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ロータッチ立ち上げ18ヶ月の失敗と成功の全記録

ロータッチの定義は色々ありますが、私は「ヒューマンタッチ×対多数」の取組と考えています。個別対応ではなくある程度集団的な対応を、デジタルではなく人間が実施する接点ですね。弊社のカスタマーサクセスでも2019年3月頃からロータッチの取組を進めており、1.5年が経過しようやく一定の形が見えてきました。

※青本ではロータッチというと顧客層的な意味合いがありますが、弊社の場合は支援接点の1つという意味で取り組んでいます。

内部的な話ではありますが、ロータッチの立ち上げからずっと一緒にやってきたメンバーがこの9月末でロータッチの取組から離れ、運営を後任メンバーに移譲していく(自分の関与もこれまでより薄くなる)タイミングだったりもするので、この期に立ち上げからこれまでの18ヶ月の軌跡を振り返るnoteを書いておこうと思い本記事を執筆します。

まずは第1章で立ち上げの困難や失敗を時系列で振り返りつつ、第2章では今だから思うロータッチ立ち上げの3つのポイントを、第3章では培ってきたTIPSをそれぞれまとめました。それでは本編をどうぞ!

■1. 18ヶ月のロータッチ立ち上げストーリー

きっかけはコミュニティへの憧れ

2018年のカスタマーサクセス立ち上げ期は、そもそも顧客がサクセスするための方法論やジャーニー、ヘルススコアの設計で忙しかったのですが、それらが一段落して顧客の支援方法も一定確立されてきたタイミングがロータッチ立ち上げの最初期になります。

きっかけは他社事例でした。2019年3月頃、まだカスタマーサクセスについて様々な情報収集を行ったりしていた頃、ReproさんやMarketoさんの事例で顧客からチャンピオンを輩出したりカスタマー同士のコミュニティを構築することでカスタマーサクセスが工数をかけなくても顧客のサクセスが自走的に実現されていくようなケースを目の当たりにし「まさにこれがSaaSだ!顧客と一緒になって顧客もプロダクトも成功していくグロースの土壌を作らなければ」と強烈に思いました。

当時は既存顧客向けのセミナーも行っておらず、ましてやコミュニティと呼べるものも存在しておらず文字通り何もやっていなかったのですが、何かしら動き出さねばというのが純粋な最初の衝動でした。

初めての新機能セミナーは失敗

そこでまず最初に取り組んだのが「新機能紹介セミナー」の実施でした。当時はプロダクトで新機能のリリースが相次いでいて、複数のお客様から「新機能について弊社に来て説明して欲しい」という問い合わせが入っており、これら全てに訪問して同じことを説明するよりもまとめてセミナー形式で実施したほうが効率的ではと考えました。

コミュニティ的取組を始めたいという思いもあり、手始めにこの新機能紹介セミナーを企画し実行。内容としては弊社を会場とし1.5時間程のセミナーで新機能の紹介とプロダクトの開発方針をシェアするというものでした。

しかし結論から言うとこのセミナーは思い描いたほど人が集まりませんでした。集客を頑張ったものの参加者は数名、参加者同士の交流もあまり活発にならず、と企画時に考えていた状態とはかけ離れていたのです。

なぜこのような状態になったのか。振り返りの中からいくつかの要因が見えてきました。まず1つ目が純粋にアクティブユーザ数の不足です。集客メールは既存ユーザ全体に配信したのですが、開封率やクリック率を見るとレートの問題というより母数そのものに問題がありそうな気配。まだロータッチという手段に出て効率が取れるような規模ではないのではないか。真っ先にそれを強く感じました。ただこの実績からアクティブユーザ数に対してどの程度の参加レートが見込めるのかの肌感を得たので、どのくらいのユーザ数がいればロータッチに移行してよいのかの目安を得られたのは収穫だったなと思います。

2つ目はユーザニーズの捕捉の甘さです。企画のきっかけは「問い合わせが多いからニーズがあるのではないか、だからセミナーで実施しよう」というものでしたが、この顧客理解の解像度は粗かったと言わざるを得ません。もう一度問い合わせ内容を見てみると

「新機能について弊社に来て説明して欲しい」

とあります。これをフランクに解釈していくと「ウチに来て教えてくれるなら知りたい」ということになり、それは踏み込んで解釈すると「わざわざ遠方の会場に足を運んでまで知りたい内容かと言われれば…(そこまでするほどではない)」と捉えることも出来ます。真実かどうかはさておき、集客の結果を見るにそのように解釈するほうが妥当でしょう。

