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かまぼこを作ろう

1.かまぼこの論文を書こう
訳あって、かまぼこの論文を書かねばならなくなった。しかし、何を書けばいいのだろうか。
私にはかまぼこに関する思い出やエピソードなど1つもない。

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白身魚の練り物で、ピンクと白のツートン・カラー。それ以上のことは何も知らない。

私の弟は練り物が苦手だ。だから家では基本的に練り物が出てこない。私の苦手なとうもろこしも出てこない。

きっと私達が料理を味わう際の「ノイズ」にならないよう、苦手な食材は入れないでくれているのだ。ありがたい限りである。

故にかまぼこの思い出がない。

ないなら作るしかないのである。


2.かまぼこの材料を買おう

2_練り物エリア

さっそく練り物コーナーにやってきた。さあ、かまぼこはどこだろう?


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これは笹かまぼこだ。ピンクと白じゃない。

なると

これはなるとだ。ピンクと白だがかまぼこではない。

すみっこ

これはすみっコぐらしのかまぼこだ。すみっコぐらしの形をしていた。
ピンクと白ではなかった。

かまぼこ

あった。まさしくかまぼこだ。
ピンクなのは外側だけ、その事実に気付くのにかなり時間がかかってしまった。今まで私が見ていたのはかまぼこの断面でしか無かったのだ。
あと、漢字で「蒲鉾」と書くことも初めて知った。

だが1つ思い出して頂きたい。
私が買いに来たのはかまぼこではない。かまぼこの「材料」だ。

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危ないところだった。私はタラの切り身を買って家路についた。

4_練り物

せっかくなので他の練り物も買った。

弟は苦い顔をしていた。


3.かまぼこを作ろう
ついに本題だ。かまぼこを作る。
作り方は老舗かまぼこ店のホームページに書いてあった。ざっと読んでみたが、かなりコツがいりそうだ。
シンプルであるが故にごまかしが効かないらしい。とにかくやってみよう。

(1)下ごしらえ
白身魚を三枚に下ろし、骨、内蔵、皮を取り除く。

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既に切り身なのでその必要はない。
正直かまぼこより焼き魚の方が好きなのでこのまま食べたい。


(2)細かくする

身を適当にみじん切りにする。

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慣れない包丁を操っていると、うっかり私が切り身になってしまいそうだ。私の真っ赤な血液は白身魚と混ざりあってピンクと白のツートン・カラーになる。それだけは避けねばならない。


(3)水に晒す

みじん切りした身を冷水に晒す。
ボウルに入れ、思い切りかき混ぜて上澄みを捨てる。

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そして水に晒した身をキッチンペーパーで拭き取る。

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水気のとれた身を手で触ってみると、刺身のような感触だった。一口食べてみるとタラの味がした。

(4)すり身にする
フードプロセッサーですり潰すらしい。だが我が家にフードプロセッサーは無い。

ミキサー

なのでミキサーを使う。スムージーを作る機械だ。
母が健康のために買った。

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ここに魚を250g、
塩を5g、
味噌を10g、
片栗粉を5g、
卵白を2個入れる。

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そしてかき回すかき回す。

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すり身になっていく鱈。

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明日のスムージーは生臭くなるぜ。

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できた。なんか思ったより茶色くなった。
ピンクでも白でもない。よぎる不安。

だが、この後の工程でかまぼこらしいピンクと白のツートン・カラーになるのかもしれない。
そう願いつつ、ボトルの蓋を開けて器に移す。

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味噌の香りが広がる。恐る恐る味見をした。味噌と魚の味がした。


(5)成型
かまぼこを板に乗せる。しかし我が家にかまぼこ板は無い。

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もうしょうがないからこのまま熟成させることにする。
ヘラやナイフなどを使えばきれいに成型しやすいらしいがもはや知ったことではない。
常温で2時間ほど寝かせた。

(6)蒸す
すり身を蒸す。
我が家に蒸し器は無いので、鍋を使って蒸す。

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鍋、水、ゲタ、すり身。

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そして蓋。
彼には15~20分ほど蒸されてもらおう。がんばれ。


(7)完成

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さあどうだ。

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かなり白くなった。
かまぼこの滑らかさはあまり感じられないものの、さっきまでに比べるとかなりおいしそうに見える。
魚臭さも無くなった。ほのかに茶碗蒸しのような香りがする。

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食べてみよう。

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ありえないくらいしょっぱい。

しかも、キメは粗く、色は香ばしく、板に乗っていない。
これはかまぼこではない。

では何か?

