『源氏が勝つとは限らない』元号転生バトルロイヤル

武田信光は童と二人で館の奥座敷に対峙して座っていた。

童の名は板垣頼時。

兄である板垣兼信の嫡子である。

名字こそ違えど信光も兼信もいまや源頼朝と肩を並べるほどの勢力である甲斐源氏当主の源信義の子でる。

他に一条忠頼・逸見有義と兄弟がいた。

兄の板垣兼信から「頼時と逢ってほしい」と乞われた。

信光は当初なんのことかわからなかった。

兄に尋ねても理由は判らないが、ある日頼時から信光と二人で会いたいと頼まれたそうだ。

そして今に至る。

頼時はうつむいたままだ。

無言のまま時間が経った。

信光は埒が明かないと思い、頼時に声を掛けた。

「頼時、そちの望むよう二人きりぞ。話したい事でもあるのか。なにか申せ」

その言葉を皮切りに頼時がはっと顔を上げ、信光へ目を見開いていた。

頼時の眼は両目とも真っ赤だった。

頼時は刹那、声を発した。

「ようやく二人きりになりましたな。武田信光と板垣頼時。この二人が揃う必要があった」

信光は頼時に異質なナニかを感じた。

ー目の前のモノは頼時ではないー

すぐさま、信光は頼時であろうモノへ問うた。

「御前は誰だ!」

頼時であろうモノは返した。

「儂は武田ノブカツ。シンじるにカツと書いて信勝よ。ずっと未来である天正からたどり着いた。武田幕府三代目将軍を継ぐ者ぞ。御前様は儂の始祖様じゃ」

武田幕府...始祖... 信光は何のことやら頭の整理がつかず面食らってしまった。

そんな信光を気にせず『ノブカツ』はつづけさまに吐いた。

「いいか始祖様。これから源信義の血筋は頼朝によって徹底的に排除される。残るのは始祖様と板垣頼時のみ。なんとしても生き延びよ」

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