いずれにせよ顧客が何を求めているのか、それをどんな形で届けて欲しいのか、そういったことに対する理解の粒度が粗かったために、顧客が求めるコンテンツを求める方法で届けられていなかった可能性が高いと考えました。

この時企画していた新機能説明会は本編に付随して「プロダクトの今後の開発展望を喋る」「ユーザ同士での交流タイム」なども張り切って設けていたのですが、それらが不発に終わったのはやはりこの顧客理解の問題かなと思っています。

次に企画したのは「ユーザ座談会」

①アクティブ数や②顧客ニーズの捕捉に課題があり、どうも「思っていたような取組を弊社でいきなり実行するのは難しいのでは」と打ちのめされ、ここから次のフェーズとして「ユーザ座談会」の取組を始めます。

ユーザ座談会とは、同様のテーマやトピックを元に弊社に集まっていただき、各社の取組や悩みを話して頂くような会です。トータル2時間ほどで会のファシリテーションはカスタマーサクセスのメンバーが行うものです。

座談会の取組に至ったのはいくつか理由があります。まずアクティブ数の問題があったので、全体集客ではなくニーズがある顧客に個別集客したほうが良いのではという点。またその頃、ハイタッチ支援を通じて顧客から「他社の事例を直接聞きたい」という声が強まっていることを感じており、普段外部と接触のないマーケティング担当者である顧客同士で情報交換することは活用支援にとっても顧客にとっても価値がありそうだと思えたことが理由でした。

余談ですがこの時期ちょうどオフィスが市ヶ谷から大手町に移転し、見た目も含めてとても素敵なデザインになったので、その資産を活用しないのはもったいないという、プロダクトアウト的な思いも若干ありました(笑)

結果的にこのユーザ座談会は2019年の5月と8月に1回ずつ開催し、それぞれ3社ずつ、トータル10名程度のお客様にご参加いただくことが出来、3月の新機能セミナーはよりは進化したものとなりました。

まず個別集客をしたのはアタリでしたね。そもそもニーズがあるのではというお客様にお声がけしているので参加率は100%。またニーズに関しても1社ずつにどんなことを知りたいか、どんな場になるとよいかをヒアリングして作り込んでいったので、反応も良かったです。資料はこんな感じ。

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最初に各社の悩みをシェアすることでテーマを設定しやすくする、その後の話を聞きやすい状態を作る、という流れを意識したのですが、これはとても良かった。また自己紹介のアイスブレイクも4BOX方式で書いてもらう感じにしましたが、場も温まりそれも良かったなと振り返って思っています。

結果的にこの座談会がきっかけで、ご参加頂いた企業様同士の交流が始まったり活用が活発化したりという変化があったので、この座談会の取組によって多少は効果の得られるロータッチの支援が形になっていました。

座談会は良いけど効率は…?

こうして多少の光明が見えた座談会ですが、一方で実施にあたっての工数は馬鹿になりませんでした。まずテーマの設定が難しいことに加えて、参加社のリストアップ、声掛け、そして参加社間の日程調整、事前準備の連絡、当日のロジ周り、参加のお礼、フォローアップなども含めるとそれなりの時間を取られてしまいます。社内で費用対効果を疑問視する声が上がった、というより普通に現場で「やるの大変・・・」という感じになりました。

時を同じくして、アクティブID数が順調に伸びていることや、本格的にハイタッチ支援だけでは立ち行かなくなってきたことから、来期(=2020年)の取組を考えるにあたってロータッチの活動を本格的に事業活動として計画すべきではないかという提案を挙げたのです。取組むべきではという点については全員で認識がそろっていたので、ロータッチの取組をどう進めるか、新機能説明会や座談会の取組を経て色々と思案をすることになりました。

更にその頃「せっかくオンボーディングした顧客が異動してしまう」という課題が顧客でも社内でもホットになっており、その対応支援としてロータッチ的な取組が効果的ではという話が持ち上がっていました。異動や退職などで新メンバーが担当となった企業に対して、オンボーディングと同じくらい手厚い支援ではないが、同程度か7~8割程度の効果を得られるような集合研修セミナーをやるのは価値があるのではないかというものです。これまでの企画と違い既にあるオンボーディングコンテンツをほぼ流用できることから、最小工数で実現できることなども鑑み、来期のロータッチの取組の効果検証も兼ねて実施することになりました。この時生まれたのが「速習セミナー」です。

