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”鬼の腕”と名付けられたうつわの記憶

花を習い始めて古物のうつわに身銭を切っていた頃、かれこれ15年以上前に根津美術館の隣といっても差し支えない骨董屋さんで"鬼の腕"に巡り合いました。

開け放たれた障子戸から覗く骨董の数々に、幾度か惹かれながらも決して入ることのなかった店内に、この時ばかりはと自転車を停めていざ。
些か張り詰めた空気の店内です、ええ、店主が醸し出していたものでしょう。しかし構いません。「手にしていいですか」と尋ねれば、仏頂面でコクリとうなずく。

いい、今でもざらりと、そして滑りとした手の内の感覚を思い出します。
こういう巡り合わせこそが骨董の醍醐味よ
なんてどこぞで読んだフレーズを思い出して値段をみてたまげました。
身の丈、なんてものがあるのだとしたら、僕はようよう足の親指の爪によじのぼれたぐらいのものでした。おぉ。

しかし、ものの持つ存在感に圧倒されたことと、それに触れたことに違いはなく。

そうして今回、シゲさんの作品を手にしてそんな記憶がふわりと舞い上がってきたのでした。花はあけびと、招山さんの中庭からイヌビワの葉を。

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【森岡成好 森岡由利子 焼き物展】

にて装花させていただきました。森岡ご夫妻のうつわは焼締、白磁ともに派手に主張するでなく、ただただ何をいけても様になる美しさです。作り手の経験値がそのまま使う人間に向けた包容力となるうつわの数々。部屋に花を飾る機会は増えたけれど、何を選んだらいいのやら、なんて初心者にもオススメです。

場所:UMI招山由比ガ浜(鎌倉市由比ヶ浜4-3-14)
日時:9月19〜27日 11:00〜17:00

期間中、拙著『ととのえる「いけばな」』(彩流社 刊)も取り扱ってくださっています。お出かけください。


ありがたくいただき、世界のどこかにタネを撒こうと思います。