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挨拶は必要か

1ヶ月ほど前、Twitterで「職場での挨拶は必要か」といったテーマが話題になった。私自身人と話すのが苦手で、少々苦労した覚えがあるのでここに記しておく。

まず職場で挨拶が必要かどうかは「職場や場合による」というのが私の結論だ。また、「挨拶」の定義も難しい。出勤して朝最初に顔を合わせた場面で「おはようございます」というのも挨拶だし、異動してきて「本日より異動してきました綿貫です、よろしくお願いします」とひたすら声をかけて回るのも挨拶だ。特に人数の多い職場で異動の挨拶はなかなか私には難易度が高かった。

〜駅員時代〜
私の配属された駅は1日の出番者(出勤人数)が4人、社員の総数も20人に満たない程度の職場だった。
これくらいの規模のアットホームな職場であれば挨拶は重要だろう。このパターンであれば挨拶をするのも何の苦でもない。出勤して初めて顔を合わせるたびに「おはようございます」と声をかけていけばよい。異動してきた場合の挨拶も、私は人の顔と名前を覚えるのがかなり苦手だが、さすがにこの規模なら対応できる。しかも1日4人しか出勤しないので、一気に20人に挨拶するのではなく、少しずつ顔と名前を覚えながら挨拶できる。
挨拶することで今日自分が出勤していること、声のトーンなどで体調を何となく伝えられ、業務を円滑に進められるだろう。しかし、問題は人数の多い職場の方だ。

〜乗務員時代〜
うってかわって、車掌になると運転士+車掌+内勤で合計300人前後が所属する職場となった。こうなるともう個人的にはお手上げだった。
ただ、駅よりも乗務員区の方が体育会系の気質があり、「挨拶は大事だ」とよく異動する前から聞かされていた。そして毎年、「今年の新人は挨拶がない」と陰口を言われるのが常態化していた。
個人的にはこの規模の職場でいちいち挨拶するかどうかを気にしていたらそっちに気がいってしまい、業務に集中できないと感じていた。
例えば出勤してきた場合の挨拶を過剰にやろうとすると以下のようになる。

職場に入り、まず自分のロッカーへ向かう。見かけた人には「おはようございます」と挨拶をする。ロッカー室は300人が着替えられるよう、かなり広い。何列にもロッカーが並んでいる。これを全て巡回し、その場にいる人に「おはようございます」と挨拶をしていく。乗務員は出退勤時間がバラバラなので、同じタイミングで見かけるのは10人前後だろう。
着替えを終えて点呼場へ。点呼場といっても、乗務員はメインで仕事をする場所は運行中の列車内なので、点呼場などの乗務区の施設内は出勤して乗務の準備をしている人、逆に退勤の準備をしている人、そして乗務の合間に休憩をしている人がいる。だいたい常に10人〜20人くらいが休憩などで点呼場付近におり、休憩時間もバラバラなので人は順次入れ替わる。
これらの人全員に「おはようございます」と個別に挨拶をしていく。

というのが過剰な挨拶だ。挨拶が大事らしいのでここまでやる必要があるのかなと思ったが、実際にはそこまでしている人はいなかった。
私を含め、標準な挨拶パターンは出勤してロッカー室などを歩いて移動中にすれ違った人には挨拶、点呼場付近でもいちいち全員に挨拶はせず、近くにいる人に挨拶。また、乗務の準備など何か作業中の人には声をかけない。最小限だが、とりあえずこれで何とかなった。

ただ、問題は異動してきた最初の挨拶の方である。この規模の職場で出退勤する時間もバラバラだと難易度が高すぎる。とりあえず初日は見かけた人に「本日から異動してきました綿貫です、よろしくお願いします」と片っ端から声をかけるも、誰に挨拶したかなんて覚えられない。最初の一週間くらいは「今週から異動してきました綿貫です、よろしくお願いします」と挨拶し続けて、「いや、この前にも挨拶されたよ」と言われたり、逆に(この人には確か挨拶したよな...)と思い、挨拶をしないでいたら「君、新人だよね。俺は○○だから。よろしく」と向こうから声をかけられたりという経験をしつつ、一週間くらい経ったら(まあもうそろそろいいか、誰に挨拶したとか全く分からないし)という結論になり、それ以降は通常パターンの顔を合わせた人に「おはようございます」と挨拶をするパターンにした。
果たしてこれでよかったのか悪かったのかは分からないが、「今年の新人は挨拶がない」と怒られるようなことはなかった。そんなことを直接言ってくる人もなかなかいないと思うが、それが原因で嫌われていた場合は挨拶したり話しかけたりした場合に素っ気ない態度をされたりするものだと思うが、特にそのようなことはなく、(この人と話すの多分初めてだよな...)という人も、何事もなく普通に話してくれた。
場所によっては「異動してきました綿貫です、よろしくお願いします」と全員に挨拶しなくてはならないパターンもあるらしいが、そうでない職場で助かった。

とはいっても、人数が多い職場なので本当に職場の人の顔と名前を全員覚えるまで普通に1年かかる。特に、勤務の巡り合わせの都合で1ヶ月以上全く顔を合わせない、という場面も普通に発生するためだ。顔を合わせても、乗務員は基本的に乗務員室で1人で仕事をする。同僚と必ず会話する必要がある場面になるのは、1日1回程度ある便乗(業務上の移動、他の人が乗務している乗務員室に同乗する)と1日数回程度ある乗務員交代だ。ただ、乗務員交代はわずかな時間で行うため、現在の列車の状況を伝えて交代となり、ゆっくり会話している時間はない。ゆっくり話をして、この人はこういう人なんだと理解していくのは便乗くらいしかなかった。もっとも、便乗でも全然話さない人もいるが、その人はそういう性格なんだろう。
私自身、人と話すのは苦手ではあるものの、同じ職場の同僚とは仲良くやっていきたいとは思っていたが、上手く話すきっかけがあまりなかった。
人と話すのが上手い同期は更衣室や休憩中の時間を使って声をかけて先輩方と仲良くなっていったようだ。しかし、こういった「話しても話さなくても良い場面」で何か話すのが自分は苦手でそのようにはあまり振る舞えなかった。

どうすれば私としてはやりやすかったか。やっぱりこれだけの人数いるので、顔写真と名前、ちょっとしたプロフィールが書かれた名簿を配ってもらえたら大変やりやすい。趣味だとかがプロフィールに書かれていれば私のように話すのが苦手な者であっても最初の話題として話すきっかけになる。こういった取り組みを実際にやっている職場もあると聞く。
恐らく、こうしたら良いなという思い自体がある人はけっこういるものの、最初に「名簿作りましょう!」と言い出すのが勇気がいるのと、名簿を作るには全員とそれなりに仲が良い必要があり、嫌だという人を説得する必要もあり、通常の業務に加えて名簿を作る作業が加わり、異動に伴い内容を更新していく必要があるのでなかなか実現しないのだろう。

今は基本的に自宅で一人で仕事をするような状況だが、今後大規模な職場で仕事をするようなことがあれば、何とか率先して同僚の名前を覚えやすい環境を作っていきたい。

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