速習セミナーの成功から学んだ1つの気づき

企画からすぐに実行に移せたこの速習セミナーですが、オンボーディングコンテンツの流用であることや内容も基礎的なものが多いことから、正直そこまで人が集まらないのではと予想していたのですが、予想に反し過去2つの企画以上に参加社が集まるという結果になりました。

参加された方の感触をお伺いしても「引き継ぎなしにとりあえず社内でIDだけ発行されていてどうしようか迷っていたところでした…」「これから使いたいと思っていたので助かりました」などポジティブな反応がとても多かったのです。これは完全に予想外の結果でした。

この速習セミナーの成功、そしてこれまでの企画の反応から1つだけはっきりと分かったことがありました。それは「我々はロータッチにおいて顧客が何を求めているのか全く分かっていなかった」ということでした。

顧客とはそれまでハイタッチで濃密に接触していたこともあり顧客が何を求めているか、どんな支援をすればいいかは分かったつもりになっていました。そして無意識的にハイタッチで生じている顧客のニーズが、そのままロータッチでも転用できると考えていたのです。ただこれは間違った考えた方だったとはっきり気づいたのです。1対1ではなく集合的な支援の中で顧客が求めるものはなにか、顧客は普段どのような状態にあり何をすれば支援として意味があるのか、それをゼロベースで構築する必要があるということに気づいたのでした。

年の瀬は顧客ヒアリングに全フォーカス

「ロータッチをゼロから考える必要がある」この気付きを得たのが2019年11月でした。来期の検討の期限が迫っていることもあり、我々は顧客がロータッチ的支援の中でどのような求めているのかを把握し、2020年に企画するロータッチの方向性を決めるべく顧客ヒアリングを実施することにしました。

まず、ロータッチの企画として考えられるものをメンバーでブレストしました。速習セミナー参加社に参加したいセミナーのアンケートを取っていたことに加えて、やりたいことは山のようにあったのでテーマ・企画だけで50~70個くらいがアウトプットされました。そこから議論を重ね、実現可能か?(=トライアルでやるとして進め方の目処が立っているか?)、および顧客ニーズがありそうか?という2つの観点から5つの企画にまで絞りました。

今度はこの5つの企画を実際に顧客に刺激物として当ててみることで、実際に行きたいと思うものはあるか、あるとしたらどれか、それはなぜかをヒアリングする取組を始めました。

ちょうど別件の顧客ヒアリングも実施していたので、そのヒアリングを合わせて実行するようにしましたが、それがなくても顧客に直接ヒアリングする形を取ったと思います。やはり直接の反応を見ないとニーズが理解できないため。

実際に作成した企画プロトタイプがこちらです。

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これを紙で印刷し実際にお客様にご覧頂きました。「もし弊社のサイトでこのようなページがあったとしたら、行きたいと思うものはあるでしょうか?」と質問してその結果と理由を教えていただいたのです。

ヒアリングの結果見えてきた意外な真実

このプロトタイプをご覧頂くとわかると思うのですが、検証の意味合いも兼ねて、複数の種類の企画を混ぜてあります。

1. 顧客登壇系セミナー(スクール型×顧客事例)
2. ワークショップイベント(インタラクティブ型×顧客/自社混合)
3. 業務課題解決セミナー(スクール型×自社主導)
4. 顧客交流イベント(コミュニティ型×顧客事例)

ちょっとした裏話ですが、5つの企画に絞る時にどの企画が顧客ニーズに合致していると見るか、社内では意見が結構割れました。主に「知識提供型」が良いのではないかという意見と「ワークショップ型」が良いのではないかという意見で、自分は実は後者でした。例えばですが2や4ですね。元々のロータッチ立ち上げの動機もコミュニティをやるべきでは、というところから始まっていたのでここに思い入れがあったのです。

ですが、実際にヒアリングをしてみるとまたしても自分の考え方は完全に間違っていたと思い知らされました。

合計3社程度にヒアリングを実施したのですが、全ての会社が口を揃えて3の業務課題解決セミナーに行きたいと言ったのです。具体的にはプロトタイプの中にある「ABテストで勝つためには」であったり「Google AnalyticsとUSERGRAMを併用するためには」が圧倒的な人気で、登壇セミナーや顧客同士の交流イベントは参加したいと言った企業は1社としてなかったのです。