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そう、つみれである。

結果:しょっぺえしょっぺえつみれができた。

4.つみれの考察をしよう
何故こうなってしまったのか。色々気になるところはあるが、最も不可解なのはやはりめちゃくちゃしょっぱい点である。
調味料の配分を細かく見てみよう。

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これが今回のスクリーンショット。

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これが老舗かまぼこ店に書いてあったレシピだ。

分量比はそこまで問題ないように見える。
では何がいけなかったのか。あなたも探してみよう。


見つけられただろうか。正解はここだ。


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味噌(みそ)と味醂(みりん)を間違えた。

みりんを漢字で「味醂」と書くことは今初めて知った。知らない漢字を脳が勝手に補完した結果こうなってしまったのだろう。こういう不注意がいずれ身を滅ぼす。

だが、つみれ感を構成しているのは塩っ気ではない。食感だ。粒が大きいのだ。

多分ミキサーをフードプロセッサーの代わりに使ったのがいけなかった。
硬いフルーツを砕くのがミキサーの仕事なのであって、柔らかい切り身をすり潰すのは専門外だったのだ。

あるいは単に機械がオンボロだっただけかもしれない。
実際何回か刃が空回りしたし、焼けたプラスチックの匂いもした。


ふと買ってきた練り物のことを思い出した。本物のかまぼこを私は持っている。

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本物のかまぼこが板に乗っている。食べてみよう。

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ツルツルしている。程よい塩気。これがかまぼこだ。

私が作ったのはかまぼこではなかった。

気づいたことが一つある。かまぼこには「粒」がない。
キメが粗いとか細かいとかの問題ではないのだ。ペースト状なのだ。
理科の授業を思い出した。れき・砂・泥のやつ。

図

せっかくなので、買ってきた他の練り物も食べた。

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表にするとこんな感じだった。

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かまぼこ と 超しょっぱいつみれ では大きな差があるのが分かるだろう。

もちろん、粒が大きいからといって不味くなる訳ではない。市販のつみれは実際おいしいし。(買ってきてないけど)
・異常にしょっぱい
・妙に粒が大きい
この2点が私のかまぼこの問題点であることが分かった。

5.つみれを美味しく頂こう
このしょっぱすぎるつみれ(以下「罪(つみ)れ」とする)は食べ物として失敗だと言わざるを得ない。

図3

初めて食べた時は「意外といける」と思ったものの、市販の練り物と比較してみると正直おいしくない。変な臭いもしてきたし。

しかし私に「罪(つみ)れ」を罵倒する権利はない。他ならぬ私が生み出した物だからだ。
責任を持って私が食べきるしかない。

なので父に「罪れ料理」を作ってもらうことにした。

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これが「罪れ汁」だ。具の味が濃いので出汁無しで作ったらしい。

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その隣には豪勢なチーズハンバーグが。何故かって?

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今日は母の誕生日だから。

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食卓に並ぶハンバーグ・ピラフ・ケーキ。そして罪れ汁。

果たして罪れは美味しくなれたのか……!?







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おいしかった。
若干まだ魚臭かったが七味をかけたら気にならなくなった。調味料は偉大である。

弟は苦い顔をしていた。

6.最後に
私は今日いろんなことを学んだ。

かまぼこは、多くの手間と緻密な計算の結晶なのだ。
決して1日で会得できるものではない。

かまぼこには、かまぼこを作る人間の想いが練りこまれている。

私が今日作ったかまぼこはかまぼことは言えない代物だったが、かまぼこ作りの大変さを垣間見ることはできた。

そして、さらにもう一つ分かったことがある。





イラスト11

ハンバーグのほうが好き。


ハッピーバースデー、母さん。
ハッピーバースデー、罪(つみ)れ。


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