見出し画像

18きっぷの係員負担

今夏、18きっぷが廃止されるのではないかと話題になった。無事に6月18日、ほぼ例年通りの内容で発売されることが発表されたが、その一方で18きっぷは「係員の負担が大きい」と、よく言われており、それが理由で廃止になるのではと度々話題になる。そこで、駅員の負担とはどのようなものか思い出して記載してみる。

〜利用期間の厳守〜
例えば夏の18きっぷは例年なら7月20日〜9月10日が利用期間だが、発売自体は7月1日から開始される。(※今年度は7月10日から発売に変更)そのため、7月1日から19日までの間は、利用できない期間なものの、切符自体は手元にあるという状況が発生する。この状況で乗客が「18きっぷでお願いします」と来て、もし入鋏印を勢いで押してしまったら。誤扱いなので関係各所に謝罪祭りである。そうならないよう、18きっぷ期間は「本日18きっぷ期間中」と係員用改札の目立つ位置に掲示してあった。
期間前に使おうとする人なんているのかと思うかもしれないが、普通にいる。むしろ、7月1日に買えたら7月1日から使えると思う方が普通だろう。学生2人組が朝からウキウキしながら利用期間外にやってきて、「すみません、20日からなのでまだ使えません」と言ったときの絶望した顔は忘れられない。
また、18きっぷ期間中でも注意が必要である。旅客が持参した切符が本当に今シーズンのものか確認する必要がある。これも、以前のシーズンのもので余ったものを翌シーズン以降に繰り越せると思って持参する人も時々いる。これも万が一通してしまったら関係各所に謝罪だ。
これらの利用期間誤りは自動改札であれば日付のデータが記録され、自動で弾いてくれるが、係員が目視で判断する必要があるのでどうしてもミスが起きる。もちろんミスをするのは係員の責任の部分もあるが、それでえらい目にあってしまったら18きっぷに良い印象はもたないだろう。

〜乗客が利用する時間帯〜
18きっぷは丸一日乗り放題という性質の切符なので、元を取るために朝早くから乗りまくるという使い方をする人は多いだろう。しかし通常の駅業務において、早朝は改札を通る人はいても、精算や忘れ物などの係員を必要とする対応は発生しづらく、そのため小規模な駅では早朝無人駅としている場合も多い。私の勤務していた駅では早朝無人駅ではないものの、初電前の時間帯に券売機の締切作業があり、慣れていない場合や何か異常があると初電の時刻を過ぎても券売機の締切作業を継続する必要があった。それでも、早朝は列車の間隔が10分以上あく時間も多々あるため、列車の発着前後は改札に、来ない時間は券売機室で作業、といった立ち回りで作業ができる。
しかし、18きっぷ期間はそうもいかない。駅の立地にもよるが、早朝の4時台・5時台から18きっぷで入場する人が有人改札に続々と押し寄せる。
券売機で作業中は「お急ぎの方はそのまま改札を通過して、降車駅でお申し出ください」と掲出しているものの、意外と18きっぷ利用客はそのまま待っていることが多い。そのまま通過したら不正乗車っぽくなってしまうのを嫌ったり、使用開始した駅のスタンプを押したいなどが理由だろう。これも列車到着の2〜3分前に有人改札に戻れば対応できるが、券売機でトラブルがあり到着時間に改札に戻れなかった同僚がクレームをもらってしまったこともあった。
とはいっても、私の勤務していた駅は周辺に観光地などがあるわけでもないので、早朝の行きと夜の帰りに18きっぷ利用者がそこそこ通過するくらいで、そんなに18きっぷが負担というほどでもなかった。利用の多さは駅による差がかなりあるだろう。

〜改札通過方法〜
改札の仕事をするにあたって、状況にもよるが、並んだ人を順番に対応していては列がどんどん伸びていってしまう。特に忘れ物対応は時間がかかる。改札口に来る人は大半がICカードのエラーや切符の精算のため、これらは1人1分もかからず対応が終わる。改札口というのは列車が着いたタイミングでどっと人が来るので、忘れ物の対応を後回しにしても波が去れば問題なく対応できる。
この改札を通る人の波に18きっぷ利用者が混ざるのが少々対応の順番が難しい。
18きっぷのその日の初回利用は日付印の押印が必要だが、それ以外の場面では切符を見せて改札を通過するだけだ。その対応は5秒もかからない。
自分の勤務していた駅では、後ろに並んでいる人が18きっぷを手に持っているのが見えたら「どうぞ先にお通りください」と誘導していた。改札対応を待つ列が長いと自分もプレッシャーになるし、待つ方もストレスが溜まる。たまにこちらから言わなくても並んでいる列をすり抜けて切符を見せていく人がいたが、私はそっちの方がありがたかった。
ただ、どの駅もこの対応をしているかというとそうではない。沼津駅では、順番に対応するので並んでお待ちくださいという掲示がある。しかも沼津はJR東日本エリアからICカードをまたいで使えないので、東京方面直通列車が来るたびに有人改札は大混雑だ。もしかすると精算に並んでいた人が「順番を抜かされた」などと言ってクレームになったのかもしれない。逆に熱海では時期によっては18きっぷレーンということで通常使わない通路を開放している場面も見る。利用が多い駅ではスムーズに通ってもらいつつ、苦情を生まないようにするのも難しいだろう。

〜無人駅での利用〜
最近は一定規模の駅でも改札が無人化されていることが多い。神奈川県内では南武線や横浜線の快速通過駅は大抵早朝無人駅だし、相模線や鶴見線は大半が無人駅だが、利用者はそれなりにいる。
そういった駅から利用する場合は、とりあえずそのまま入ってもらって降車駅でスタンプを押す。ただ、意外にも私のいた駅の立地の都合もあるが、そういった人も1人くらいしか対応した覚えがない。無人駅での乗降はそんなに多くはないのだろう。
ただ、今度は私自身が利用者側の場合の話になるが、私自身、全駅訪問企画などで18きっぷで無人駅を利用することは多々ある。
その場合の降り方は以下の4パターンだ。

①何もチェックなし(鶴見線等)
信用乗車方式となっており、特に乗降時に乗車券の確認はない。
②ワンマン運転の運転士に提示(大半のワンマン運転区間)
駅員がいない代わりに運転士が集札をする。このパターンなら1日に1人しか降りないような駅でもスムーズに降りれる。
③改札のインターホンを使用(関西線など)
これが一番大変。読み取り機に切符を置いて、遠隔で確認してもらう。乗降がそこそこある駅がこの方式なので、上記の1日1人しか利用しない駅より降りるのが大変だったりする。
④そもそも降りられない(大規模駅の一部改札)
大規模な駅だと改札が複数あり、一部の改札は無人で、係員に用がある場合は係員がいる改札を使うよう案内されることがある。降りたい出口で出られないと少々大変。

特に③のパターンが何とかならないかと思う人が多いだろう。係員の負担としては遠隔操作の呼び出し件数が増えて待ち時間が長くなり、クレームの原因になるかもしれない。私自身もこのタイプの駅で下車するのは少々躊躇する。

そこで、自動改札対応になればそのあたりも係員の負担が減るのでいつか対応するのではとよく言われているが、トータルで見るとそこまでするほど係員が負担が多くて困るというほどでもないのかなというのが私の印象だ。(もちろん駅にもよるだろうが)

ちなみに私自身は駅員をしていて、18きっぷだと色々な駅の入鋏印で乗客がやってくるので、それを眺めながら仕事するのは楽しかった。

また冬季以降の18きっぷ発売については発表がないものの、利用者も従業員もやりやすい形で存続していけばと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?