理由をお伺いしてみると「顧客同士の交流は、自分が意味があることを提供できるか不安だし、付き合いも正直疲れてしまう」「一方的に知識を聞ける方がこれから使いこなさなきゃという我々のフェーズにあっている」というようなものでした。驚くべきことに理由までどの会社も一緒でした。この時、自分が顧客の状態についてまたしても思い違いをしていたことに気づいたのです。

コミュニティや顧客同士の交流が成り立つには、一定のリテラシやそういうことが当たり前である土壌や文化が必要になります。また、ツールの使いこなし度合いとしてもやりこむ領域があり、知見をシェアし合いたいというニーズがあることが重要です。が、当社の顧客層に関しては少なくともこのタイミングでは、そういうコミュティを立ち上げるような状態とはマッチしていなかったのです。

この時「自社顧客が何を求めているのか」については他社施策に囚われすぎずきちんと自社顧客と向き合うべき、というある意味当たり前の点について再確認することが出来ました。同時にこのヒアリングを行ったことでロータッチに関する取り組みの方向性については、メンバー間でバチっと揃ったのです。我々の顧客はまだまだツールを使いこなすための業務課題解決の知識を求めている。それを提供するのがロータッチで今最も価値がある支援である、と。

GA併用セミナーでひたすらブラッシュアップ

2020年に入り初回の実施が決まったのがヒアリングで最もニーズのあったGoogle Analytics(以下GA)とUSERGRAMの併用セミナーでした。が、ようやく企画の方向性は決まったもののコンテンツとしては何もなかったので、それを作るところから始めていきました。

この時のコンテンツ作成ですが「①顧客理解→②仮説立案→③プロトタイピング」というサイクルを何回転も回すことを徹底的に意識しました。

これは弊社の方法論でもありUCDサイクルと呼ばれているものです(UCD=User Centered Design)※詳細は第2章にて

まず1回転目ではGAとの併用に困っているお客様の理解ということで社内メンバーに心当たりのあるお客様がいないか、その方がどんな発言をしていたかを収集しました。その結果から具体的な併用の事例の提供に意味があるのでは、という仮説を立て資料を作り、実際お客様に見ていただきました。しかし1回転目の結果、具体事例以前にデータ活用の前提に関してのお困りごとが大きそうだという気付きがありました。

2回転目ではデータ活用の前提のコンテンツを作成し、また違う顧客に見ていただいたのですが、その時は「これだと併用の話じゃない。もっと具体的にどのような併用のメリットがあるか知りたい」という結果でした。ここからの気付きとしてユーザのフェーズによって反応が違う、おそらく後者的ニーズが真のターゲット、そのニーズに答えるために複数のパターンを準備したほうが良さそう、という事になりました。

3回転目はセミナー本番です。2回転目までの取組から、データ活用の前提となる話を入れつつ、活用パターンを整理して事例を盛り込んだセミナーを弊社オフィスにて開催しました。こちらのセミナーは、入念な顧客理解の甲斐もあり、初回にもかかわらず20名以上の方からお申し込みがあり一年前の参加者3名だったセミナーから比べると実に6倍以上、参加レートも一年前より格段に上がっていました。(正直、かなり感慨深かった)

2020年1Qは前Qから引き続き実施した速習セミナーも好調に終わり、トライアルとして「知識提供型」の路線で良さそうということが裏付けられました。

ロータッチのKPIをどうする議論

2020年1Qの取り組みを経て、2020年の残りの大筋の計画は立ちました。既存のセミナーコンテンツをブラッシュアップしつつ、別トピックの知識提供型セミナーを作っていくというものです。ここで最後に議論となったのがロータッチのKPIをどのように設計するのかというものでした。

チーム全体としてはヘルススコアを追っているので、それと直接的に紐付いたKPIを設定できるのが理想でしたが、現実的にロータッチのセミナーを1つ受けただけでヘルススコアの項目が上がることは稀で、その後のフォローや他の支援との組み合わせが重要であるというのは数回のトライアルを経て分かっていました。

そこで議論を重ねロータッチの役割として「顧客の課題を集合研修的に効率よく解決する」「ハイタッチやテックタッチの支援と連動することでヘルススコアアップを狙う」ということを定義し、その役割からブレイクダウンしてロータッチセミナーへの参加社数とセミナーへの満足度の2つをKPIとして置くことにしました。

