどうせ僕が来ると思っているので、路面店で車道から見えるお店にいる
・日曜の深夜なので名古屋駅周辺で開店中のお店は少ない
・酔っ払っていて千鳥足なので、そんなに遠くにはいけない

以上を踏まえ、僕は仮説を立てた。1軒目と名古屋駅の間にある営業中のBARか居酒屋で酒を飲んでいる、と。

足取り捜査

あとは自分の立てた仮説を信じて、敏腕刑事並みの足取り捜査を実行。とりあえず1軒目の場所をグーグルマップで確認し、妻の動線を予想し、駅に近い方から怪しいお店をのぞいていく。1軒目の場所を聞いておいて本当に良かった。すると4つめの路面店のBARに妻らしきシルエットを確認。車を停め、高揚を抑えつつ入店してみると、そこには普通にビールを飲んでいる妻が。

『確保ォォ!!!!!!!』思わずそう叫んだ。もちろん心の中で。

事情聴取

速やかにお会計をすませ、助手席に妻を運びこみ、僕は事情聴取を開始した。

僕「タクシーに乗ればよかったのに。」
妻「もったいないやん。」
僕「コンビニでモバイルバッテリーとか充電器買えばよかったのに。」
妻「モバイルバッテリー? なにそれ?」
僕「えっっ・・・。」
妻「いや~、まあでも、流石だね~!」

そう言い残すと、妻は助手席を倒し、ゆっくりとまぶたを閉じ、のび太君ばりの速さで眠りについた。僕は声を荒げて問いただすこともなく、ホッと胸をなでおろし、帰路についた。

そう、僕は知っている。酔っ払っている妻に何を言ってもダメだと・・・。

このような事件が2度と起こらぬように、僕は帰宅後すぐにAmazonでモバイルバッテリーを注文した。

天真爛漫な妻は僕を飽きさせてはくれない存在である。余談ではあるが、名古屋に飲みに行った場合、妻は50%位の確率で終電を逃す(笑)

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