『源氏が勝つとは限らない』元号転生バトルロイヤル

平教経の頭の中に「スミレ」が現れたのは教経が十代半ばの頃だった。

はじめは頭がおかしくなったのと思ったものだが、話を交わしているうちにスミレは大正という今から700年も未来から来た女という事が分かった。

教経からすれば自分が聖徳太子の時代にいくようなものと考えると途方もない年月と感じた。

スミレは先の時代ではたくさんの書物を読みふけっていたらしく、やたらこの今の時代に詳しかった。

そういうのを文学少女というらしい。

スミレが云うにはこれから源氏が挙兵して国中が騒乱の渦に巻き込まれるそうだ。

その合戦をまとめた「平家物語」という書物が何百年も国中の人々が熱中して読んでは語るという。

あんな落ちぶれて甲斐に籠ってる奴らになにが出来るのかと傾げたくもなるが、平家物語という我ら一族が中心な名前が気に入った。

その中でも教経は「平家最強の男」として描かれているらしい。

確かに同世代で自分に叶う奴などいないのは承知しているが、このまま一族でも一番の強者になるなら、より一層鍛錬の力が入る。

ーこの国最強は誰だー

スミレに問うてみたが言葉を濁してきた。

東国の上総には化け物がいると聞いたことはある。

そいつには勝てないのか、はたまた遠すぎて出会えないのでこの国最強が決めれないのか。

ースミレが来てから幾年か経ったー

スミレが云うにはそろそろ平家物語の本筋が始まるらしい。

教経の胸が高ぶってきた。

※創作大賞2022　応募作品　TOPページはコチラ☟