参加社数については、ロータッチの役割の1つである「個別対応ではなく集合対応とすることで効率をアップする」というところから来ています。仮にセミナーを企画したとしても1社しか来なければ個別対応したほうが早くなります。そうではなく、広く色々な企業で共通して課題となるようなものを解くことがロータッチの役割なのでそれを参加社数で計測しようという意図です。

満足度は、課題の解決度合いの計測になります。結果的なヘルススコアアップは他支援と組み合わさった長期的なものになるので、セミナーのPDCAには不向きです。なので、擬似的にセミナーの満足度(役立ったか、セミナー内容を踏まえて業務で成果を創出できそうか、への回答の平均値)で計測することにしよう、というのが意図になります。

ロータッチのKPIについてはまだまだ試行錯誤していきたいなと思っています。現時点の設定はあくまで暫定。

新企画作成→そして運用へ

2020年2Qからは次なる新規コンテンツとして1年越しのリベンジとなる「新機能説明会」を開催しました。これまでの反省を踏まえて、ウェビナー開催、30分のショート開催、2日程で同内容、機能リリースからすぐに実施、機能だけではなくケースを紹介などの工夫を盛り込むことで、GA併用セミナーを上回る集客を達成しました。これもレギュラーコンテンツ入りしています。

2020年2Qにはもう1つ、GA併用セミナーのさらなるブラッシュアップ版の実施。2020年3Qに入ってからは、業務定着セミナーを開催。一番課題として大きくかつ各社共通である業務定着について、原因を探りコンテンツ化する取組を行い先日初回が終了しました。こちらも今後もシリーズ化する予定です。

このように、方向性や役割、コンテンツ作成の方法論が見えたことで、新規企画作成→運用というループがまさに回り始めて、Qのトータル参加社は1年前に始めた時とは比べ物にならないくらい増えてきました。シリーズでやってる速習セミナーは毎回参加者数が更新され、前回は過去最高の満足度を達成しています。


当初は右も左もわからず手探りで始めたロータッチでしたが、失敗や試行錯誤を重ね、今では立派な顧客支援の柱の1つとして機能しています。そしてその核は行動しながらも顧客理解をしてコンテンツを深めていった部分に合ったかなと思います。

以上が18ヶ月におよぶロータッチ立ち上げの取組でした。

■2. ロータッチ立ち上げの3つのポイント

それではこの18ヶ月のストーリーを経て、改めて立ち上げていく中で重要だったと思うポイントを3つご紹介したいと思います。これからロータッチの立ち上げや改善をされる方は是非参考にしてみて下さい。

1. 役割定義とトライアルを並行してやれ

まず立ち上げは何でもそうですが、立ち上げることが目的になってしまい何のためにやるのかを忘れてしまいがちです(立ち上げることそのものにエネルギーを使うので当然といえば当然ですが)。なので立ち上げの目的、つまりカスタマーサクセス全体の中でロータッチが果たすべき役割を明確に言語化して定義しておくことが大切になります。

立ち上げメンバーであればその辺はわかっているかも知れませんが、後からジョインしてきたメンバーはその辺に対する理解がないまま業務に入ることもあります。改めて何のためにロータッチ支援をやるのか定義する、必要に応じて更新することをお忘れなく。

そしてそれだけではありません。ロータッチは多人数に対しての支援であるため、個社への支援に比べて反応が読みづらい部分があります。なので役割定義やアイデアを出すのと同時並行で小規模のトライアルを何回も回すのがオススメです。

我々もそうなりかけたことがあるのですが、コンテンツ準備などが大変なので社内での議論をしっかり深めることや企画そのものに時間を使いがちです。しかしそうすると結果的に出来上がったものが想定してた役割とはかけ離れた効果しかないということになりかねません。役割を定義したりアイデアを出して企画をするのは大切ですが、並行して実顧客に対してトライアルしながら「本当にそんなこと出来るのか」「自社の顧客層はそんなことに興味があるのか」の肌感をつけることは役割定義をする上でも大切です。

