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お稽古の時は携帯の電源を切る!

「久しぶりに大人に怒られて凹んでいます」と生徒が肩を落としてお稽古にやってきました。完全に気持ちが持っていかれています。そりゃそうだ。

僕は昨日、話を伺いに遠路はるばる行った先で、脳科学の研究者に「私は忙しく、あなたに会う意味がいまいちわからないのだけれど」と開口一番伝えられました。メールで記した文面を読んでくださり、何をか感じてお時間を作ってくださったのだ、と思っておりましたがどうも違ったようです。

限られた時間の中で自分の不勉強を恥じる部分と、それでも第一線で研究されている方に作っていただいた時間を次に繋げるべく質問を重ね、ぽろぽろと伝えてくださる知見と共感してくださる部分とを反芻しながらの帰りの道すがら。不意に自分が検討違いをしていたことに気づきました。焦点を当てるべきは子供ではなくて、大人、親、の方ではないかろうかと。問題を設定し直し、自分なりに脳科学の肉付けをしてもなお疑問がわいたら、先生のところに改めて伺おうと思います。

さて、いけばなのよいところは、目の前にある対象物に集中し、手と頭をフルに使ってひとつの完成を作り出すことにあります。
料理と一緒で目の前にある食材、花材の鮮度を落とさぬよう手際よく処理して、自らの理想とする一皿、一杯に仕立てること。

心ここに在らずで対応できるほどに、花材は鮮度を保ってくれません。だからこそ、いいことがあっても嫌なことがあっても花に集中していけあげるわけです。

ところが花の鮮度に思い及ばないとどうでしょう。怒り止まない先方からのメールを逐一確認しては意気消沈し、返信するでもないのにまるで花に心が向きません。

花をいける、いかすという行為は花の命に立脚した人間のエゴですから、せめてその命に真摯に向き合ってかたちにしなければ、なんてことを、かたちを教える傍らで、仕上げのパルミジャーノ程の軽やかさでお伝えする次第です。

お稽古の時は携帯の電源を切る!

日中目の前の相手に集中していれば1、2時間、電話やメールが不通になることなんてざらにあるでしょうし。気分の持ちようです。いけばなという能動的な気分転換をして頭も心もすっきりとした上で、再び問題に向き合っても遅くない、どころか効率上がるのではと、かつての自分を思い返しても確信してます。コツはひとつ。

お稽古の時は携帯の電源を切る!


ありがたくいただき、世界のどこかにタネを撒こうと思います。