なので役割定義を明確にする傍らでトライアルを並行して行い、相互にブラッシュアップを続けるのがロータッチの立ち上げで重要なポイントになります。

支援全体の中での役割定義が明確になれば自ずとKGIやKPIも明確になってきます。弊社のように個別にKPIを設定しても良いと思いますし、ダイレクトな経営指標とリンクさせるのも良いと思います。そのあたりはロータッチの役割をどう定義するかに応じて変化させればよいかと思います。

2. 他社施策やハイタッチに振り回されず顧客理解せよ

ロータッチの場では個社に合わせたストーリーや事例のカスタマイズは効きません。というかそういうカスタマイズが限定的にならざるを得ません。なので、いくらでもカスタマイズが出来るハイタッチの場と全く同じ様に顧客やコンテンツを考えるのは危険です。

もちろんハイタッチにおける支援の中身や顧客の課題は参考にはなります。ただしそれをそのまま流用しただけで上手くいかないことも往々にしてあります。ロータッチはロータッチとして顧客の理解やコンテンツのプロトタイプを回すことが顧客に刺さるコンテンツを作る上で重要です。

そしてもう1つが他社施策に惑わされすぎないということです。これはロータッチに限らずですが、カスタマーサクセスは本当にプロダクトや顧客層によってやり方が全く異なります。ロータッチも例に漏れずで、コミュニティ的アプローチが向いているケースもあれば、セミナー的なものがいいケースもあるし、自習室みたいなのがいい場合もあるし、相談室みたいなのがいい場合もあるし。こればっかりは本当にどのアプローチがいいか、自社の顧客に試してみないとわかりません。他社ではマッチするものも自社顧客には全く見向きもされないということが全然起こりえます。

他社事例はもちろんインスピレーションを得たり、ブレスト的にアイデアを出す上では良いヒントになるので収集するのは全く問題ないと思いますが、他社でやっていることを自社でやろうと固執するあまりに立ち上げがスムーズにいかなくなってしまっては本末転倒です。アイデアがいくつか思い浮かんだらまず自社顧客にあててみる。普段の会話で聞いてみてもいいですし、小規模開催もいいでしょう。いずれにせよ、自社顧客×ロータッチでの顧客理解を突き進めていくことが非常に重要です。


コンテンツ作成の"UCDサイクル”
顧客理解の手法としては立ち上げストーリーでもご紹介したUCDサイクルがオススメです。※UCD=User Centered Design

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UCDサイクルのポイントは実は1回1回の回転の精度ではなく、何回転したかが最終的なコンテンツのクオリティと圧倒的に相関するという点です。このサイクルを回せば回すほどコンテンツのクオリティが上がっていくので、顧客の反応が得やすくかつストック型であるロータッチではこのUCDサイクルと非常に相性がよいです。

実際立ち上げストーリーにあるGA併用セミナーでは、ロータッチの立ち上げから数えてこのUCDサイクルを実に6回転も回すことで満足度が高まり、顧客にとって価値のあるコンテンツに仕上げることが出来ました。

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このUCDサイクルを回す上でのTIPSも合わせてご紹介しておきます。

①特定のN=1の顧客に刺さるコンテンツを考える
ロータッチと矛盾するようですが、特定の顧客にとって価値がないものは対象を100人に広げても絶対に価値がありません。言い換えれば、まずは特定の顧客に刺さるコンテンツを作ることが第一歩となります。カスタマイズをするということではありませんが、個人名レベルで想像できるお客様がいるとして、その人に刺さるコンテンツにするにはどうすればいいか。この考え方を忘れないようにしましょう。

ロータッチでやっていると「あんな人もいる、こんな人もいる」となってあれやこれやとコンテンツを盛り込みすぎることがありますが、それでは誰のためにもならないコンテンツになってしまいます。必ず特定の顧客を思い浮かべつつ、その人がセミナーにきたとしてどんなコンテンツであれば良いかを考えるようにしましょう。

②必ずモノを作って顧客の反応を見よ(何が欲しいか聞くな)
顧客を理解するという時によくやりがちなのが「どんなイベントがあったら行きたいですか?」「今、どんなことにお困りですか?」という風にニーズを直接聞いてしまうやり方です。が、顧客は自分が欲しい物を言語化することはできませんし、何に困っているかもすぐに的確に答えられるわけではありません。なので、イレクトに聞くというのは適切でないどころか、場合によっては間違ったニーズを引き出してしまう可能性すらあります。

顧客のニーズを理解する時は、LPや企画書など簡単なものでもいいので必ず「モノ」を作ってそれに対する反応をお伺いするというのが鉄則になります。人は意見では正しい意思表示がしづらいのですが、行動は驚くほど正確に顧客のニーズを反映します。生の反応・行動を引き出すためにも、どんなに簡易でもいいので必ずプロトタイプとして形にしてから顧客にヒアリングするようにしましょう。

③アンケートに頼りすぎず顧客ヒアリングする
セミナーやイベントを行うとアンケートをとるのは一般的かと思います。しかしアンケートがコンテンツの改善や顧客理解に寄与するかというと、実はそうとも言い切れません。定点的に同じ質問で問い続ける事によって平均値の推移を見るといったことは長期的には非常に重要ではありますが、まだ作り込み段階のコンテンツへの反応を探るという意味ではアンケートでは表面的なことしかわからず、かえって顧客のニーズが見えづらくなることもあります。

オススメの方法はアンケートは取得しつつも、高評価の人に直接感想を尋ねることです。低評価の方にお伺いするのも大切ですが、そもそもニーズが違う、期待値が違ったというケースも多いので、コンテンツへのフィードバックという意味では参考にならないことも多いです。

セミナーが終わった後に参加のお礼メールに添えて「もし可能であれば、アンケートでご回答頂いた内容についてお電話で10分ほどお伺いしたいのですが、お時間いただけますでしょうか?」とご依頼すればほぼ断られることはありません。セミナーが終わった後は達成感でなかなかアクションしづらいと思いますが、これをスピーディーにやるかやらないかで回転数そしてクオリティが変わってくるので、是非トライしてみて下さい。

3. ロータッチに閉じて考えない

役割を考えたりコンテンツを検討するときもそうなのですが、ロータッチの立ち上げ・検討だからといって、ロータッチに閉じて考えていてはうまくいきません。なぜなら顧客から見れば、ロータッチもハイタッチもテックタッチも同じプロダクトを活用し成功するための手段であり、顧客はその時々で自分が望む方法を好きなようにピックアップするというのが根底にあるからです。

顧客から見れば一連の支援の体験、プロダクトを通じた体験は繋がっているので、その中における繋がりを無視していてはサクセスは遠ざかってしまいます。ロータッチだけで出来ることは限られているので、ハイタッチやテックタッチ、そしてプロダクトそのものの機能と組み合わせてどのように課題を解決しサクセスに至るのかという絵図を描き始めるのがとても重要なのです。

支援の役割の観点で繋げる
ロータッチの役割を定義する際は、自社のカスタマーサクセスにおいてどんな顧客課題があるか、それに対して現状テックタッチやハイタッチで何は行えているか/行えていないか、そこを把握しておくことが非常に大切になります。

ロータッチの特徴やメリットとして

・顧客の参加ハードルがハイタッチに比べて低い
・テックタッチよりはコンテンツ理解がしやすい
・特有の一体感によって普段出来ないことが出来る

といったことが挙げられます。これらを活かして考えると一例ですが

・ハイタッチでカバーしきれない領域の効率化
・ハイタッチに繋げるためのきっかけ作り
・テックタッチコンテンツ誘導の入り口
・テックタッチとロータッチを合わせた簡易プログラム
・顧客同士の横のつながりをつくる場

などなど役割定義が明確になってきます。他のタッチで何が出来るか/出来ないか。ロータッチに閉じずきちんとそこに目を向けた上で検討することがロータッチの価値を最大化する上で非常に大切なのです。

コンテンツの観点で繋げる
支援における役割だけでなくコンテンツの連動も行うことでカスタマーサクセス全体の価値をあげることも忘れてはいけません。

ハイタッチは個別にカスタマイズしやすい一方で、どの会社に対しても適用できる形でのアウトプットは不得意です。一方でテックタッチは伝えられることに限界があるため、ボリューム感については抑え気味の設計にしていく必要があります。これらの特徴を踏まえるとロータッチは、軽いトピックはもちろん、少し重たいトピックに関してもまとまってコンテンツ化するのが得意なチャネルということになります。イベントの開催を決めれば否が応でもコンテンツを作らなければならなくなるので、そういった強制力も働きやすくなっています。なので具体的な連携方法としてですが

・ハイタッチでの支援内容をヒアリングし汎用化する
・テックタッチでアクセスが多いトピックを扱う
・ロータッチの資料をハイタッチで扱えるサイズにする
・ロータッチのコンテンツをテックタッチで紹介する
・ロータッチの動画などを活用可能な状態にして蓄積する

などのコンテンツの引用・展開が考えられます。こういった観点でもロータッチに閉じず、他の支援と関連付けて考えることがロータッチの価値を高めていく上で非常に重要となります。

■3. ロータッチTIPS集

さてメインコンテンツは以上になりますが、最後に直近のトレンドも踏まえたTIPSをご共有してお終わりにしようと思います。

ウェビナーはリアルと全く違うと心得る

特に新型コロナウイルスの影響で広まったウェビナーですが、ロータッチの取組をすすめる上では切っても切れない関係性かと思います。重要なのは、リアルの会場に来て頂く形式と全く異なるという点です。

まずリアルに比べて集中力が持ちません。視覚と聴覚だけの参加になるので、注意力散漫になりがちです。結果的に別で作業しながら耳だけで参加するという「ながら参加」の顧客も少なくないはずです。そのため、リアルでの開催と異なる形で実施する必要がある、という点には留意した方が良いです。具体的に出来る工夫としては

①インタラクティブ性を担保する
②人と人の会話形式にする
③途中参加/退出を意識した資料構成

などがあります。インタラクティブ性はコメントでの質疑応答や手を挙げる機能の活用ですね。会話形式については色々試してみたのですが、1人がずっと話す形式よりも誰かと誰かが話し合う形のほうが圧倒的に頭に入ってきやすいというのが何度かトライアルを行った上での結論でした。必要以上に拘る必要はありませんが、可能なら「司会進行と講師」「パネルディスカッション」「話し手と聞き役」などの役割感を意識した構成にすると飽きづらいです。資料構成については、途中から入ってきてもわかるようにアジェンダ構成やここまでの内容のサマリを途中途中で挟むといった対応をすることでより伝わりやすい内容にすることが出来ます。

セミナー前後はBGMを活用

意外と知らない方がいらっしゃるので共有なのですが、ZoomではPCの音声をシェアすることが出来ます。画面共有ボタンをクリックし、上部タブの詳細をクリックすると下記画面になりますのでBGMのシェアができます。BGMがあるとセミナーの終了と開始を印象づけやすいので、是非活用してみて下さい。

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時間帯はどこでもOK

ウェビナーだというのもありますが、時間帯については顧客によって様々な反応です。ヒアリングしてみれば

・お昼のほうが参加しやすい
・朝のほうが業務に左右されないからいい
・夕方以降の方が参加しやすい

などの声が色々と上がると思います。なので結果的には開催時間についてはあまり気にしなくてよいかと思います(顧客に特別な属性があれば別ですが)。それ以上に重要なのはコンテンツですね。やはりコンテンツが良ければ、どんな時間帯であろうと参加者は増えます。また長さについても30分くらいが良いという話もありますが、コンテンツ構成次第では2~3時間のウェビナーも全然可能です。弊社でも実際にトライして高い評価を得ている長時間のセミナーもあります。

やはりいかに顧客の悩みに沿ったコンテンツを届けられるか、が大切なので、時間の制約にはあまり囚われずに考えるとよいでしょう。

その他細々したTIPS

書き出すとキリがないので、細かいものは以下箇条書きにしておきます。

・広く届けたい時は2日程開催がbetter(新機能系など)
・Zoom閉じるとアンケート遷移する機能が便利
・集合研修はCSメンバーで背景統一しておくと判別しやすい
・ウェビナーは2~3週間前集客+直前集客が効果的
・個別で声掛けをすると圧倒的に参加社は増える
・ブレイクアウトを使う時は参加者のマイク確認必須
・ブレイクアウト終了時は時間の告知+メッセージが親切
・ロータッチへの参加記録は一覧でデータ化しておこう
・動画配信はWeb経由だと処理落ちするがローカルだと問題ない
・開催日程は早めに決めておくと他タッチでの告知/連携がしやすい

もし詳細知りたいものがあれば、是非コメントください。

最後に

以上でロータッチの立ち上げストーリーとポイントのまとめは終わりとなります。ここまでお読みいただきましてありがとうございました。弊社でもまだまだロータッチの活動は始まったばかりで、今後もどんどんとPDCAを回して進化させていく予定ですので、皆様も知見があれば是非シェアください!

普段はTwitterでも知見を発信していますので、そちらでのコメントも歓迎です。それでは!


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